魚はやっぱり天然物!
人間科学専攻 櫻井 庄二
2年前、通信制という未知の学習スタイルに不安を感じながら、新たなる学問の世界への期待と冒険心を抱いてこの大学院の門を開きました。今まで多分野にまたがって勉学し、その暁には資格を得るという、今で言う所の好子を糧に努力してきました。しかし、その学習スタイルは、一般的なもので、そこでは専門分野における教師・指導者による学問への導き(授業)があり、その流れの中に乗って現在まで来ました。それが当たり前に思い、学習することも出来ていました。今回この通信制の大学院にて一番感じたことは、この学習方法の違いでした。今までの私は与えられて学習をしてきましたが、ここでは自分から学習する、即ち、自ら勉強する時間を生活の中から作り出し、自ら知識を探し求め、理解し、解らない事や間違った知識も自ら解決して正しい知識を吸収してゆくと言う事でした。これを魚に例えてみると、養殖物と天然物でしょうか。養殖は外敵から保護されて、餌を不自由なく与えられてぶくぶく育ちます。一方天然物は外敵から身を守りながら、自ら行動して餌を探し、獲得してゆかなければなりません。待っていては餌にいっこうにありつけなく、必要なものを必要な分だけ摂取するため身は引き締まっています。私の好きな、釣りの世界でも、やはり釣堀の魚や、養殖魚の放流物を釣るよりも、天然物、いわゆるネイティブを釣りあげた時のほうが、釣り師の冥利に尽きません。なぜなら、ネイティブは警戒心が強いため偽物(餌)を直ぐに見極めてしまい、なかなか釣れません。運良く針がかりしても、力と体力で最後まで抵抗し、すんなりと釣りあげさせてくれません。だから面白いのです。魚で言う養殖が今までの学習スタイルであり、後者の天然物がこの通信制の大学院であると私は思います。当然、私は今まで養殖されてきました。時々網から抜け出しては天然もどきをしてきましたが、やはり気が付くと網の中に戻り、のんびり餌を待っているタイプでした(自分では天然ぶっている)。それが、はっきりと思い知らされたこの2年間でした。とにかく、行動しければ餌(知識)を得ることが出来ないのです。しかし、分かっていても出来るとは限りません。天然物で言う外敵にあたる、仕事、家庭、疲労、お酒などの誘惑に打ち勝ち、更には初めて耳にする用語や内容を理解していくのは、こんなにも大変であるとは思いもよりませんでした。正直言って、ゼミ仲間や先輩の支えや、決して見放さない指導教授の言葉無しには終了にまで行き着くことは出来なかったと痛感します。
この大学院の眞邉ゼミを選び、ゼミを通してすばらしい人々に巡り会えたことは、私の人生の幾つもの選択の中において、最高の選択をしたと自負しています。
以前は早く終わらないかと待ち望んだこの2年間も、今になってみると寂しさを覚え、この環境と繋がりを切りたくないという思いに寄せられます。そんな思いをするのは久しぶりのことです。皆さん本当にありがとうございました。