WPFG初参画記in南豪アデレード
―14人引率格安海外旅行より安全安価で豪華ホテル7泊実現―
国際情報専攻 4期生・修了 長谷川 昌昭
はじめに
約1年の準備を経て、世界の法執行官とその退役者が集う国際競技大会へ、職務を共にした同士と配偶者の14人で、旅行業者抜きの海外個人旅行を楽しく安全に格安よりも更に安い費用で満喫した。
世界の仲間との競技、パーテイ、配偶者達の豪州一のエァーズロック1泊観光へと、夫々個人旅行の醍醐味を楽しめたのは、業者抜きということと、Qantasの厚意と、参加者の高い危機管理意識と仲間意識に支えられた結果だ。
トラブルや危険負担は、自己責任を前提に徹底した。全員が安全に帰国出来て、団体引率の達成感に浸っている。その過程での何回かのネゴシェーションの場面では、今後も一層交渉力と英会話力の研鑽の必要性も自覚した。
1 WPFGa概観
米国カリフォルニア州の一保安官が、同一職種に生涯を賭ける者同士の紐帯の絆を保つため、職種特有の術技を競い、団結を強固にし、併せて国民に職業への理解と共感を深め、開催地への経済効果も狙って、同州のサン ディェゴで’67に第1回大会が開催された。参加者は504人、16競技を2日間競ったのがスタートだった。
主催団体は’70に米国内の非営利団体に発展し、前回のスペインのバルセロナ大会は60種目、第12回目の今大会は49カ国、51種目、12日間、参加人員1万2千名、1兆2千億円の経済効果を齎した大会に発展成長した。主要開催国は米欧豪で、日本は未開催、知名度も低いが、米欧豪では関心が高い。その証拠に、競技終了後カンガルー島へ出かけた時、フェリーから下船直後に地元TV局のインタビューを受けたり、地元スパーマーケットで「WPFGの日本選手団だ、お昼のTVで貴方を観た。」とフレンドリーに歓迎、値引きするなど、警察・消防・法執行官のステータスの高さや信頼度を窺い知ることとなった。
競技種目は、拳銃競射、陸上・室内外競技一般で、トライアスロンや職種上独特のバケツリレーやホース展張、テニス、ゴルフ、レスリングと多彩で、私共はゴルフの年齢別個人ハンディ戦にエントリーした。
参加資格は、同職種の現役と、円満退職・勇退後20年以内の健康な者だ(途中退職や懲戒解雇者は排除される)。旅行・保険は事前加入証写しの送付が必要で、その他、現職者は当該官公署の写真付証明、退職者は退職官公庁証明又は組織認定団体の写真付証明が必須である。最後に競技中の受傷・他害行為は自己責任の同意誓約に署名し、参加資格認定授与と厳格である。
エントリー代は$85USD(約\10,200.同行者は約\6,600)と、競技別参加費(ゴルフ3日間プレー代$250約\22,500)が必要だ。
アデレード市内を歩いていると”Where are you from ?” とか”What did you do ?”など出身国や職種を何度も訊かれる場面に遭遇、別れ際には”Have a nice day!” や”Good job !!!”と激励を頂戴し、職種への信頼性と理解に畏敬の念の眼差しを何度も感じ、法執行官の社会的貢献に高い関心度と国民との紐帯の強さを感じる感激の連続で大変に有意義だった。
2 感激の開会式
開会式は豪州で一番有名なアデレード・オバールク・リケット場だった。49カ国1万2千名の選手団は、4万5千名の観衆が見守る中、堂々と行進をした。初参加のペルーは一人の団長兼選手が同国国旗に続き行進、盛大な拍手に迎えられた。入場行進はオリンピック同様に国名のABC順に入場、行進、整列。
私共は、木村通利日本警察消防スポーツ連盟理事長を筆頭に、総勢41名が続いた。側面の横断幕Japan Police Fire Sports Federation(JPFSFは競技参加者にIDの発行権限を付与する我が国唯一の米WPFGの公認組織)を観客の見易いように掲げ、神奈川県警のトライアスロン選手の新婚カップルが持って入場した。『Japan!!! 』の声援には感極まり、VIP席に居る筈の配偶者4人の姿は、涙で?翳んで見えない。異国で我が国にエールを送られたのは初体験だ。将にオリンピックの感激を堪能した。
行進の殿は、開催国オーストラリア南豪州の警察・消防・税関等の各長官で、緊急車両に乗車し、赤・青・紫・黄色の警戒灯を点灯させて観衆の声援に応え,続いて大会運営競技役員、通訳、案内人等も参列した。老若男女大勢のボランテイアも生甲斐と誇りを堅持し、愛嬌を振りまきつつ堂々の行進で華を添えていた。
異彩を放ったのは、次期開催国カナダの六頭の白馬に跨った騎馬警察官の赤と黒の制服姿である。この姿は人気を呼んだ。騎乗指揮官は、4月20日に次期開催国のレセプションで交歓した、著名なカナダのRoyal Canadian Mounted PoliceのA.D.(AI)Macintyre副司令官で、手入れの行き届いた駿馬に威風堂々の勇姿で、観客の盛んな喝采を浴び次期開催国の面目躍如だった。
開会次第は、開会宣言や祝辞、次期開催国告知、エンターターメントは豪州民族舞踊のパフォーマンス。4月19日午後5開始の行事は10時過ぎまで、前夜祭は、午前1時まで続いた。
3 競技寸景
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開会式前の警視庁退役者・配偶者 |
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気遣いの素晴らしいDuke総裁夫妻 |
私共は、4月18日〜20日の3日連続の54ホールのストロークプレーに挑戦した。
初日はシドニーの消防官と警察官、二日目はマレーシアとスェーデンの消防官、最後の日はオレゴンの巡査部長とニューヨークの州税徴収官といった具合に、多彩な国の法執行官とハンディ戦を楽しんだ。四名一組でラウンドするのだが、三日間、元警視庁の近代五種選手の八須さんとご一緒だった。国際競技経験豊富な方なので、国際競技でのマナーや要領のアドヴァイスを戴いた。
当日の朝は、未明の午前5時45分に集合し、そこから選手はバスに乗込み、コースまで約1時間、車内では各国語が飛び交っていた。コースに7時過ぎに到着、降車後直ちに受付を済ますと、思い思いに練習場へ足早に向った。7時30分からのミーティングは総て英語、コースの理事長の簡潔な歓迎の辞や、競技役員からのルール説明もあった。特に、ノンアルコール・スロープレーとギブアップ、0Kボール禁止で、フェアプレー精神などであった。8時に所謂ショットガン方式のインプレーだった。
午後1時半頃には競技を終え、クラブハウスに戻り、2時半の帰りのバスを待つ間、遅いランチやビールを楽しみ、戦果を語るなど賑やかで楽しい交歓だった。
現地の3月の気候は日本の初秋を思わせた。ゲームの想い出は、12箇所のバンカーに囲まれた難ホールで、私のみがバンカーに掴まらなかったが、その後のホールで深さ2.2mのバンカーからの脱出に14ストロークも叩いたことや、145mのホールでガードバンカーから1打でオン、これが3日間54ホール中で唯一のパーだったことなどだ。散々なスコアだったが、世界の仲間との交歓は、楽しく心地善く、3日連続のプレーは全く疲れなかった。
特に思いで深いのは、3日目のことである。一緒にラウンドしたオレゴンの巡査部長の奥さんは、競技中に適当な距離から見守り、写真撮影や全員の打球の行方を教示し、”Nice Shot”や “Nice Ball”をと声をかけ、当方も3回ほどお褒めを頂いた。「再来年はカナダです。自宅から車で8時間程度、是非、事前練習に寄ってください。よい練習場を紹介します。」などととてもフランクでフレンドリーなご夫妻に遭遇し、期待に沿って再会を期したい。
4 旅程・教訓とエビソード
旅程は、3月14日出国、22日帰国、ホテル7泊、機中1泊の9日間だった。成田〜シドニー〜アデレードの往路と、アデレード〜メルボルン〜成田の復路、合計は何と11,255マイル、稚内〜鹿児島は1,281マイルだから、概算日本列島4往復半の長駆だった。
往復航空運賃・空港送迎専用車運賃と7泊の宿泊費でホテルは、エントリーブック掲載中最上のアデレードヒルトン(280AUD=280×98=\27,400×7=192,080.-)7泊分の価格よりも安価な\189,000.-で、海外旅行の醍醐味を堪能した。
エントリーブック115頁を読破、ネット検索で大会本部指定ホテルに直にアクセス、航空会社との折衝は虎ノ門まで30回以上足を運び他にネットで交渉、記録を保存して本番に臨んだ。豪州は査証が必要な国だ。業者で手続きすると一件5〜6千円かかる。直接足を運べば1,500円程だ(豪州大使館ではとても丁寧で親切だ)。この辺にも個人旅行の秘訣が存在している。
大使館の資料は絶対に確実で最新情報が満載されている。特に豪州の館員は丁重な日本語で対応してくれ、下手な英語で話しかけたら、「日本語で参りましょう。」と言われ赤面した。
旅は企画、調査、道中、披露、振り返る楽しみだそうだ。本音は交渉が遅々として進まず、世界の12,000名がアクセスする超多忙な事務局に電話がなかなか通じず、何度か投げ出したい心境になったこともあった。
エントリーブックを米本部から送付された際、マレー・マクレーン豪大使とは、一昨年Qantas航空創立85周年感謝の夕べで面識があったので、送付したら、大使自書の署名入りご懇書が届いたことに大変に励まされ、厚く感謝している。
昨11月に米サンディエゴ本部へ私費で、新総裁就任表敬とエントリーフォームの補正や参加資格の折衝に訪れた時、サンディエゴ空港に迎えに来たキヤシィー課長やバーバラ監督官。デューク総裁を多忙な中に訪れた時は、とても丁寧に当方の下手な英会話を三時間も聞いて下さったことが何よりも支えだった。
開催地でのデューク総裁との再会には、奥様に謝意表明として、各国代表者歓迎会で家内制作の木目込み人形を贈呈した。次期開催カナダ前夜は、ホテルから25分程の海浜リゾート地グレネグレの白砂のビーチが広がる洒落た雰囲気のクラブで開催された。デューク総裁夫人は贈った人形を包んだ桜模様の風呂敷をスカーフにし参加した。その思遣りには感銘した。
その気配りは、サンセットセレブレーションと言われる沈む夕陽を眺めて、太陽に感謝し、自分の今日一日の無事と幸せに想いを馳せる気配りそのものを感じさせられた。
トラブルは、往きのシドニーで乗継ぎ待ちの3時間を利用したシドニー湾観光後に市内電車で空港へ戻る電車一区間を間違えたのと、到着日に大会本部で競技登録中にコンピーュターのトラブルが発生し、ホテル到着が遅延、登録に夢中になりホテルチエックイン遅延連絡を失念し、危なく宿無しになりそうな目に遭った二度のみだった。
豪州の多くの方々の親切と、ユックリした話し振りも幾度か助けられた。
旅行業者抜きの旅程計画は、Qantas航空会社の全面的協力を得て、航空券・宿・入国ビザなどの旅程の総てを航空運行表やホテルリストと首引きで組立てた。
大会参加報告は、警察庁教養担当橋本参事官へ豪大使からの謝意表明と旅の安寧を祈念する書簡を添えて伺った。漆間警察庁長官・伊藤警視総監へ参加報告に参上の際の激励は最大の励ましだった。帰朝後は長官・総監・参事官への結果報告した。
参加費の二重請求による過払いへの対処もあった。VISAに二重精求された坂田さんの参加費用39,809円は、5月24月に振込まれたと彼から一報があり、私は米・豪と数回に亘るMailやFax国際電話の交渉の結果のネゴシェーションは、国境を越えても根気と継続が大事との教訓と達成感を味わい、WPFGに感謝している。1万2千名の世界各国との対処では間違いもあろうが、流石に法執行官の組織との感銘を新たにし、VISAの世界的対処性にも改めて感心した。事後の引落額の確認は大切ですゾ。
アデレードヒルトンは、WPFGの大会役員と選手団は南アフリカと日本選手団だった。同じ屋根の下の仲間は、エレベーターや廊下で声を掛け合う間柄になるのは、時間を要さなかった。南アは、来年のワールドサッカー開催地であるので、国際競技大会実態把握の調査方法として、各自が夫々帰国後に報告会で教訓を抽出するため、タクシー運転手への事前教育や交通・会場案内標識・ボランティア担当等と各人が宿題を抱えての参加だった。
ホテルのEmma副支配人は、三日間の早朝出発にはタクシーを優先的に配車してくれた外に、個々にもお世話になり、帰国時の早朝に「豪酒」をお礼にプレゼントしたら、流石に銘柄と美味をご存知の妙齢の女性だった。
参加者から私に謝礼の贈呈があった。それにも勝る初団体海外引率の体験を得たので辞退させて戴いた。
昨年7月からの準備は、参加者・関係者の理解と支援に支えられ完結した。申請エントリーやWPFGとの交信・折衝記録、参加証、旅券、査証等々の写しは盗難・紛失防止の複数複写で、4キロ超ファイル3冊で持込超過料金にも遭ったが、未使用のままで無事帰国した。
航空券は持たないチケットレスで経費節減と盗難・紛失と携行品軽減を期した。
- a WPFGはWould Police & Firefighter Games Foundation「世界警察・消防競技大会」。