「修士論文調理法」

国際情報専攻 増子 保志  

 「修士論文!」「うーん、何を書こう?どうやって書こう?」と考えてはみたもののいざ、パソコンを前にしても何も思い浮かばない。一応、入学した時の研究計画書はあるけれど、今一度眺めてみると何か色あせてるし……こんなのが論文になるのかな……『論文の書き方』の本を何冊も読んで書けるわけではないし……そんなこんなで、結局全然進まない。ただ時間だけは無意味に過ぎていき、「やばい!」状態になっていく。このままじゃいけない。気持ちはあせる! そんな時、外見と違って根が真面目な私を気の毒がって、どこぞの神様がありがたい「ご啓示」を下さった。そう、修士論文の調理の仕方を……夢の中で……
 神様は調理法をこう教えてくれた。まず、何を書きたいか「献立」を決める。
  料理であれば、自分が一番食べたいもの、作りやすいものを考える。冷蔵庫を開けて何が作れそうか考えることもある。論文も同じこと。自分が書きたいもの、書きやすいものを考えるのだ。頭の中の冷蔵庫と相談しながら。
  次はこの献立を作るにはどの様に調理したらよいか調べてみる。そう「レシピ」である。一般的にどの様に作られているのか、どの様な作り方があるのか調べてみる。修士論文では「先行研究」であり、「方法論」の勉強にもなるのだ。
  さて、ある程度、方針が決まったら、次は「材料」の買出しである。図書館や本屋で資料、参考文献を集める。材料を吟味する目も数多くの材料に触れれば、自ずと付いてくる。材料がぼちぼち集まったら、次は料理の段取りを考えねば……材料をどの様な「切り口」で切るか、料理の仕方はどうするか。蒸す、焼く、炒める……味付けはどうするか? 調味料をどこで加えて、材料の持ち味を生かすか? さらに自分自身の「独自性」をどうだすかだ。人まねじゃ美味しい料理は出来ないし、論文じゃ剽窃になっちゃう。料理でも論文でも段取りは重要だ。論文では「起承転結」だね。ここで論文の味が決まってしまうといっても過言ではない。
  さぁ、ここまできたら、80%は完成したも同然だ。一気に料理を始めよう。途中で指を切ったり、まわりにこぼしたり、うっかりして焦がしてしまうこともあるけど、気にしない気にしない。作り直しが出来るのだから。さらに今まで勉強してきた成果を「隠し味」として加えよう。これが後からきいてくるんだ。とりあえず、出来たものを「試食」してもらうのも大事なことだ。ゼミなどで他人の意見、感想を聞けば、自分本位の味に修正ができる。
  もうあと一息だ。ここで気を緩めてはいけない。盛り付けとテーブルセッテイングだ。そう論文の「お作法」を忘れてはいけない。注を付けたり、句読点や引用の仕方に気を配ろう。このお作法が完璧にできれば、完成だ!万歳!
 と思ったら、最後の難関、舌のこえた先生方に召し上がってもらわねば……
「うーん、美味しそうに食べてくれた」「満足げな表情だ」やったね。感涙にむせぶ私はここで目が覚めた。真っ白なWordの画面に涎をたらしながら……


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