随筆「甘い話」

文化情報専攻 6期生・修了 山本 勝久


大阪に力餅食堂というものがある。チェーン展開ではなく、昔ながらの暖簾わけによって同名の料理屋が関西各地にある。

ここでは関西風のきつねうどんや他人丼のほかにおはぎを出す。これには、つぶ餡でもち米を俵形につつんだいわゆるぼた餅と、こし餡をもち米で巻きくるみ、さらに上からきな粉をまぶしたものの二種類がある。いずれがあやめかかきつばた、味は甲乙つけがたい。私は店に入ると必ずふたつとも注文する。もっとも、これはうどんを食べた後ゆえにこそつい手が出る甘食であって、土産に一箱というにはやはり重い。

それほど腹に重くなく、一口でペロリといけるのが、伊勢の名物「赤福餅」。例の偽装が江戸以来の暖簾にきずをつけたことは記憶に新しい。

酒井順子さんの『甘党流れ旅』(角川書店 2007年)によると、酒井さんの会社員時代、名古屋へ出張に行ってきた同僚がよく赤福餅を土産に買ってきてくれたそうな。東京のひとからすると名古屋でなら赤福が買えるという認識があるらしい。

しかし、じっさいのところ大阪駅でも大人気の商品(だったというべきか)。駅前の百貨店では、少ない個数(2、3個)のパック売りまであったくらいですから。

ところで、私は今年、偶然にも伊勢へ行く機会が二度ありました(いずれも営業停止になる前)。本場の赤福餅を食してきたことは言をまたず。伊勢内宮の参道沿いの赤福本店のメニューは赤福餅と赤福氷のふたつのみ。

赤福氷とは、かき氷に赤福のこし餡をふたつ入れたもの。この餡が氷のつめたさと相まって、ふつうの駅売りの赤福餅のそれよりも、甘味が増しているのが素晴らしい。

私は当今の甘さひかえめのスイーツも好もしくおもうが、ひとくち食べれば頭にズキンとくるほど砂糖をきかせた甘さも捨てがたい。この赤福氷はひさびさに出会った後者。これはやはり本店まで来たかいがあったというものだ。

そして、今年は、いまひとつ、岡山の「大手饅頭」なるものを現地で入手してきたのですが…。まあ、甘い話はあとを引くので今回はこのくらいで。





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