タイ料理・カービング手習いの旅 
人間科学専攻 2期生・修了 山根尚子

 寒い時だからこそ暑い国に行きたくなるというわけで、鳥インフルエンザもなんのその、エスニック料理の本場、タイに行ってきました。はじめてタイ料理を味わってから20年近くたった今でも、魚臭いしょうゆのナンプラーの旨み、プリッキーヌの辛さに飽きることはありません。ですから、タイ料理は私の料理紀行の原点に違いありません。
 さて、タイ料理というと一般的にどんな印象を受けるでしょうか。辛い、屋台料理、でしょうか。実は、タイは食材の宝庫と言えるところです。食材では肉はもちろん、野菜は新鮮、高級な海老・蟹も豊富です。また、調理方法では、中国からの華僑をはじめとした人の流れも多く中華料理、あるいはインドにも近くカレー料理がタイ風にアレンジされるので、おいしくならないわけがありません。そして物価も安く、まさに異国からの旅行者はその恩恵を預かることになります。

 今回は、まず12月に2週間タイ料理を、年が明けて1月1週間カービングを習いに行くというスケジュールでした。
 タイ料理では米の粉でできた麺料理、宮廷料理、肉・魚料理、サラダ、カレー、デザートなど約50種類を習いました。
 その特徴ですが、スープのだしは鶏まるごと1匹分、豚骨からとるのは当たり前です。インスタントですます日本人からすると贅沢なばかりです。また、食材はその日の朝、市場で仕入れたもので、冷凍ものはなしでした。
 また、料理には揚げ物が多く、炒め物でもかなりの量の油を使います。揚げるように炒めるという表現が的確なほどです。たっぷり油を使ったお料理はおいしいものです。タイは暑いのでしっかりカロリーを取るという自然に生まれた暑さ対策かもしれません。余談ですが、そんなタイ人の体型とは……。街中を歩く若い女性はぴっちりとしたジーンズを履き、お尻の形もなかなかです。この地でもダイエットは関心事のようです。
 さらに、デザートがおいしいということを伝えなければ。個人的好みから言えばココナッツミルクを使ったデザートの数々でしょう。それ自体に甘みを加えて寒天で固めたり、餅粉と合わせてバイトイという葉でくるんで蒸したり、もち米・黒米・かぼちゃ・バナナを甘く炊いたり、そして更に甘ったるいマンゴーを添えると完璧です。そんなココナッツミルクですが、カレーやトムヤムクンにも加えることもしばしば。万能選手です。

 ところで、帰国してすぐフルーツカービングを習いにバンコクを再度訪ねました。日本でスイカやメロンを彫って飾ることは、食べ物を粗末にするようで考えられません。第一、野菜、果物は高価ですし。もちろんタイ人にも食べ物を粗末にする習慣はありません。しかし、彫った野菜、果物は食卓を華やかにします。花と違って花粉がこぼれるという心配もないですし、お皿の上に食材と同じものがのっていてそれが花や葉の形をしていたら料理の盛り付けが華やかになりますし、独自のタイ風の飾り付けになります。日本の懐石料理にきれいな盛り付けがあるように、タイ料理でも然り。まさにタイ人がどれだけ料理の盛り付けに気を配るかというところから生まれたものなのでしょう。そしてカービングは器用な日本人にもじわじわと人気が出てきているようです。それともマイブームでしょうか。

 最後に、料理以外のタイ人観察コメントを。タイはずっと上手に独立を通してきました。国民は仏教徒がほとんど、現在の王様を敬い、親日的です。そんな彼らはプライドの高さを自他共に認めます。ですから所有の車に見栄をはります。空港を降りて街中を走れば、車の立派なことに驚くことでしょう。また、タイ人特有の気質、「マイペンライ」は何が起こっても「大丈夫」、「どうってことないさ」です。すてきなことばです。