『古本暮らし』

荻原魚雷著、晶文社 2007年

文化情報専攻 6期生・修了 山本勝久

    
       
   

久しぶりに書棚の整理。本があふれ出しそう。そのわりに知識はあふれる気配もないのがさみしい。読んだ本の内容はすぐに忘れる。自分でもあきれるくらいだ。忘れたらもういちど読めばよい。そう思いつつ再読する本などめったにない。しかし、おもいがけずその機会がめぐってくることもある。単行本の文庫化がそれ。私の書棚には同じタイトルの単行本と文庫本が二冊仲良く並んでいる本がある。その一方で、両方とも行方不明というケースも多い。これでもういちど読みたくなったらまた買うしかない。こんな無駄なことはせず、堅実に蔵書のシェイプアップをはかる文庫派の読書家もいる。たとえば荻原魚雷だ。

荻原は「二十代のころから文庫が出ると、単行本を売って、文庫に買いかえるという生活をしている(谷沢永一方式)」らしい。こうやって書棚に空きスペースをつくり、あらたに買った本を押し込むわけだ。

    自分の読書の軌跡を消してゆくことにさみしさはおぼえるけど、新しいことに挑戦する意欲がなえるよりはいい。本棚の新陳代謝なくして、二DKの読書生活に未来はない
なかなか前向きだ。しかし、荻原の場合、堅実な人というもよりマメな人という方があたっていそう。「ときどき古本屋で単行本を買ったあとに文庫も出ていたことがわかるとすごく悔しい。そういうときは文庫本を古本屋で見つけしだい単行本は売る」こういうマメさがないと本にも逃げられるかな。







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