「寝ても覚めてもパソコン」

人間科学専攻 田畑きみ代  

  思い起こせば2年前、大学院説明会から始まったパソコン騒動。パソコンに触れたこともない私でも入学出来るものかどうかお尋ねしたところ、「大丈夫、80歳の方でも修了しましたよ」という言葉に何の疑問も持たず試験を受け入学が決まった。
 
  さていよいよ本格的に授業?の開始、開校式当日、目の前でゼミが行われ、目が点になり、身も心も固まってしまった。「私は場違いなところへ来てしまった」と後悔の念に駆られました。また、通信制なら年に数回東京へ行けば良いはず、と軽く考えていた事も年間スケジュールを見て、大きな勘違いだったと知った。そして周りの人は皆さん素晴らしい人ばかりで増々気後れし、不安になった事を思い出します。気後れしていても、場違いなところへ来てしまったと後悔している間にも、大学院の荒波の中にどんどん押し流されて行きました。
 
  4月にパソコン研修を受け、初級クラスは電源の繋ぎ方から、立ち上げ方、マウス操作など初歩の第一歩から教えて頂きました。この研修で、お仕事でアメリカ在住の国際情報専攻の方とも知り合いになり、アメリカに着いてから、メールのやり取りをして、お互いにパソコンの練習をしました。「おはようございます」とメールを入れると、「今晩は、今こちらは夜中です」などと、瞬時にお返事が届くインターネットの素晴らしさに感心しました。
  5月末、やっとパソコンが繋がり、自宅で使用出来るようになりました。パソコンを開けると、眞邉ゼミの皆さんからのお祝いメールがたくさん入っていて驚き、また感激しました。まず、そのメールへ返信することから始まりました。返信先を間違えたり、空メール、変換ミスで変な文章のまま送ったり、考えられないようなミスをたくさんしました。
  パソコンが繋がってから、時間があればパソコンに向かっていました。文字通り寝ても覚めてもパソコン状態が続いていました。毎晩寝るのは3時頃でした。頭の中はパソコンの解らない事でいっぱい、解決しないまま眠るので、脳が悲鳴をあげたのか、不可解な寝言を頻繁に言うようになり、主人から「パソコンに根を詰め過ぎじゃないか」と言われて少し早めにパソコンを閉じて寝るようにした事もありました。しかし、先生から送られて来るメールに答えて行くには、寝る時間を割いてでもしないと出来ませんでした。
 
  私は名古屋でピアノを教えていますが、「ピアノが弾ければパソコンもすぐ出来るでしょ」とよく言われましたが、文字を打つことだけならそう言えるかも知れませんが、Excelやpptを行うには、ピアノのように指を速く動かすことではなく、それよりは技術習得や記憶力が何より必要だと身を持って体験しました。
  私には先生からの課題は、ピアノの生徒に置き換えて考えた時、ドレミファソをやっと覚えたところに、次回はショパンのノクターンを弾いて下さい。と言われたのと同じ位に感じていました。毎日がステップアップで、序々に進歩などと生温い事を言っている場合ではないという思いで必死に階段を駆け上がって行きました。また、毎月市ヶ谷で行われるゼミでは、「必ず発表をするもの」と先輩から伺っていましたので、初回からずっと発表して来ました。振り返ってみれば、ほぼ皆勤賞でした。開校式に毎月東京へ行く事に驚いていましたが、考えてみれば、発表の度にpptと格闘し大変でしたが、初年度は東京の娘の下宿に宿泊し、2年目はホテルに宿泊してゼミの為に東京へ行く事が楽しみになっていました。
 
  もう一つ眞邉ゼミで毎月行われていたサイバーゼミでは、なかなか上手く入れず、先生から「写っていますが、声が聞こえません。こちらの声が聞こえたら○聞こえなかったら×を手振りでして下さい」という会話をよくしました。まるで大縄跳びに入れない人のようでした。
 
  このようなパソコン技術習得が大変な時期にも科目履修という大きな難題が始まっていました。1年間で5科目まで履修可ですので、先の大変さも考えず5科目履修届けを出しました。1科目に取り掛かって、最終提出までの道のりの大変さに気付きました。しかしやるしかありません。前期リポート提出期日が迫り、5科目目を今日提出しないと危ないという日に、名古屋に大きな地震がありました。その地震の中でも揺れながらパソコンを打っていた事もありました。後期リポートではお正月も無く、リポートに追われていました。先輩が「後期は提出期限が短いので、お布団で寝たのは何日あったかな?」というお話しは伺っていましたが、やはり自分も同じ事を後輩に言ってしまいました。
  毎回自転車操業のように研究内容・科目の勉強に追われ、パソコンの技術習得をして来ましたが、気が付けば修士論文の中間発表の時期を迎えていました。あんなに何も出来なかった私でしたが、pptを使って発表出来るまでなっていました。アニメーションも使えるようになり面白くなって、たくさん取り入れてしまい、先生から「あれは使いすぎです」と言われてしまいました。想像以上にパソコンが出来るようになった事に感謝しています。
 
  ここまで来るまでには、眞邉先生、ゼミの先輩・同級生、友達には大変お世話になり、多大なご迷惑をお掛けして来ました。最後まで見捨てず懇切丁寧にご指導頂きまして本当にありがとうございました。また、寛大な心で支えてくれた家族に感謝しています。

 

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