2007年参院選における開票迅速化の試み
東京都江東区にみる101分短縮のドラマ

文化情報専攻 8期生 金井 治

はじめに
 私は現在、東京都江東区(人口約45万、有権者約36万)の選挙管理委員会委員長を務めております。当委員会では、「2007年参院選」を控え、住民サービス及び経費削減を目途にして開票時間の迅速化に取り組むことにしました。
 従来の開票作業は正確性、公平性に固執するあまり、迅速性を高める意識に乏しかった面があります。しかし、選挙結果を早く知りたいと思う有権者の要請に応えるのは、住民サービスの一環であり、経費削減に結びつく行政課題でもあります。
 そこで、当委員会では、開票作業の迅速性と正確性の両立は可能であるとして、そのプロジェクトをスタートさせた結果、当初の目論見どおり前回の参院選より101分の時間短縮を成し遂げることができました。

第1幕 意識改革
 「2007年参院選」開票作業迅速化への取り組みの第1歩は、関係者の意識改革から着手しました。まず、当委員会として、前回の選挙より100分短縮を目指すことを新聞各紙で意思表明することで内外に周知し、関係者に対する開票迅速化への意識改革を図ったのです。それとともに、「チーム江東」という区役所の組織の枠を越えた横断的な協力体制づくりにも意を注ぎました。

第2幕 創意工夫
「いちごパック」の利用
 いくつかの創意工夫から、主な内容について紹介します。
 従来の開票作業で時間が掛かるのは、投票箱からテーブル(分類点検台)に出された投票用紙を候補者別に揃え、点検する作業です。分類作業中に候補者の束が混ざるのを防ぎ、できるだけ輪ゴムを使用しないための小道具として、果物のいちごを入れる「いちごパック」を利用することにしました。投票用紙の大きさとも合っており、ピタリと収まるのです。候補者別に分類した投票用紙を「いちごパック」に入れることで、開票作業がスムースにはかどるようになりました。

「Tシャツ」を着たガイド役
 開票作業には約600人が従事しますが、リハーサルなしのぶっつけ本番で臨むため、従事者各人が分からないことも多々出てきます。そんな場合のガイド役として、背中に「場内連絡」と記されたお揃いのTシャツを着た人たちを開票場に配置したのです。「場内連絡」に問い合わせれば即座に応じられるようにすることで、作業の流れが滞らないようにしました。
 これらの創意工夫は、一見ささいなことではあるが、「ちりも積もれば、山となる」結果を生むのです。それは、読売新聞に「0.1秒の改革で脱お役所仕事」と紹介された記事が如実に物語っています。投票用紙1枚では僅か0.1秒の短縮でも、江東区では20万票を超えるので、単純に計算しても5時間以上の迅速化がはかられたことになります。

第3幕 開票結果
 7月29日に実施された参院選では、江東区の投票者数は21万3,933人、投票率は59.14%でした。参院選は選挙区と比例の2種類あり、特に比例は候補者数が多いという特徴があります。開票作業では、政党名が11、候補者が159人、計170という煩雑な仕分けが必要となります。
 結局、江東区では、開票開始時刻が午後8時50分、終了時刻が午前1時54分という結果になりました。前回の参院選の終了時刻が午前3時35分でしたので、当初の目標より1分多い101分短縮という成果を収めることができたのです。「チーム江東」のトップである山崎孝明江東区長も、開票終了まで開票場で作業を見守っていました。
 東京都には23の特別区がありますが、開票終了時刻は千代田区に次いで、2番目の早さでした。しかし、江東区の投票者数は千代田区の約9倍あり、実質的には1番であると自負しております。ちなみに、前回の参院選の開票終了時刻は、23区中14番目でした。
 経費削減に関しては、開票従事者を683人から642人と41人減員したこともあり、人件費で171万円の節約をすることができました。
 今後の検討課題は、疑問票の処理方法です。当委員会としては、先進的な自治体の開票手法を調査・研究し、なお一層の迅速化に努めていきたいと考えております。そしてこのほど、この成果に対して、総務大臣表彰が決定したことも付記いたします。





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