CEOの誠実で善意溢れる『相手を敬う心と言葉』に学ぶ

                      国際情報専攻 4期生・修了 長谷川 昌昭
                   (科目履修・研究生・博士後期を目指し在籍中) 


はじめに
 冒頭に電マ16の「4 CEOの心意気」でACCJ(在日米国商工会議所)昼食会に招待されて前NWA CEO Richard H. Andersonや現NWA目代 純 CEO並びにボーイング副社長等の諸賢の「相手を敬う心と言葉」に感銘を受けての拙稿に機会ある毎にご指導と励ましを贈って頂いた院生・修了生・多くの内外の諸賢に御礼とご期待に添うべく以下紹介します。
 御高承の通り、CEOとは、chief executive officerの略であり、通例 最高経営責任者、企業のトップに位置する人、最高執行官、会長、代表執行役(委員会等設置会社において、代表取締役に代わって設置される役職)を指します。当然世界的企業のCEOは、多くの高い資質と素晴らしい類を見ない人徳を備えて、謙虚にして絶えず弛まぬ努力を継続し、現在の地位においてキャリア伸ばし、社会的貢献に加え、当該企業への限りない貢献をしている中から、心の琴線に触れた一端を紹介します。
   
    Mr. John Berghetti CEO Qantas Airways Limited
    Ristorante Er Cuppolone San Pietro Heusteigstrasse 45 70180 Stuttgart Germany


1  Mr. John Berghetti CEO Qantas Airways Limited
 今回のFIFAの日豪戦が結ぶ縁で、去る6月12日(月)、欧州中世美を秘めたドイツの南西部の美都市シュッルトガルトにおいて、その謦咳に接する機会を得ました。
 Qantas Airways Limited カンタス航空(以下Q航空)は豪州クイーンズランド州で1920年11月に創設、世界で2番目、また英語圏では最も長い歴史を持つ、南半球最大の航空会社で、今期04/05年度売上高は7億6,360万豪ドル(税引き後純利益)、 従業員数は 約38,000人(カンタスグルー全体)。その過半数を占める航空部門で134機の運行を掌っています。そのトップはJohn Berghetti CEOです。
 カンタス航空と日本の関係は、’47年12月に山口県防府(在日豪州駐留空軍基地)へ初飛行以降は、翌年に羽田空港への就航に始まり、爾来55年以上にわたり日本とオーストラリアを結ぶ定期便を運航。現在、成田からシドニー、メルボルン、ケアンズ、パース、ブリスベン、また、名古屋からケアンズへの直行便、関空からはシドニー、ブリスベン、ケアンズを結ぶ便を運航しています。
 特に私は、同氏の以下の諸点「迅速性」、「スタッフの貢献度の把握力」には人一倍の特別な気配り振りの発揮と「誠実性と謙虚性」に富んだ対応姿勢は隋時「相手を敬う心と言葉」を随所で感じさせられ深い感銘を受けました。
 私共「FIFA World Cup Japan VS Australia VIP Tour(from Japan)」の9名は、日本から開催国ドイツへ香港、シンガポール経由で乗継ぎの空路で向かった。成田からは香港・シンガポールまでは、C航空、そこからはQ航空でドイツに乗り込んだ。
 氏には挨拶の時に、シンガポールまでは、C航空のビジネスクラス(以下Cクラス)、そこからはQ航空エコノミークラス(以下Yクラス)でドイツへ来たこと、そのC航空とQ航空との違いは率直に外交辞令を排して伝えた。そして私共の一行も同意見でQ航空の「快適性」に対す謝意を表明した。曰く「アテンダントの起居動作等は穏やかさと謙虚さを兼備し、迅速で素晴らしい。」「空路の選択は、等級よりも会社」「睡眠中の搭乗客へまでも癒しの細かい配慮に富む」。
 私は特に、日本からの空路は異なる航空会社と異なる等級を体験して、Q航空の快適性とアテンダントへの躾や寝ている客への配慮等を快適性とCS度を高める躾教育の徹底振りを実体験に基づき、具体的客観的に実証しての話を挨拶の枕詞に混えました。
 対戦後のQantas Partyは、同氏はイタリー系の豪州人であるところから、著名なイタリー料理店(Ristorante Er Cuppolone San Pietro Heusteigstrasse 45 70180 Stuttgartの情報はこのレストランをコーディネイトしたQantasのJudith Maher Sponsorships & Community Promotions Adviserに8/4問い合わせた結果は、即刻返信され、更にはplease contact me if you need anything else at all kind regards, Judithとの追記があり、特別な気配り振りの発揮と「誠実性と謙虚性」に富んだ対応姿勢はトップから組織の末端まで徹底しいる様子が看取されて一層感銘を新たにしたMailでした。)で開催され、日本人9名とドイツ人10名に同氏を含めての20名はサッカー観戦を終えてホテルに帰り、シャワーもそこそこに夜遅くから翌日へかけての宴でした。イタリー料理であり、食後酒はグラッパを所望したところ、後刻漏れ窺がうと私独りのみで、同氏のイタリーの食文化を理解したと琴線に触れたとのことであった。
 外交辞令を抜きにして、今度の旅は席の等級を超越する程の航空会社間の格差を看取し、経験豊富な同行の友とも同意見でした。
 『等級よも航空会社の厳格な選別』を2度も実体験し、快適性を享受出来て、これは同氏の指揮統率の賜物で、帰路のQ航空は大いに楽しみで期待可能性が高い旨を同氏に伝えた。
 同氏は率直に喜んでくれ、拙い英会話が通じた達成感に浸っていると同氏は最も信頼しているスタッフに伝え、従業員と喜びを共有する旨の答えが丁寧に還って来た。
 また 偶然にも晩餐会の翌夕方にホテルのエントランスで同氏に遭遇したら、機先を制されて「昨夜は有難う。特に我が従業員の好事例の指摘は早速伝えたので深謝します。」旨の迅速適確で、明るく爽やかな謙虚な答えが還って来た。
 日本初戦敗退の帰国便はその所為か、快適至極な気配りが効き、長躯が全く気にならなかった。帰国後にパーティでの一緒の記念撮影の写真を送ったところ(June 27,’06)、迅速にサインした丁重な返書がご多用中にも拘らず届いた(July 7,’06)。世界企業のCEOの迅速性と誠実性に加えてCS第一の謙虚さも併せて学ぶ機会を与えて頂き心から感謝しております。デスクに飾っています。
   
  (上・左)昭和60年中曽根総理から褒状 (上・右)創業者見守る世界の
                                   マラソン完走賞の束
  (下・左)伊藤義治CEO            (下・右)ボストンマラソン完走賞・ホノルル
                                  警察本部長表敬記念写真


2 伊藤 義治CEO 日本開発興業株式会社
 氏とは、前々職時代には職務上の大災害等の重要突発事態対処の必要性から半ば強制的に都心部の一等地―外苑前―に2年近く住わされていた時期に回り逢った方です。
 外苑前の公舎は、近くに青山墓地・神宮外苑並木通りなどがあり、東村山の自宅は空家にし、別途の公舎家賃を支払い、家内と家族だけは週1回は自宅の換気等で日帰りの帰宅をするパターンの家族・犬共々の初台・神宮前・南千住・向島と7年程の移住生活をした。
 愛犬フォークの散歩道は、青山墓地・神宮外苑並木通り・原宿・表参道・六本木や赤坂が定例コースで、その途上に梅窓院という名刹が国道246青山通り沿いにありました。
 犬に引かれて時折境内に入ると、そこで一際立派で常時手入れの行き届いた墓所 ”伊藤家乃墓” を発見し、何か祖先を敬う敬虔な気持ちにさせられ、派手さは無く、清楚な墓所でした。どのようなお家柄の方を祀ってあるのかと、建立した方に是非 逢ってみたくなりました。なんと驚くなかれ、それが叶う時が参りました。
 新宮前に移り住んで一年後に起こった阪神淡路大震災の派遣警備の指揮を終えた春の人事異動は、隊長職から下町の署長職を拝命しました。再々度移り住んで3ケ月程経過したお盆の時期に、管内の著名な企業の創業者の七回忌が催されるとのことで、丁度日曜日で場所も近くであるところから参会の運びとなった。
 仏事供養の七回忌は下町の伝統の則り、木遣歌を交えた粋な中にも荘厳な儀式でした。
 祭主とはその時が初対面でした。会に先立ち祭主にご挨拶し、墓所の話から前記の梅窓院の一際立派な墓所 ”伊藤家之墓” を建立した方が、何と同氏でした。寄寓とは言え「事実は小説よりも奇なり」を地で行くようなことに巡り逢いました。
 開式に先立ち、その場で急遽祭主、親戚の挨拶に続き、故人の供養のためにも是非 ”伊藤家之墓” との出会いの経緯を含めての御挨拶を頂戴したいと司会者から懇願された。挨拶は約1年間墓所の近所に住む者として見続け、平素の手入れは祖先への畏敬の念の表れと締め括り、事実を伝えたのみなのに思わぬご厚遇を引き続き享受することとなりました。
 同氏の祖先を敬うスタンスは同企業の従業員対応と地元貢献への企業の社会的責任と存続性への具体的証として体現されていた。
 現下、企業の社会貢献や地域還元が叫ばれているが、同氏は既に昭和60年、平成4年にそれぞれ中曽根・宮澤総理から褒状(褒章条例に基づき総理が地方公共団体へ一般財政資金等で多額の寄付金をしたものに呈するもの、極めて多額寄付行為への稀有な表彰状)を受け、また 同氏が経営のリレント化粧品のトップセールスレディを2年ごとに300名をハワイへ招待しその労に報い、自らはマラソンを趣味に57歳から始めて10年で285回、国内は全都道府県大会を制覇、海外はNYやHONONOLULUは勿論のこと90回。近く「クロアチアが楽しみ」と語る姿勢は、マラソンも企業経営も途中は休まず只管継続の確固たる強い意志に加えて、「一度も途中棄権無し」が自慢で、地域や従業員に迷惑は掛けないとの平素の準備は、危機管理の鑑で、温厚な話し方から想像は不可能です。
 他方、化粧品会社の性格からミス日本のオフィシャルメインスポンサーでも著名な同氏をご存知の方々の多いと思います。
 同氏の率いる伊藤グループの伊藤工事株式会社の指針は「人の住む箱物を作る仕事は壊れてはダメ」の経営指針を貫き、淡路阪神大震災の際は、総ての社業を中止し、現地で支援と教訓抽出にも当たった信念の人との第一印象が私には強烈です。同時に大災害地を見分した者同志共通の感覚は、同氏が当時語った「黙々と只管復興に邁進する被災者の姿は忘れない。私共は壊れる箱物を造ってはいけない。」毅然と決意を語る姿勢が脳裏から離れない。 万が一東京都が直下型地震に襲われた際は、救援は勿論のこと、残骸処理場所の提供可能企業として、同氏は既に10年程前に私が署長職の時に申出られた。都の大災害対策の一環として、場所と資機材の支援を可能としている。このように先見性と社会貢献性に優れた見識の持ったCEOです。当時幹部とヘリで現場を確認済みでもある。その場所に現在、君津サーキット場の創設計画を、去る5月に非常勤講師を務めている千葉科学大学の講義の際に披露させて頂き、地元は雇用創出や鈴鹿より大きなサーキット場が成田国際空港から至便の地に現出することに歓迎の意を示していたことをも同氏に伝えた。
 同氏のマラソン歴は10年前57歳半の’96.6の北海道美瑛マラソンで開始、’96.11ホノルルフルマラソン4:51:55、’98.6’の’98サロマ湖100Kmウルトラマラソン12:15:21、’99.NYマラソンン3:34:42 4,200/30,000位、’01.9.1スイスユングフラウの標高2.300Mゴールの山岳マラソン5:41:00など多彩多様な力走です。
 4年前にフル100回,海外100回を宣言、現在 既に86回,91回。完遂を祈っています。
ゴールを見据えたマラソン「完走のみ」の体験からきっと達成も早く、地元貢献へ真摯で謙虚な経営姿勢の自己との闘いのマラソン哲学に危機管理手法を学ばせられました。

3 杉本 直栄JACCS CEO  

 もう一方忘れてはならない人は、コミットメントを達成して2期目の我がCEOです。
 3年程前の入社時に、当大学院のセミナーで五十嵐雅朗教授の「格付け」のご講演の際に、弊社もエクセレントカンパニーの末席に掲載されていた。先生に不躾にも「ここはどうですか」とお伺いすると「この格付けは太鼓判だ。」と即座にお応え下さいました。
 株価は680円程でした。買いませんでした。3年後の現在は1,200円前後の値動きです。「買ってれば」「買ってたら」大いなる資産を逃がした感です。
 3年前の採用時の面接者は同氏と現相談役の前社長でした。面接に際しては、「顧問にお世話を掛けるようでは、私共経営陣は失格、株主や役職員とご家族そして地域にも説明責任を果たせないことになり、顧客と加盟店の信頼が基です。」との言葉が忘れられない。
 前顧問は73歳までの勤務と面接時に指摘し、前社長も健康であればとの条件の下にお示し下され、鋭意、健康管理と社業専心を心がける毎日で、健康には幸いお陰様で恵まれています。大量退職の’07問題や、後進への禅譲、晩節を汚すことなく世代交代もあろう。
 同氏の「誠実性と謙虚性」に富んだ対応姿勢は隋時「相手を敬う心と言葉」を、時折の報告受理時の聞き入る態度が随所で感じさせられ深い感銘を幾度か受けています。
 その一例は、去る6月28日に私は株主総会事務のために予定を変更し、一便早めて羽田から函館に向かう機中で偶然にも同氏の数席後方に座ることとなった。
 同氏は、定刻離陸となる旨の機内放送の直後に搭乗して参りました。
 離陸直前に客室乗務員が、新聞や週刊誌を薦めに来る都度、大変丁寧に乗務員に「結構です。有難う。」と対応する「誠実性と謙虚性」に富んだ姿勢も拝見した。朝早い便の所為か、乗務員の対応に無言の方が多い中で、凛とした「相手を敬う心と言葉」の我がCEOに何か誇らしいものを感じました。その後は、メモの様なものを二・三枚読み終えると静かに読書、将に紳士体現の姿勢を保持して、総会のリハーサルを数時間後に控えても、予習等は無く、余裕と自信の雰囲気は明日の総会は大丈夫との感触を得ました。降機の際に鞄からは分厚いハードカバーが見え、平素の備えがなせる業と確信した。
 株主総会のリハーサルでは、社員の模擬株主からの辛辣な質問には、質問の要旨を適確簡潔の纏め質問者に正対正視し、真摯に平静に対応する姿は初登板の議長役も大丈夫との印象を出席の顧問弁護士や役職員に与えた。リハーサルは短時間で終わった。
 本番の総会では自信と実績に裏付けられた、業界利益率トップの収益に独立系の強さと、本業に専心し、コミットメント達成の陣頭指揮をとり、更なる将来へ向けての決意表明と地元函館市等への社会貢献をする高い倫理性のある企業運営を示した。
 短い在社経験と限られた範囲からも社会との弊社は共生、顧客第一、挑戦、役職員の尊重、株主に対する還元等現在、問題視されていることは、ことごとくクリアーされており、かつ、社内の不祥事は皆無で社内融和を徹底している。CSRとCS第一の経営理念「信を万事の本となす」は世の中では金で買えないものは「信」だけにその創業精神の真髄は偉大である。
 株主総会は予め配布の総会通知書の営業報告によるのが世間一般の通例である。
 本総会では、現在、世間で俎上に挙がっている所謂「グレーゾーン金利」については、「弊社は既に撤廃済みであり、問題発生の懸念はない。」旨の原稿外の発言を聞いて、その先見性の自信と信念は創業精神に添った指針であり、法令遵守の時代的要請にも適っている。

4 終章
 高い資質と才覚に加えて経験豊かでバランス感覚に秀でたCEOは、団塊世代後の世代若返りをも踏まえた、改革を迅速果敢に実現する過程でのCSRとCSや法令遵守の怒涛の要望にも応えた方々である。
 「誠実性と謙虚性」に富んだ人徳を醸し出し、その対応姿勢の「相手を敬う心と言葉」を随所で拝見した。そのような懐の深いマネジメントは、時代の、世界の、変革を生き抜き顧客の支持層を増やし続ける叡智の源泉である。 機会ある毎、CEOに学ぶ鑽迎の姿勢を堅持する有意義性を隋時・随所で学ばせて頂き、心から敬服し、一層の研鑽を継続する決意である。

 

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