「修論を書き終えて」

人間科学専攻 河原 昌浩 

記述編
  博士前期課程では、入学後に論文を完成させなければならない期間が実際には丸2年もないので、合格発表後すぐに研究テーマ(コンプライアンスと帰属意識)に関連する資料の収集を始めようと思い立った。そこで先ず身近で簡単に出来ることを考え、研究テーマに関連する新聞記事のスクラップを行い始めた。
  実際にこの試みを始めると、スクラップ作業はけっこう1日の生活の中での時間を圧迫し、それを盆・正月休みに関係なく2年間行うのは辛いことになった。しかし、この2年間で収集したスクラップ記事の量は、気がつけばファイルホルダー7冊分となり、その関連記事を毎日地道に余さず目を通してきたことによって、飛躍的に自分自身のレベルアップに繋げることができた。
  また他方では、論文を作成するにあたって地方在学生(宮城県在住)としての苦しみもあった。当然、論文を作成するのには先行する関連文献を読まなければならない。幸いにも、GSSCは電子図書館機能の充実によって遠隔地からでも簡単に論文や専門書の取り寄せはできる。
  しかし、そういう文献を収集するにあたっても、単に論文や専門書の題名がホームページ上で羅列してあるだけでは、自分が望む内容の文献かどうかわからない場合がある。こうした場合には、直接に図書館に行って1冊1冊手にとって目次などから内容を確かめなければならないことも多くある。そんな時、やはり地方在学生として、日本大学の各図書館が集中する首都圏に居住していないことに対する不利を感じた。
  ただ、不利だとばかり思ってはいられないので、地方は地方なりに身近に利用できる図書館を最大限に活用しようと考え、県立図書館や市立図書館、そしてより専門色の濃い文献探しには国立大学の図書館と幅広く活動域を広めた。それが今となっては貴重な経験となり、楽しい思い出にもなった。

調査編
  人間科学専攻の場合、概ね修士論文を作成するためには何らかのデータを得なければならない。もちろん、絶対に自らが調査や実験を行わねばならないというものではないが、できれば自分の主観を整理するためにも、客観的なデータの収集は自分の手で行った方が良いように思う。特に社会人の場合は、日頃実社会で感じている疑問や関心を研究テーマにしている場合が多いと思われるので、個人の先入観などを排除するためにも必要になる作業といえるかもしれない。
  ただ社会人学生はほとんどの場合、仕事との両立で単位履修と研究を進めているので、現実問題として実証研究を行う時間の都合をつけるのが困難になる。私の場合も、今回は面接調査を行ったが、何かと環境的に厳しいことも多かった。もともと出身は大阪なので、現在居住する宮城より大阪の方が調査の依頼はしやすかった。そのために、何度か面接調査を実施しに大阪に行くことになった。一方では、面接協力者から得られるデータの地域色も薄めようと考えたため、東京でも同様に面接調査を行ったので、最終的には調査にかかる別のコストも馬鹿にならないものになり、負担が増えた。
  しかし、いざ修士論文を書き終えて感じることは、多くの環境的制約を乗り越えて調査を行ったことで、逆に調査開始前には考えもしなかった角度からデータの内容が得られる結果となったことはいえる。それが、入学当初想定していた内容より幅のある論文を書くことに繋がったとは思っている。

ゼミ編
  そんなこんなで、いろいろと2年間は試行錯誤を繰り返しながら修士論文を書き終えることになったが、振り返ってみればやはりゼミでの指導教官や同じゼミ生との交流や支え合いの中で、無事に修論完成という目標を達成できたと思う。特に所属した田中ゼミは、その専門領域が幅の広い産業・組織心理学という分野もあって、日頃全く接点のない分野で職業生活を送っているゼミ生との交流があり、ゼミでの活発な意見交換から今までにない新鮮な視点を別の角度から与えられた。このことは、修論の作成にとって柔軟な思考をもたらしてくれていたとも思う。今振り返ってみれば、まさしく環境に恵まれたとしか言いようがない2年間だったと痛感している。

 

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