コンピュータシステムの品質管理ってナ〜ニ?
国際情報専攻 3期生 ・修了 末木 国嗣
品質管理と聞くとどんなことを思い出されますか? 私の場合は1980年代に日本製品(ハードウエア)が品質をもって大量生産で世界制覇をしていた頃に得意だったものということです。もちろん現在も日本の得意分野ではありますが、どうしてバブル以降に日本はその力を発揮できなくなったのかという話題はまた別の機会にしたいと思います。
品質管理とは? 品質管理(Quality Control/日本工業規格JIS Z 8101による(以下JISとする):買い手の要求に合った品質の品物またはサービスを経済的に作り出すための手段の体系。品質管理を略してQCということがある。また、近代的な品質管理は統計的な手段を採用しているので、とくに統計的品質管理(Statistical Quality Control,略してSQC)または、統計的工程管理(Statistical Process Control,略してSPC)ということがある。品質管理を効果的に実施するためには、市場の調査、研究・開発、製品の企画、設計、生産準備、購買・外注、製造、検査、販売及びアフターサービス並びに財務、人事、教育など企業活動の全段階にわたり経営者を始め管理者、監督者、作業者など企業の全員の参加と協力が必要である。このようにして実施される品質管理を全社的品質管理(Company-Wide Quality Control、略してCWQC)又は総合的品質管理(Total Quality Control、略してTQC)という。 とあります。これは市場が求める品質を理解し把握し、そしてそれに適合すべき品質の製品を経済的に生産して出荷し、最終的に顧客満足を得るために生産活動の全ての部門で品質の改善と維持を行うということになります。 またISOでは「ばらつき」を管理することとなっています。要するに、作りたい品質とまったく同じものを作る為にどうするかというのが品質管理です。同じものが作れたり、作れなかったりというばらつきを小さくする事が品質管理の目標だと考えます。 PDCAサイクルって聞いたことがありますよね。P(計画 Plan)、D(実施 Do)、 C(確認Check)、A(処置 Action)のことです。品質管理における管理とはこのPDCAサイクルに基づき行動することになります。
品質とは? そもそも品質とは何なのでしょうか? 品質については様々な考え方によって定義されているようです。 ISOによると「製品またはサービスが明示または暗黙の要求を満たす能力として具備している特徴および特性の全体」と定義されていますが、少し判りにくいですね。 品質を管理していくなかでは次のような品質についての考え方があります。
設計品質(Quality of design /JIS):製造の目標としてねらった品質。ねらいの品質ともいう。これに対して使用者が要求する品質または品質に対する使用者の要求度合いを使用品質(fitness for use)という。設計品質を企画するときは、使用品質を十分に考察する必要がある。 設計段階において規定された品質で、販売面、技術面、原価面などを考慮して決めたものである。
実際に製造されたものの品質のことで、設計品質の決定の際には、製品の商品価値や工程能力、原価などを考慮するが、実際には能率の影響で製造品質が変動する。
品質管理と品質保証、
目的が品質を保証するということでそれを実践するために品質管理という活動を行うと考えればよいかと思います。
コンピュータシステムの品質管理とは? それでは以上のことをコンピュータシステムに当てはめることはできるでしょうか? 製造業における品質管理というのは基本的に指標として、複数個の製造物の品質と目標の品質とのばらつきを管理することであるので、そのままではコンピュータシステムに当てはまらないと思われます。なぜならコンピュータシステムは普通は一つだけのものを構築することが多いからです。 ここでコンピュータシステムというのはERP(Enterprise Resource Planning )のような全社的なシステムもあればPLC (Programable Logic Controller )のような製造現場やラボで使われるオートメーションシステムも含みます。 あらゆる製品の製造には必ずといっていいほどその製造プロセスにはコンピュータシステムが組み込まれています。これらのデザインに問題がなく、また設計通りに問題なく稼動させることを保証することがコンピュータシステムの品質管理の一部かと考えます。 最終的な製品の品質に問題が無いものを作りだすにはコンピュータシステムが要求仕様通りに動作しなければなりません。もちろん国からの規制や自社のコンピュータシステム品質基準を満たさなければなりません。そのためにはコンピュータシステムのバリデーションを適正に行い、その完了後もバリデートされた状態を維持する必要があります。 システム開発時や変更時におけるコンピュータシステムのバリデーションに於いて必要と考えられる標準的な活動例として以下のものがあります。 バリデーション計画 要求定義( 例 機能、 セキュリティ、 ER/ES、 等 ) サプライヤー管理 システム設計 ソフトウエア開発 ソースコードレビュー テスト( 例 単体、結合、 システム、 統合、 等) バリデーション報告書
またこれらのバリデーションの活動をサポートする文書例として以下のものがあります。 セキュリティ計画 バックアップ 災害時の復旧計画 ビジネス継続計画 ユーザ教育 システムの管理とサポート 変更管理 定期レビュー システムの撤去計画 これらのバリデーションの文書をパッケージとしてシステム毎にまとめます。そうすることでそのシステムのバリデーションの状況が把握しやすくなります。
コンピュータシステムの品質管理とはシステムが国の規制に合致し、また自社のコンピュータシステム品質標準に合致していることを照査し確認/承認することであり、またその規制や自社のコンピュータシステム品質基準が最新であることを維持するところにあると私は考えております。 コンピュータバリデーションとそのパッケージについてはまた機会がございましたら投稿させていただきます。
参考文献 GAMPガイド 自動化システムのバリデーション International Society for Pharmaceutical Engineering, Inc. ( Republished under license for limited use by ISPE Japan Affiliate ) |
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