「2006年デトロイト・オートショー見学記」
国際情報専攻 6期生 森田喜芳 


 今年もデトロイト・オートショーの見学記をお送りいたします。私は今回が2度目のアメリカ駐在であり、3年連続してデトロイト・オートショーを見ました。そのときの感想を以下に、思い出すがままに記します。
 
 チケットは今年も大人12ドルであった。昨年秋、東京モーターショーを見てきた。記録は確かではないけれども、1,800円だった。しかし全体として、デトロイト・オートショーには割安感がなかった。デトロイトで展示されるのは乗用車のみで、日本のように、オートバイや部品館などの展示場がないからである。今回特に感じたのは、東京のショーでは自動車各社が競いあって、新技術を披瀝し将来の自動車像という夢を提供していたのに対して、デトロイトでは、アメリカのビッグスリーをはじめ、日本、ヨーロッパ、韓国、中国などのメーカー各社が展示品を出してはいたものの、東京の会場で感動を受けたような新技術、夢を追うような車は見られなかったのである。
 わたしがアメリカに最初に駐在したのは1980年代。その頃、新しい年はここデトロイトのショーから始まる感があった。その後アメリカ各地を回り、ヨーロッパ各国を巡り、最後に東京のショーで締めくくるのが常であった。そうしたなかで、時代の先端を行く新技術や、デザイン・コンセプトなどは、デトロイトから始まったものであった。その名残、余韻は今でもある。今年もこのデトロイト・オートショーには、世界各国の自動車製造メーカーのトップが駆けつけて新年の抱負や、将来の展望について語っている。特に今年は、GM、フォードが極端に不振であったため、彼らの立て直し策に対する期待と具体策を求める声が多かった。彼らには、ハイブリットや燃費を中心に建て直しを目指す姿が顕著であった半面、相変わらずの燃費の悪い大型スポーツタイプ多目的車(SUV)などの新車も多く展示されていた。
 このオートショー、恒例の会場はコボ・ホールである。会場には真ん中にある入り口から入場した。中に入ると、右側にフォードの展示場、驚いたことに、左側は何とホンダの展示場であった。こんなこと初めてである。今までは入り口の左右には必ず、アメリカビッグスリーの2社が占拠していた。そして真ん中の大きなスペースには、GMが居座っていた。今回初めて、日本車が入り口の左側に陣取っていた。まさに画期的な出来事である。
 したがって最初にホンダの車を見た。今年の目玉はなんといっても、2006年の北米カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた乗用車部門の「シビック」とトラック部門の「リッジ・ライン」。日本メーカーとして、初のダブル受賞した車が目の前に並んでいた。「シビック」は昨年のフルモデルチェンジと、燃費の先端を行くハイブリットを搭載したことで評価がたかい。「リッジ・ライン」はホンダが初めて開発したピックアップトラックで、乗用車並みの乗り心地に加え、荷台の収容に工夫をこらすなど注目を集めていた。この「リッジ・ライン」は今年は更にトラックらしくなり、力強さを感じる車に成長していた。すばらしく一段と良い車に仕上がっている。昨年以上に販売増が期待できると確信を持った。また、日本のベスト・カーである「フィット」が今年から輸入販売する予定の展示車には、人がたかっていた。「インサイト」の燃費60(MPG=マイル・パー・ガロン)も素晴らしい。多分この燃費が今のところ世界一であろう。しかしなんといっても、今年のホンダの目玉商品は「RDX」である。クロスオーバー車で、小型のSUV。ホイールはホンダとしては珍しく、大きめの19インチ、エンジンは2.3リッターのターボチャージ付きである。この夏の販売が楽しみ。
 フォードはなんと言ってもムスタング。なぜが乗用車のモデルが少なく、大型のトラックが多かった。新型車のF−150は5.4リッター、V8で相変わらずの大型車志向である。燃費が悪くても、大型車の利益大きいのが忘れられないのだろう。ちょっと時代に遅れている感、大いにあり。ただし、デザインはハーレーダビットソンがおこなっているとのことでちょっと斬新な感じが出ている。全体的に車は少なく関連会社のマツダの車などの展示も多かった。マツダは完全にフォードの1 ディビジョンの扱いである。
 次はGM、やはりGM、なんといってもGM。会場の真ん中に陣取り、展示していた。だが例年に比べ出し物が少ないようだ。逆にダイムラー・クライスラーの方が元気であるように見えた。特にジープが面白い。ひょっとしたら、今年あたり販売台数や利益で、フォードを抜くのではないか。私の予想である。
 各社ともに今年はスポーツカーの新車を展示していた。もしかして、これからスポーツカーが今のSUVに代わる流行の先端を行く車になのだろうか?ホンダ・フォード・GMともにスポーツカーを展示していた。私も1度スポーツカーに乗ってみたい夢はあるので、ぜひ多くのスポーツカーを販売されることを願う。
 さすがにトヨタである。スペース及び車の展示はGMよりも少ないものの、展示はハイブリットを売り物にした車。今年は世界一の販売を狙う会社であることがうかがえる。
 ニッサンは毎年同じような展示スタイルである。円形に車を並べ、強烈なスポットライトを浴びせ、いかにもキンピカ車を誇示している感が強い。ただし、展示車はそんなに多くはなかった。今年もトヨタ、ニッサンはビッグスリーのもうけ頭であるトラックやSUVに焦点を絞った販売戦略がうかがえる。
 ヨーロッパ社ではフェラーリ、BMW、ポルシェなどのスポーツタイプが多くの客を集めていた。
 今年の変化は会場内に売店が出されたことであろう。土産物、Tシャツ、クッキーなどが売られ、休憩のベンチも登場した。意外と静か。騒々しさがない。ネオンがピカピカという会場の華々しさがここには見られない。会場はどこも間仕切りがされて、一望に見渡せるような会場でない。そのうえ、車の展示しているところが1段高くなり、歩きづらい。車を見るのになんとなく違和感を覚えた。今年もUAWのビニールバックが配られていた。
 目玉となる車、話題の車が少なく全体的に静か。今まで見てきたなかで1番寂しい感じがした。ビッグスリーが元気でないと、この会場も活気がなくなる。現実的には、今年のビッグスリーのうちGM・フォードはさらに苦戦をするのではないか。逆にトヨタをはじめホンダ、ニッサンのジャパン・ビッグスリー(JB3)はますます好調な年になるであろうとみた。
 
 以上が、今年のデトロイト・オートショーを見ての感想である。
                                  (Jan-18-06)