デトロイト・レポート#:02 -米国自動車販売と将来動向予測-
国際情報専攻 6期生・修了 森田喜芳
以下のレポートは前回(電子マガジン26号)の続編であり又、総括したマトメ版である。
前号は、米国のビッグスリーを中心にレポートしたが、ここでは日本車、韓国車などについても言及してみる。
アジア系がトップ3に(NYタイムズ特約)エドマンズ・ドット・コムは、トヨタを筆頭とするアジア系自動車メーカーの米国販売が、6年以内にビッグスリーを追い抜くと予想している。
06年7月の各社販売は、GM、トヨタ、フォード、ホンダ、クライスラーの順となった。二次的な変動と考えられていた順位の入れ替えは、確実な潮流となりつつある。
06年1月、3万4000人の人員削減と、14工場の閉鎖を核とするリストラによって、「アメリカの道路を奪い返す。」と豪語したフォード会長は、トヨタに抜かれる覚悟を決めた。その後、あらたに1万人の人員削減で、フォードのシェアは00年より10ポイント低い14から15%にまで落ちると見込まれる。6年前にGMを抜くとまで言われた勢いは今やどこにもなく、07年には、2位の座をトヨタに譲ると見られている。現在の人員削減計画が完了すると、米国労働者数はトヨタを下回る見通しだ。
トヨタがケンタッキー州に、最初の独自の工場をオープンした86年には、誰にも想像できなかった事態が起きている(ちなみにホンダは83年に工場をオープンした)。その工場で、今500万台目の「カムリ」が生産されたばかりである。
「カムリ」はかつてフォードの「トーラス」が、握っていた米国債最多販売車の栄誉を、ここ10年近く維持している。
時代を築いたトーラスは、10月末にアトランタ工場から最後の車を出荷した。ブルーム・バーグ・ニュースによると、トヨタ「カムリ」やホンダ「アコード」などの日本車に対抗して85年に登場した「トーラス」は、長年にわたり同社のベストセラーとなり、これまでに700万台が生産されてきたが、最近の販売不振でついに生産中止となった。
最初の「トーラス」は、いわゆるジェリービーン・スタイルで、それまでの箱型スタイルが主流だった米自動車業界に強い衝撃を与えた。メディアは、「米メーカーもアジアのベストセラーに競合できるかもしれない」といった記事を掲載し、その興奮は消費者にも伝播し、低迷していたフォードのビジネスを打開する起爆剤となった。最初の年で26万3450台を発売、その5年前まで11億ドルの損失を計上していた同社は、32億9000万ドルの純利益を計上し、92年のピーク時には40万9000代を売り上げた。96年までの5年間は米国のベストセラー車にもなり、フォードはトーラスの基本デザインを使って、マーキュリーからすぐに10万台の「セーブル」も生産した。
しかし、96年に実施した3回目のモデルチェンジは、今までよりさらに小さく見える楕円形を多用したスタイルが不評で、大失敗に終わり、2000年以降は大幅な値引きのレンタカー・フリート向け販売が増え、利益率も縮小した。
小型車の動向米エネルギー省と環境保護局(EPA)の2007年型車を対象とした人気番付では、トヨタ自動車のハイブリッド車「プリウス」がトップに立ち、上位12社のうち7社をトヨタとホンダの日本勢が占めている。
トップスリーはハイブリッド型の日本車が独占。前年の2位から首位に浮上したプリウスは、ガソリン1ガロン走行距離が市街地で60マイル、幹線道路でも51マイルを記録している。2位はホンダの「シビック」、3位はトヨタの「カムリ」である。4位はフォードのハイブリッド型「エスケープ」が食い込んだ。
また米国における乗用車販売に占める小型車の割合が、過去最高を記録する見通しである。USAトゥデイによると、コンパクト車やそれを含めた小型車の販売台数が、乗用車全体の31.5%に達し、少なくとも1987年以降で最高記録となる見通しである。オートパシフィックの調査では、伸びは2010年まで続くと見られている。
小型車の販売台数は約250万台に上り、2001年以降で最高記録となる勢いである。またSUVやクロスオーバー車(CUV)などを含めた小型自動車の72%が外国車であるため、デトロイトにとって耳に痛いニュースである。
現在、日本が得意とする小型車の販売が急伸しており、アジアの新ビック4の販売が、今後も伸びると予測される。
しかしながら、今後は、<環境や燃料対策に対応する車が先行する「ハイブリッド車」なのか?>はたまた、<ヨーロッパで市場を占拠しつつある「ディーゼル車」なのか?>、<現在のブラジル市場の80%を占める「エタノール車」なのか?>今のところ、予測することはかなり難しい状況である。
構図としては、ハイブリット=日本勢(トヨタ、ホンダ) ディーゼル=ヨーロッパ勢、エタノール=米国勢(GM、フォード)である。
ビッグスリー、アジアの新ビッグ4、そして欧米車が相乱れて、三つの先進技術が平衡して、開発ならびに販売するというのではなく、技術の競争が今後の自動車メーカーの明暗を分ける戦いとなってきた。
日本車は、開発の拠点を日本の国内本社で行いその技術を海外にトランスファーして生産する、という方式をとっている。果たしてこの方式で、世界最大の激戦区であるアメリカで勝ち抜くことができるのであろうか?大いに注目することであり、07年以降の市場動向を先読みする眼力が今試されている時期である。
果たして07年、私のレポートには上記の三つの先進技術のうちどれが主力になるのか!次回以降、別途レポートをしたいと思っている。
尚、本稿をご拝読いただきました方には恐縮ですが、併行して寄稿してある「デトロイト・オートショー(2007)」を、ご拝読いただけますようお願い申しあげます。