金沢サイバー・ゼミに参加して―松岡ゼミ・リレー・エッセイ

文化情報専攻 8期生・修了 高梨 光子
 今年のオープン大学院は晩秋の季節にピッタリの金沢での開催。当初、金沢まで出かけてみたいと思っていたのですが、生憎、日頃活動している市原市国際交流協会の年1回のイベント「フェスティバル&パーティ」と重なってしまい、現地参加は叶いませんでした。この団体は、いくつかの専門部会に分かれ、様々なコミュニティ活動をしています。私は市原市在住の外国人に日本語支援をする日本語教室部会に所属しています。今回のイベントでは、日本語教室で指導した学習者の中から5人が「日本語によるスピーチ大会」に出場する他、役回りもあって、金沢行きは諦めました。
 しかし、松岡ゼミの有志によるサイバー・ゼミが開催されることになり、11月2日は5人のスピーチを聞き終えた後、会場を抜け出して、午前11時30分からの30分間、なんとかゼミに「出席」することが出来ました。1人10分という短時間でしたので、自己紹介を兼ねて修士論文の概要をpptスライド3枚にまとめ、発表しました。修論題目は「「信頼できない語り手」による比喩世界―カズオ・イシグロの『日の名残り』と『わたしたちが孤児だったころ』」。『日の名残り』が「大英帝国」を物語化し、帝国を解体するテキストであるように、『わたしたちが孤児だったころ』も文学的メタファーとして日英両帝国の物語を構築すると同時に解体することで、帝国主義を批判するテキストであること、すなわちイシグロの小説がポストコロニアル・フィクションであることを述べました。
 何を一番伝えたらいいのか、どのように伝えたらわかり易いのか、そんなことを考えながら発表してみようと思ったのですが、いざ発表となるとやはり難しいものでした。今回のサイバー・ゼミに参加して、修士論文を書き上げることが出来たのは、面談ゼミ、そして、サイバー・ゼミを通して、先生のご指導をいただいたお蔭であると再認識しました。機器に疎い私にサイバー・ゼミは無理と思っていましたが、今では家にいながらにしてご指導いただける、これ程便利なものはないと思っています。それに、普段着、化粧無しでもOK。日本各地から、そして海外からも参加という多彩な松岡ゼミのサイバー・ゼミ。今後も参加させていただきたいと思っております。

文化情報専攻 9期生 宮澤 由江
 サイバー・ゼミのデモンストレーションに横浜から参加しました。今回はいつものようにゼミのメンバーだけというわけではなく、金沢の会場にこのゼミをご覧になっている方々がいらっしゃるということで、ただでも発表が苦手な私はかなり緊張しました。
 発表内容は、オープン大学院の2週間前に開催された前期中間発表会の内容を要約したものです。私の研究課題は「小説と絵画のアイデンティティ」。アメリカのポストモダニズム作家Paul Auster(ポール・オースター)が1985年から86年にかけて発表したNew York Trilogy [ニューヨーク三部作]と現代のコンセプチュアル絵画を比較して、小説とは何か、絵画とは何かを考察しています。
 研究動機は、異なるメディアによる表象の発信と受信の様相についての興味からでした。修士の1年目は言語情報と視覚情報の枠組みと可能性の研究に時間を費やしていたように思いますが、それが把握できるにつれて、論文の方向性が定まってきました。つまり、発信時の環境や動機だけではなく、受信の様相を考察することによって情報と表象をめぐる議論が可能になるのだということです。発信者の「意図」を解釈したいという欲望が受信者にはあります。拙論では、この二者択一から抜け出て、発信と受信の相互作用を提示できればと考えています。
 30分の短いサイバー・ゼミではありましたが、当日、金沢会場にいた皆さんにサイバー大学院のシステムと機能はわかっていただけたのではないかと思っています。松岡ゼミのメンバーにはカリフォルニアや宮古島在住の方もいます。今年の夏は私もニューヨークから参加しました。松岡先生もニューヨークに長期滞在中で、私はマンハッタン32丁目のホテルから、松岡先生はミッドタウンのアパートメントからでした。来年は中国長春からの参加も予定されています。サイバー・ゼミはこの大学院の意義を具現するものです。通信制であること、広く社会に開かれていること、地球上のどこからでも参加できること、そのことが今回の公開ゼミでお伝えできていたら幸いと思います。

文化情報専攻 8期生・修了 斉藤 千絵
 オープン大学院2日目の11月2日11時半よりサイバー・ゼミに東京から参加させていただきました。澄まして参加しておりましたが、私の舞台裏はかなりバタバタしていました。当日朝、関西を発って、新幹線で東京に戻り、自宅には11時過ぎに到着。大慌てでPCを立ち上げ、大学院ホームページからログインしようとしましたが、なかなか入ることができません!そうこうしているうちに開始時間になってしまいましたが、落ち着いて、再チャレンジしたところ、すんなりログインできました。入力し間違えたログイン番号を記憶するボックスになぜかチェックを入れてしまっていたことが原因でしたが、「慌てる」ということはこのような惨事をもたらすものだという教訓になりました。でも、私は涼しい顔で自己紹介の後、研究課題と秋に訪れたNYについて話しました。
 研究対象はラップ・ミュージック。修士論文では、60年代公民権運動活動家たちのスピーチや対話がラップ・ミュージックの起源であるということを論証しました。タイトルは “Telling It Like It Is : The Origins of Rap Music in the Black Vernacular of the 1960s”。修了後も研究生として修士論文の延長線上で研究活動を継続しており、次期アメリカ大統領オバマ氏のスピーチやディベートも資料に加えたいと奮闘中です。
 NY報告では、マンハッタンにある合気道道場に行って稽古を受けてきた話をすることを忘れてしまいましたので、この機会に補足させていただきます。マンハッタンにある合気会道場の道主は日本人ですが、アメリカ人の師範もおり、驚きました。英語で合気道を習うのは不思議な体験でした。合気道は比較的新しい武道ですが、世界中に広がっています。日本の合気会本部道場にも稽古に来ている方の多くが外国人です。文化の越境の一例として興味深い研究が展開できるのではと思います。
 普段の松岡サイバー・ゼミはアメリカから参加されるゼミ生もおり、松岡先生はNYから、私もロンドンから参加したこともあります。今回も、金沢、市原、横浜、東京等、参加地も様々でしたが、文字通りのサイバー・スペースでゼミを行うというのは驚異的なことと改めて思いました。後日、金沢でポスター発表をされた先輩から、松岡先生の近くで画面を見ていましたと連絡をいただきました。その時に初めて実際に公開されていたのだという実感が湧きました。大変珍しく、楽しい経験をさせていただき、感謝しております。来年のオープン大学院は研究科開設10周年記念。東京での開催ですので、楽しみにしております。

 
 

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