デトロイトの冬

国際情報専攻 6期生・修了 森田 喜芳


 2008年9月30日付、Detroitフリープレス紙、デイトンデイリーNews紙は,それぞれミシガン州およびオハイオ州における鹿との衝突事故に関する記事を掲載した。
 記事によると,「2007年中にミシガン州では、衝突事故数61,907件,死者数11名、負傷者1,614名、オハイオ州では、衝突事故数26,304件、死者数11名、負傷者1,166名に上ったが、(物損事故の)多くが、事故報告がされていないことから実際の衝突事故数はもっと多く、オハイオ州運輸局では6万件近い」と言っている。
 衝突事故は毎年10月から12月にかけて激増し、特に狩猟期間前のこの時期は、個体数がピークにあり、ハンターのいない都市近郊にも沢山生息している。
 鹿との衝突は,物損事故であっても大きな障害となり、Michigan Deer Crash Coalition の発表によれば、1車両あたり平均2,100ドル、ミシガン州では1年間に、1億3000万ドルの物損が発生している。
 両紙は鹿との衝突事故に関して以下の注意点を挙げている。

 私も一度だけ鹿と衝突した経験がある。今から20年以上前、場所はオハイオ州のオリエンタンジーリバー・ロードというハイウェイで、中央分離帯にいた鹿が突然戻ってきて、私の車の側面(前輪のタイヤの部分と運転席側のフロントウィンドウ、フロントドア)にぶつかってきた。割れたフロントガラスガラスの破片が体中に降ってきた。幸い私の体には異常なかったが,車は大破してなんとか走れる状態だった。その後の警察の調書を受けて自宅に戻り、翌日修理に出した。私の後続を走っていた車は、道路に横たわっていたその鹿を引いて、前面のバンパーなどを破損したようだ。(もちろん私の車にぶつかった鹿は即死だった。大きく立派な角を持ったオスの鹿だった。)またぶつかって死んだ鹿を警察の人は私に「持って帰るか?」と聞かれたので、「そちらで処分してほしい」と頼んだ。警察はその場でどこかに電話をして鹿を引き取ってもらうように交渉をしていた。後から状況を聞いたところ、ディアーハンターたちがその鹿を処分してくれたのだそうだ。鹿の損傷状態が悪くなければ剥製にしたり、鹿肉は冷凍庫に入れて保存したり、ジャーキーに加工したりするとのことだった。貴重な体験をしたとは思うが、2度と鹿との衝突はしたくない。

 私の住んでいるミシガン州の近くでも,時々道路脇に鹿を見ることがある。2008年の秋から冬にかけて、すでに3回道路脇の鹿を見た。今までの経験から,鹿を発見した場合は、徐行運転をしてそのまま走り去るようにしている。特に冬場の鹿は餌がなく、道路を横断して餌を求めているようだ。大変危険なシーズンに入ったので、春までは十分気をつけて運転するように心がけている。

 今年は例年になく、寒い日が続き,毎日のように雪が降っている。路面も凍っていて,1月末の深夜,右折をしたところ,車が左方向に横すべりして,ブレーキを強く踏んでようやく路肩に止まるという経験をした。後続車がいなかったことは幸いだった。(ちなみに私の車は4輪駆動でABS付きでした。)

 以下に、雪道の運転と交通事故について気がついた点を述べる。
  1. 凍結しやすい場所には「ICY」と書かれた黄色い表示板がある。特にこの表示があるところは,昼間暖かくて雪がとけたり,雨が降ったりしたあと夜冷えた時には凍結に特に要注意だ。また走行中のタイヤの音が静かになったときは、路面が凍っている可能性がある。
     
  2. 運転前にはできるだけ暖気運転をして室内が暖まってから、ウィンドウォッシャー液などを使い、車の視界を十分よくして運転するようにする。また、屋外駐車をする場合、坂道でない限りパーキング(ハンド)・ブレーキは使用しないで、ATレバーをPにして駐車する。(私の記憶では、長期間屋外駐車していたため、パーキング・ブレーキが凍り付いた経験がある。)
     
  3. 運転中は、十分車間距離をとって、スピードを落とし、急ハンドル、急ブレーキは避ける。特にブレーキは、1回に踏むのではなく、小刻みに何回も踏んで、減速した方が効果的である。また、ブレーキを何回も踏むことによって、テールランプの点滅が後続車に、気づかせる効果があると私は信じている。
     
  4. 万が一交通事故を起こした場合は、
    (1)、まず車を止める。相手の車が止まらないで走り去るときに備えて、必ず相手の車のナンバープレートは確認してメモ取るようにする。私も一度あて逃げをされて、車ナンバープレートを後から来た警察官に掲示して解決した経験がある。この場合は、もちろん無条件で100%、相手側の負担となった。
    (2)負傷者がいるか確認する。
    (3)警察に連絡をする。
    (4)警察官に情報を提示する。
    (5)メモを残す。(こちらの名前と住所の情報提供と同時に、相手の情報を入手する)
    (6)過失を認める発言はしない。(たとえ自分が、間違っていると思っても過失を認める発言は避ける。)
    (7)相手の個人情報を聞き出す。可能であれば、目撃者すべての名前と住所も聞いておきナンバープレートもメモしておくこと。(相手の免許証、車のナンバープレートおよび所有者、車の保険会社と保険証、)
    (8)状況を書き留めておく。事故前後の車両の位置やスリップの跡などを図式で書いておくとよい。
    (9)警察官より、事故証明書を必ず受け取る。
    (10)医療保険を受ける。自分の体調が少しでも悪い場合は、すぐに医者に行き検査をしてもらう。
    (11)後々、保険会社より車の事故程度と修理代の査定のため、車を修理場などに持って行くが、できるだけ知っている親しい修理場にも一度再確認をする。
    (私の経験では、一次査定が大幅に低かったため、親しい修理場で再見積りをしてもらい、査定額をアップしてもらった経験がある。)
 余談だが,現在、私が住んでいるミシガン州には「Michiganターン」という自動車運転のルールがある。交差点では左折ができず,いったん右折をし, Uターンポイントで曲がって戻ってくるというものだ。ルールに慣れるまではまどろっこしい感じがする。しかし,大きな交差点での左折のリスクを解消するために作った仕組みである。必要以上に道路の幅を取るが、このルールは土地を贅沢に使わなければできないアメリカならではのルールだろう。
 デトロイトの主要な幹線道路は,だいたい片側が4車線だ。中央分離帯に2車線分のグリーンベルトを用意して、このMichiganターンを実施している。最初は馴れなかったがMichiganに来て5年目になる今では,すっかりこのルールに慣れて,大変良いルールだと感心しているし,このルールを気に入っている。

 以上が北米の冬期における車の運転の注意したい内容である。



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