デトロイト・オートショー見学記

                       国際情報専攻 6期生・修了 森田喜芳


 2007年……自動車にとっての新年は、自動車のメッカ、デトロイトにてオートショーから始まった。私がこのショーについてレポートするのは今回で4回目である。
 今回のオートショーは、仕事の日程の関係上、最終日の1月22日に見学した。

 自宅から車で約40分、会場のコボ・ホールに到着。午前10時であった。今回は、真ん中の入り口から入場してみた。建物に入ると、Joe Louisの高さ約3メートルの銅像が前面に立っていた。Joe Louis(1914~1981)はヘビー級のボクサーで長いことチャンピオンとして君臨していた。(11年間の王座在位中に、最多防衛記録である25回連続で世界王座を防衛した。全階級を通じて最多防衛記録である。この記録は現在も破られておらず、また今後破られる気配すら見えない。「褐色の爆撃機=The Brown bomber」のニックネームで親しまれた。)
 入場料は前回同様、12ドル50セントだった。驚いたことに現金のほかにクレジットカードでも入場券を購入することができるような装置が設営されていた。日本ではクレジットカードで入場券を購入することはまだまだ難しいのではないか。改めてアメリカ社会がクレジットカードに浸透された生活環境であることを痛感した。
 最終日ということもあって、お土産品などが20%のディスカウントだった。早速、今年のショーの帽子を購入した。15ドルが13ドルで購入できた。会場に入る前に取った朝食もそうであった。ホットドッグ、野菜スープ、ポテトチップ、ペプシの飲み物。このうち、ポテトチップは無料であった。入場券を持っていたからである。なにかかなり得をしたような感じだった。

 10時20分に入場。最終日の午前中であるためか入場者はかなり少なかった。ゆっくり見て回れた。見やすかった。日曜日にあたっていたからであろう、家族連れが多かった。両親が子供に、車を見ながら説明をしている光景に接すると、さすが車社会、子供たちはこうして幼いころから車に関する豊富な知識を身につけていくのだな、と痛感した。また、かなりの年配のご夫婦の姿も見られた。ちょっとした散歩がてらに、ショーを見に来ているのであろう。日本ではなかなか見られない光景である。さらに、来場者たちもスーツ姿の人はほとんど見られず、ジャンパーにジーパン、そしてスニーカーといういで立ちの人が大半であった。
 昨年も気付いたことであるが、各社の説明役は男性が主体となっていた。彼らはタキシードや黒のスーツ姿で、正装していた。女性案内係も同様に黒の上下スーツ姿がほとんどであった。数年前までは、チア・ガールのような女性が多かったが、最近は皆無である。
 入場するときに、金属探知器などによるチェックがあった。これは今回はじめての経験である。やはり安全についてかなり気をつけていることがうかがわれた。

 センターの入り口から入場すると昨年同様、正面にホンダのブースがあり、その右側はフォードのブースであった。 会場の1番手前には、ホンダのエレメント車が数台並んでいた。今年は装いもあらたにして、このエレメントの販売に力を入れる、というメッセージが感じられた。ハイブリッドに興味があって、ホンダのアコード、シビックの車を見た。意外とエンジンルーム内が、コンパクトに仕上がっている。内心びっくりした。
 コンセプトカーのアキュラ、スポーツカーが大変よかった。V−10のエンジンであり、次の買い替えるときには、この車を買いたいと感じさせる車であった。また意外にも、ちょっと小さめなRV車(RDX)がセカンドカーによいと思った。
 フォードのブースでは、コンセプトカーは非常に興味があった。ボデー全体が四角く、そして長い。1960年時代のスタイルだと、説明者のトムクルーズに似たイケメンの男性が説明していた。かなりの人だかりであった。または、ボンネットが電動式で開いたりして、電動の装置が盛り込まれていた。展示されている車は昨年とあまり変わらず、大きなトラックやRV車が主体であった。ただし、ハイブリッドや電気制御による安全装置などにようやく力を入れてきていることがうかがえた。

 すぐ隣に、マツダのブースがあった。昨年と比べて、かなり元気があるように感じられた。特にスポーツカー、RV車、コンセプトカーのスポーツカー(流雅)はなかなかいい。ただし、最大の欠点はナビゲーターが標準装着されてないことである。私は乗用車では、いまどきナビゲーターが装着されてない車は、車ではないという評価をしている。その点ではイマイチである。
 VolvoやJaguar もそれぞれ特色ある車を出展しており、私の目を楽しませてくれた。
 KIAやHyundaiの車もだんだん良くなってきた。価格が安いのが魅力であろう。ただし、足を止める人はあまり多くなかった。
 三菱自動車では、スポーツカーに見入る者がいるにはいた。しかし、正直言って見るべきものは無い。
 スバル(富士重工)はやはり、売り物の水平対向3リッターの6シリンダーエンジンが特徴でありなかなか面白い。あとは販売力であろう!
 ダイムラー・クライスラーでは、スマートという車が非常に面白い。コンパクトで、価格も1万5000ドル代であり、気に入った。どこかで見た車だなあとよくよく見ていたら先日、成田からデトロイトに帰る時のノースウェストの機内で見た映画の中で、ダスティン・フォフマンが乗っていた車であることを思い出した。この車は、日本でも売れるのではないかと思う。ダイムラー・クライスラーでは一押しの車である。
 ニッサン車も昨年同様、大型のトラックやRVを主体に展示していた。ニッサンでも、スポーツカーのコンセプトカーなどが多く見られた。全体的におとなしい感じであった。
 BMWはかなりの人気で、人が大勢いた。なかでも面白かったのは、オートバイが2台ディスプレーされていたこと。子供や大人が、各々得意のポーズで写真を撮っているのが印象的だった。
 ホンダやスズキなども、代表的なオートバイをディスプレーすればもっと違う味が出るはず、と感じた。
 ランボルギーニやフェラーリなどのスポーツタイプで高級車は、入場者の目を楽しませてくれた。ただし購入するとなると、一般の人ではなかなか手が出ない車であり、また価格も表示されてない点が印象的だった。標的は、価格などに左右されないで購入する客層であると思えた。
 GMはさすがに、多くのスペースを確保して多くの種類の車を展示していた。また、コンセプトカーは、フォードと同様に昔の車を思わせる感じであった。すなわち、フォード・ミュージアムに展示されている車の改良型のような車が見られた。今回もさすがにGM車であり、相変わらずトラックやRVを市場で拡販したい意向がありありと見えた。しかし、時代の流れや方向転換はやはりナンバーワンの座からおりないと分からないのかも知れない。あまり真面目にやっているようには見えなかった。しかしながら、ハイブリッドや電気制御、その他時代の先端を行く車の研究を行っているのだというPRは怠っていなかった。相変わらずHammerやGMCの大きなトラック(6.6リッター、V8/5.3リッターV8)などが主力で展示されていた。
 トヨタは、やはりレクサスがすばらしい。コンセプトカーのスポーツカーやRV車を数多く出展しており、今年は世界一を狙う意気込みが感じられた。ブースのスペースはかなり広く、多岐にわたる車が展示されていた。やはり世界のトヨタを感じさせられた。
 ベンツはスポーツカーが多く、今年はやる気と勢いが感じられた。


    <見学した全体のイメージ>
  1. パワートレインやハイテクを装備した車がかなり多かった。GMの電気自動車、フォードのワイヤレスシステムの車、ニッサンの太陽電池で充電する車など、環境と安全に配慮した車が目立った。
  2. コンセプトカーは、ほとんどがスポーツカーで占められており、今後はスポーツカーを主体として売り出すメーカーが多いとの印象を受けた。
  3. ビッグ・スリーや欧州車、日本メーカー、そして韓国メーカーなど、皆そろってスポーツカーのコンセプトカーを展示していた。今年から来年にかけてスポーツカーが売れるだろうか?イマイチ疑問であるが、各社はこの分野にかなりの力を入れていると感じられた。

 以上の見学にだいたい2時間をかけた。ちょうどそのころ、つまり12時30分頃から、大勢の客が入り始めた。従来の年と同じような混雑具合になってきた。(どうやら入場者は、今年は昨年より減少しているらしいとのこと!やはりビッグ・スリーの元気がないのが、その原因なのか?)
 あまり混まないうちに早めに切り上げて帰路についた。空模様は急変し、雪が大量に降ってきた。運転には慎重を期して家路を急いだ。こんなことは過去3回のうち初めてである。しかしながら最近の動向などから見て、どうやら今年は世界ナンバーワンの座をGMが譲りわたすのではないか?ということが私の関心事の第一焦点である。
 今年の自動車ショーを見て感じたのは、今年が新旧世界一の自動車メーカーの分かれ目にしている!との印象を持ち、さらに日本の自動車メーカーや韓国自動車メーカーはかなり力をつけてきており、北米での生産を毎年増加している現状である。このことはビッグ・スリーが、毎年北米のシェアを下げていることになる。果たしてビッグ・スリーが生き残るのか、はたまた新ビック・フォー(トヨタ、ニッサン、ホンダ、ヒュンダイ)のメーカーが北米で、販売量の拡大が大幅増になるのか?たぶん今年中に決着が付くように感じる。
 需要と供給のバランスが必要であり、われわれ自動車関連メーカーはその分岐点が今年にかかっていると言っても過言ではない。
                           

(Jan-22-07)
                                   <以上>



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