NY(ニューヨーク)旅行記
―ジャズナイトと、NYC美術館巡り―
国際情報専攻 6期生・修了 森田 喜芳
今回の旅行は、NY一人ブラリ旅であった。とくに目的があったわけではないが、昨年の旅行で行きそびれたところに行ってみたいと考えていた。
ここでなぜこの時期に休暇を取っているか少し説明しよう。アメリカでは、7月の第一週と第二週、自動車会社(従来のビッグ・スリー)およびその関連の部品会社などがシャットダウンするのである。昔からの習慣で、生産を止めたこの時期に、秋からのニューモデルの導入のため工場の生産ラインを改造したり、設備のメンテナンスを行ったりする。現在はその意味合いが少し薄れてきたが、それでもほとんどの自動車会社および関連会社は、この2週間をシャットダウンする。ちなみに日本では、8月のお盆休みにあたる第3週の1週間が休みである。会社によっては、9連休や10連休の場合もある。日本の自動車会社でも、この時期に設備のメンテナンスやニューモデルの設備導入の準備作業を行っている。以上のような関係で、私も7月の第二週を休みNYに出かけた。(ちなみに日大院修士で学んだ2年間のこの時期はレポート提出と論文作成の時間が取れて大変助かった!)
今回の目的は、先にも述べたように昨年行きそびれたジャズのナイトショーを見るのと、MOMA(近代美術館)を観にいくことで、トータル4泊の旅行であった。
ホテルは、昨年も泊まったUNプラザホテルである。道路を挟んで国連が向かい側にある。ちなみに、今回は国連が開催していなかったため、各国の国旗が掲揚されていなかったのが少々寂しかった
このホテルは、NYではリーズナブルでコスト・パフォーマンスがよく、私の気に入っているホテルである。ちなみにこのホテルは、デトロイトで私の近所に住む日本語をしゃべる韓国人のお医者さんが紹介してくれた。
また、このホテルには、国連の関係者や、ANA(全日空)のフライトattendantが泊まっているので、彼女達の出発時はロビーが大変華やかで賑わう。毎日ANAの人たちを見かけたので、おそらく、毎日成田からの直行便が出ているのだろう。しかしANAもこのホテルを利用しているとは、経費、その他業績をなかなか考えているなと感じ、堅実な経営姿勢がみえた気がした。また、ビルの隣には有名なトランプが所有しているアパートがあり、そこには、NYヤンキースの松井選手が住んでいる。
昼間は、NY図書館を見に行った。図書館は大変規模も大きく、設備も立派で、本を読むところやインターネットで検索するところなどが別々の部屋になっていた。また貸し出しの場所も階ごとに設置されており、静寂で大変うらやましい環境であった。
ランチは、図書館近くのグランドセントラル駅の地下にあるオイスター・バーに行った。このオイスター・バーは20年以上前に数回家族と来たことがあるが、今回久しぶりに行ってみると、内装もかなり変わってきれいになっていた。食事はオイスターやクラムチャウダーなどを満喫した。値段は日本へ進出している品川駅にある同じ名前のレストランと比べて、おそらく半額だろう。
夜、ジャズを聞きに行く前に、NYヤンキースのチケットの値段をチェックするために日本の旅行会社に行って聞いてみた。すると、バックネット裏はなんと一人$375、内野のベンチ裏は$350、内野の3階席で$50であった。今年の5月に、シアトルマリナーズの本拠地(セーフコ・フィールド)のバックネット裏で観戦をしたが、その時は$55、しかも当日売りのチケットであった。NYヤンキースの入場券はそのほぼ4倍である。旅行業者の話では、それでもかなりの日本人がチケットを購入しているとのことであった。本当にこんな値段で野球観戦に行くのかと信じられない気持ちであった。
その後、今回の最大の目的であるジャズを聴きに、8時から9時半までブルーノートというお店に行き、ジャズの生演奏を聴いた。このお店は、モダンジャズの名演奏が繰り広げられる名門クラブであり、ジャズの本場であるといえる。確か六本木や名古屋にも同じ店が進出していると記憶しているが、行ったことは無い。
店内は100席ほどあったが満席で、各々がカクテルなどを注文している姿を見ると、本場のジャズ演奏場に来ているという実感が沸いてきた。当日のプログラムはDanny Alelloという歌手と9人のバンドであった。バンド・メンバーをこれだけ集めるとはリーダーのDanny Alelloはなかなかの実力者だと感じた。
彼は30年以上この世界で歌っているとの事であった。年齢的にもかなり高いが、歌唱力は素晴らしく、声も若くてまだまだ第一線で充分歌えることを証明してくれた。驚いたことに最初の曲はまったくジャズとは違う『ベサメ・ムーチョ』という曲であった。なかなか素晴らしい選曲と歌唱力であった。1時間半たっぷりと本場のジャズを堪能した。Danny Alelloは私の大好きなジャズ歌手のSteve Tyrellと良く似た歌い方をしていたので初めてではあるが好感が持てた。又、彼の奥さんや家族も来て我々と一緒にジャズを楽しんでいたのは、やはり文化の違いであると感じさせた。
翌日は、MOMA(近代美術館)に行き、絵や美術工芸品などを鑑賞した。残念ながら、私はあまり美術工芸品などの意味内容が分からないためか、あまり良い印象ではなかった。しかし、たくさんの人たちが来場しており、値段も$20とリーズナブルな感じがした。また無料で日本語によるイヤホーンも、貸してくれたのは大変助かった。
3日目は、1日中地下鉄に乗り、マンハッタン島の北はセントラルパークから、南はウォールストリート街を抜けて、ブルックリンへ行く船着場まで往復した。その船着場の近くにはニューヨーク警察の博物館があり、アルカポネ時代のマシンガンなどが陳列されているのが印象的であった。又、途中で9・11事件のグランド・ゼロに今年も行ったが、建設は急ピッチで進んでいた。特に感心したのは、まだ他の建物などが出来る前にもかかわらず、地下鉄の駅が既に整備されていて、鉄道が運行している点であった。駅に入ってみたが、新しい近代的な駅となっていた。又、かなりの人が利用していて違和感を覚えさせない雰囲気であった。
NYの地下鉄は、マンハッタン島を南北に走っている路線が多く、基本的には5本の地下鉄が、マンハッタン島とブルックリンまで結んでいる。私は、以前も家族と何回も地下鉄を利用しているので、あまり違和感なく移動することができた。NYの地下鉄運賃のシステムは、1日中何回乗っても7ドルである。1日中路線を乗り継いで乗り回すことができる大変便利なシステムである。このメトロカードを購入するときにちょっと面白いことがあった。お金を両替したら、1ドル硬貨を渡されたのだ。1ドル硬貨はここ以外では見たり入手することが困難である。そのため3枚ほど記念に持ち帰った。
最終日は、なるべく早くNYの国内便空港であるラガーディア空港に行った。ところが、何時間も待たされたあげく、最終的には何本もフライトがキャンセルされ、当日はデトロイトに帰ることができなかった。フライト・キャンセルの理由は天候不良(雷と大雨)だった。そのため、翌日のフライトの確保と当日のホテルの予約などをするために、大勢の人たちが1カ所に、集中し大騒ぎであった。
今年に入って、どうもこの手のフライト・キャンセルによく鉢合わせる。今回でもう3回目である。メキシコのファーレル市に行くときもフライトがキャンセルされ、乗り継ぎのヒューストン空港でも時間が大幅に遅れ、メキシコのホテルに着いたら翌日の午前一時だった。また、前回の6月に出張で日本への帰国時には、ユナイテッド航空がエンジントラブルで、急遽サンフランシスコに途中で降ろされ、翌日のフライトで成田に到着した経過がある。そのような経験があるため、私はあまりドタバタせずにスムースに手続きを済ますことができた。「怪我の功名」ということなのだろうか?しかし、あまりこのようなことが度重なり、慣れてくるのも考えものである。
いずれにしても翌日のフライトは、スムースにまたシートもグレードアップしていただき、ファーストクラスで悠々とNYよりデトロイトへと帰ってきたのが唯一のメリットであった。
以上、今年の夏のNYブラリ旅の経験談でした。