I2T研(旧称IT研)近況活動報告

 

 

                                         国際情報専攻 4期生   長井 壽満

   

  IT研会長に就任し、1年経ちました。入学したのは2002年4月、2004年3月に卒業し、仕事の合間にリポート・修士論文作成で忙しい時間を過ごしました。通信制の大学院、日本大学大学院総合社会情報研究科が設立された時の先生方、一期生・二期生の意気込みが感じられる入学式を思い出します。今ある研究会は一期・二期生が中心となって設立されました。夏のオリエンテーションには先輩も加わり、知的好奇心の始まりの予感・・・今思い出すと懐かしく感じます。

 

30年ぶりに学生に戻ったのだからどこかのクラブに入ろうと気楽な気持ちでIT社会創造研究会(略称IT研)のメンバーになりました。なんせ、本学の売りはITを使った教育ですから! IT研以外にも「時事問題を語る会」、「行政研究会」、「経営研究会」、「ライターズユニオン」、「歴史研究会」「ケア問題ネットワーク」がありました。院生には私よりもお年の方、若い方、政治家志望者あり、多彩なメンバーが顔を並べていました。飲み会も楽しみでした。幸いにも当時は自分の仕事が暇でした(今だから言えますが・・)。だから研究会活動に顔をだせたのでしょう。

 

大学時代専攻は工学系の分野でした。入学して最初のカルチャーショックは近藤先生に「主語、述語、目的語、補語」の関係を厳しく突っ込まれまたことです。『文章を書く』作業がこんなに難しいとは思っていませんでした。『文章を書く』と裏腹にあるのは『文章を読む』力です。2年間の成果は何かと聞かれたら、間違いなく『文章を書く』力と『文書を読む』力がついたと言えます(脳に皺が増えた?)。こんな事が理由で電子マガジンに毎回寄稿しようと、自分なりにルールを決めて投稿してきました。

 

卒業してホットし学生身分の余韻を残しながら(映画の学割が無くなった!)、院生生活の延長として何か学研的な真似事をしたいなとなんとなく思っていました。30年もの長い間、仕事してきたのですから、仕事に飽きてきたのも一因かもしれません。そんな時にIT研の会長にならないか?と話がありました。

 

最初に思ったのは「ITという看板にそぐう内容のある活動ができるかな?」でした。IT環境が急速に整備されてきた時期です。現在ではブロードバンドは普通になっています。私が入学した2002年頃はまだダイアルサインアップが普通な時代でした。もちろんヤフーBBなんて言葉もありません。セントラの講義も、回線状況が悪くて参加できない方もおりました。卒業する2004年には、ブロードバンドがほぼ普及しました。この2年間のITインフラの変化は驚くべき速さです。これから光ファイバーの普及が始まります。携帯電話も第三世代(3G)といわれる方式が商用化・販売されています。2005年には携帯電話各社はFOMA,3GなどのネーミングでCDMA(携帯電話版ブロードバンド・伝送速度が速い方式)の売り込みの広告が目につきます。携帯電話でテレビを見る時代になりました。

 

こんな変化の激しいITの世界で、IT研は何をするのか、単に親睦だけであれば同窓会で十分です。あくまで院は知的好奇心を求める場です。こんな動機から、IT研の活動方針として「IT環境を使って」会員がそれぞれ興味のある分野を研究する。IT環境をプラットフォームとして活動する。ITそのものは道具にすぎない前提で活動をするほうが面白い。こんな発想が出てきました。本学は通信制です。世界中に院生がおります。全日制大学のように、研究室・部室などに集合して顔を合わせて「活動&遊ぶ」という形態ではありません。

 

IT環境をつかった知的交流・研究の場の実験場としてIT研を運営してみたら何か面白いことができるのではないか?という動機でIT研に片足踏み込みました。幸いに、同じ考え方の先輩・仲間がおり、会長に就任するはめになったのです。

 

会長就任後の状況は、活動内容を紹介します。

1.    毎月日本大学のセントラシステムを借りて、テーマを決めてメンバーがプレゼンを行い(30分)、Q&A(30)、雑談&近況報告(30分)の1時間半の場を設けました。 810日、1124日にセントラで準備会議開催、メール、メッセンジャー、無料電話スカイプ等でメンバーと考え方の摺り合わせを行い、意見交換に数ヶ月かけました。

2.    そして、まずスタートは、12月から柳田邦男『20世紀は人間を幸福にしたか』、講談社、1998年をテキストにして活動をはじめました。この本で議論されているテーマの中で、『「知の組み換え」の時代』、『「五つ終わり」のあとに』、『民族・宗教・文化の「脱異境」へ』、『能力主義からデモクラシーへ』、『「安全」こそ科学技術の中心課題』をとりあげ、各自が興味あるテーマをセントラ上で30分プレゼン、30Q&A,30 分雑談・近況交流します。ゼミの発表とは違い、放談形式です。ときには鋭い突っ込みが入ります。でも最後は笑いで終わります。このように、ITとは関係ないテーマで活動しております。

   

 3.セントラ・サイバー部会の実績と近々の予定

   H161220日;『「知の組み換え」の時代』発表者 長井壽満 

     参加者:前田保、高橋健太郎、西尾安正、吉野穀、増子保志、長井壽満  計6

    H17130;『「五つ終わり」のあとに』発表者 増子保志

     参加者:増子保志、西尾安正、高橋健太郎、橋本信彦、吉野穀、

計 5

 

220;『能力主義からデモクラシーへ』発表者;西尾安正 

参加者:高橋健太郎、加藤担弘、吉野穀、増子志保、西尾安正、

    長井壽満   計 6

 

     319;『民族・宗教・文化の「脱異境」へ』発表者;高橋健太郎

     参加者:西尾安正、高橋健太郎、長井壽満、坊農豊彦、高林知佳子、

     増子保志、橋本信彦 計 7

 

     410;「情報社会へのプロセス」発表者:橋本信彦

     参加者:吉野穀、坊農豊彦、磯部千枝、橋本信彦、西尾安正、内田智子、前田保、長井壽満 計 8

 

     51;「沖縄県が目指す『マルチメディア・アイランド構想』」          発表者:西尾安正

          ログとるの忘れたので、記録なし。

 

     619;『「安全」こそ科学技術の中心課題』

          発表者: 吉野穀

          参加者:増子保志、西尾安正、長井壽満、小沢健司、

              村上恒夫、吉野穀、 計 6

 

     731IT研総会、会則を変更。主なる変更点は

1.名称を「情報人間社会科学研究会」(Forum on Creation of Intelligence and Information Technology Society)略称I2T研に変更。

     2.活動目的に「ネットワーク社会創造に関する知識の学術論文発表等を通じた普及および情報の提供」を加えました。

     3.会費1000/年を徴収することにしました。

          

     92;東京地区@池袋 オフ会(予定)

     

     102;セントラ・サイバー部会 テーマ 未定

 

    123(土)朝霞市で「ケア問題ネットワーク」と共催で
 
     公開講座開催:テーマは「ロングステイを考えるポイント(仮題)」

講演者;寺井 融氏(国際情報5期卒)

 

4.    学会活動

   H17625 メディア学会「テーマ電子マガジンの現状と課題」   坊農 豊彦・長井 壽満・西尾 安正・増子 保志・橋本 信彦。

     http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsims/4th-kenkyuutaikai-houkoku.html

      ポスター発表

      729;情報処理学会「人文科学とコンピュータ研究会」部にて論文発表。論文発表テーマ「ネットワークセキュリティと個人意識」坊農豊彦,長井壽満,橋本信彦              http://www.sigch.soken.ac.jp/2005.07/                  

91;懸賞論文投稿、「50年後の情報科学技術をめざして」記念論文募集に応募。橋本信彦、長井壽満、坊農豊彦。http://www.ipsj.or.jp/10jigyo/taikai/68kai/50sympo/cfp.html

活動の具体例を挙げてみました。

 

セントラ・サイバー部会では社会科学系の話題が中心、学会発表はIT系が目立っています。ITの内容も多様です。いまやITは道具にすぎません。

 

 IT化技術の進歩にともない、情報の流れが変わってきています。昔は「集団から集団の間での情報交換」、今は「個から個への情報交換」と情報の流れる道が変わりつつあります。

 

しかし、本当に誰でもが情報を発信できる時代になったのでしょうか?18世紀、西欧から「自由」という言説が発生し、今の時代「自由」という価値が跋扈しています。しかし、人は本当に「自由」になったのでしょうか? インターネットのインフラが完備されたら、人々はもっと自由に発言できる世界を得るのでしょうか? 現状を見ると「否」といえます。インターネット・携帯電話によって人々が「個の存在」として捉えられています。まさに「個人責任」とはIT時代であるが故に出てきた言葉でないでしょうか。人間は個人で生きることはできません。社会的存在の中で生きていく動物です。人々の生活規範に「個人責任」を求め、同時に集団への帰属意識を求める、矛盾する二つの力が今の社会で働いています。IT化が進めば進むほど、この矛盾は大きくなります。ブログ・SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)のような新しいコミュニケーション形式が始まっています。ネット経由の個人間のコミュニケーション方式は模索・進化(?)継続中です。コミュニケーションの交差は確実に増えています。そのコミュニケーション交差の結果として起こるはずのACTIONはまだ見えません。情報の受発信源としての「ネットメディア」(ポータルサイト、情報媒体、メディア)の派手さが目立つばかりです。

 

ネットメディアから個がコントロールされるのではないかと思う今日この頃です。このような流れの中で、IT研が個の発信を促進できるような場所を提供できれば面白いと思っております。個の発信の場として学会を選んでみました。発信するコンテンツはITに限る必要はありません。学会相手でなくてもかまいません。人文・社会科学系分野の方々の参加を期待しています。お互いに遠くに住んでいても、隣にいるようにコミュニケーションできるIT技術を駆使して、お互いの共通目的に向かってプロジェクトを進める、目的ごとにメンバーが変わり、手法もかえます。柔軟かつ機動性をもつ活動を目指しています。欲張りかもしれませんが、変化の早いIT技術を使いこなし、かつ創造的な活動を目指したいと考えています。731日のサイバー総会でIT研の名称をI2T研とかえました。会費も1000/年としました。会則に論文発表活動を明記しました。しばりを厳しくしたのは、切れそうで危ういネット上の活動で在るが故に共同活動している意識を持ちたいという願いからです。日本大学大学院総合社会情報研究科が創立されて既に6年経ちました。同じような通信制大学院も増えています。この6年間の技術・世界の変化は非連続と言っても過言でないでしょう。I2T研はこの6年間のIT環境の変化、大学院形態の変化を踏まえた上で、新しい活動形態を模索していきたいと考えています。

 

今年4月に入学した新入生は、ようやく勉強のリズムが判ってきた頃ではないでしょうか?院の勉強はもちろんですが、それだけで2年を過ごすのは「もったいない」と思いませんか? I2T研は、文化情報専攻・人間科学専攻・国際情報専攻、どの分野の方も歓迎致します。多様な背景を持つ方々が混じることにより、会の活動が刺激的になることを期待しています。仕事を持ちながら、院の勉強と研究会、両立は大変です。院生時の研究会活動は片手間、卒業してから継続研究の場としてのI2T研をつかう手もあります。I2T研でなにかを発信してみませんか? 興味のある方は会長のアドレス 2002i27@gssc.nihon-u.ac.jpまで連絡ください。コミュニケーションの場として、「会長の日記」http://blog.goo.ne.jp/kaichowuを公開しております。暇な折に立ち寄っていただければ幸甚です。それではネットを通じて逢えるのを期待しております。再見!

以上

                    20058

 I2T研 会長    長井 壽満