2年間の物語
人間科学専攻 藤原 誉久
修士論文の提出を終え、憑き物がおちたような感覚を味わった私は、研究と全くかけ離れた、長編の小説が無性に読みたくなり、塩野七生さんの「ローマ人の物語」をよみ始めました。ローマ人は他の民族に比べ体格では劣り、戦いにおいて優れた民族ではなかったのに、なぜ千年も繁栄を築くができたのか。読み進めると、何かを成し遂げるときの普遍的なあり方がローマ人を通して描いているように思いました。
私の2年間は微々たる時間でローマ人の千年とは比べようがないかもしれません。
仕事を研究の素材としてとりかかったものの、どこから手をつけていいか分からず、暗中模索するばかりでした。しかし、暗中模索の中で泥沼に入り込まなかったのは、行動分析という道しるべがあって、またそこを出発点にできたからということです。すべての道はローマに通ず、私の場合はこの2年で、仕事や研究について、拙いながら行動分析に立ち返って説明する作業をしたような気がします。今後立ち返る道もできました。
ローマがアテネの民主政ではなく独自の共和制を築けたのは、保守性を大事にしつつ、ローマ人に合った政治体制をコツコツ積み重ねていった結果でした。翻って研究も、保守性を持ちつつ、色々な手法の中から自分の研究にあったものを取り込んでいって、堅実に進むことが大事だと分かりました。
大学院に入学するまでは自分の分野しか知らず、職種によって考え方は違うものだと思っていました。しかし面接ゼミで、様々な職種のゼミ生でも同じようなところに悩んでいることを知り、行動分析の言葉を使ってお互いの問題を考えていくことで、自分の考えをまとめていく作業になったように思います。
この2年間は長い物語の序章を書き終えたくらいですが、これから自分なりに目指していくところの物語を紡いでいけたらと思います。