「2005年日本行動分析学会報告」

 

                  人間科学専攻 4期生 石舘 美弥子

   

  平成17年7月29日(金)〜31日(日)の3日間、日本行動分析学会が水戸で開催されました。心地よい知的刺激を受け、学問が一層身近に感じられた素晴らしい3日間でした。今年の行動分析学会に参加させていただいたことに感謝しながら、本学会の魅力をできるだけ具体的に皆様にお伝えできたらと思います。

  
  
 1日目は、ホテルレイクビュー水戸の会議場にて公開講座が行われ、2日目からは、会場を常磐大学に移し、口頭発表、ポスター発表をはじめ、特別講演、シンポジウム、ワークショップなど多彩な企画で構成されました。日本大学からは、河嶋孝先生、眞邉一近先生をはじめ、両ゼミの在校生、修了生が多数参加され、会場を盛り上げていました。ここでは、行動分析学の可能性をひしひしと感じた、本学会のほんの一部をご紹介いたします。

1.公開講座から

行動分析の科学をビジネスへの応用に翻訳する:良い面、悪い面、醜い面
(Duckling)

Translating the science of behavior analysis into business applications: the good, the bad, and the ugly(duckling)

講演:ダーネル・ラッタル(オーブリーダニエルス・インターナショナル)
   Darnell Lattal(Aubrey Daniels International)

 講演者は、ウエストヴァージニア大学で臨床心理学の博士号を取得されたダーネル・ラッタル博士でした。現在は、組織行動管理(OBM)における米国最大手企業のオーブリーダニエルス・インターナショナルの社長を務めており、行動分析に基づいたビジネス戦略の立案と実施の専門家です。企業が行動分析を必要とする代表的なテーマについて6点示しました。第1に、出勤し働き続けること、第2に、パフォーマンスを改善すること、第3に、活動を方向転換すること、第4に、企画すること(鍵となる戦略を幅広く実行する)、第5に、管理職を育てること、第6に、合併と回収:文化的統合、でした。企業における問題解決のため、必要な行動分析は持続可能な結果と行動を達成することです。基本の5つのステップは、目標設定→測定→フィードバック→強化→評価です。大切なのは個人と全体をみることであり、成功の鍵は任意の努力を見つけ伸ばしていくことにあります。そして、いったん任意の努力が起きたら、そのパフォーマンスを増やすために強化し、その行動の結果を分析します。行動の図式は単純明快です。この方法論はビジネスのみならず、あらゆる組織に適用できると感じました。特に、看護学校で担任業務をしている筆者にとって、学級運営に関して大きなヒントをいただいた貴重な講演でした。

2.一般演題から

嚥下障害の高齢者に対するバイオフィードバックによる嚥下訓練
○鎌倉 やよい・深田 順子(愛知県立看護大学)

 本研究は、在宅高齢者を対象に嚥下時の呼気軌跡を視覚的にフィードバックしながら、声門上嚥下訓練を行い、嚥下に及ぼす影響を検討したものでした。本訓練の結果、嚥下障害が改善され、良好になった咽頭クリアランスのデータと嚥下造影画像がそれを裏付けていました。訓練法は単純明快で、自宅で容易に行えるものであり、実践に活用できる価値の高い研究と感じました。

3.ポスター発表から

 病院における看護業務の効率化に関する課題分析の活用−その2
○戸田ルナ・刎田文記(独立行政法人 高齢者・障害者雇用支援機構 障害者職業総合センター)

 今年3月に本大学院博士前期課程を修了した戸田さんの発表でした。病院の看護師の業務を課題分析し、その仕事内容を整理し、業務の効率化と看護師の行動変容を図った実証的研究です。煩雑な看護業務を客観的に査定し、介入していく応用行動分析の手法の確かさを感じた研究でした。

           
              

3.懇親会から

 2日目の夜、常磐大学の学生ホールで催された懇親会には、多数の参加者があり、大盛況でした。プログラムのはじめに恒例の抽選会が行われました。行動分析学会では、年度早期に会費を納入した会員を対象に納入金を還付しています。心躍る瞬間です。自分の名前が呼ばれることを祈りながら待つこと数分・・・「幸運な5名」の1人に選ばれたのは眞邉ゼミの岩本さんでした。懇親会を大いに盛り上げたひとコマでした

              
   

 美味しい料理とアルコールをいただきながら、ビュッフェスタイルで会は賑やかに進行しました。本学会の特別講演のため招聘されたKennon A. Lattal PhD., Darnell Lattal PhD.と懇談する機会が得られました。各専門分野から出席された方々と活発な意見交換もなされました。それぞれの立場から伺えるお話は非常に新鮮で興味深いものでした。このように、国や世代を超えた交流は2時間余続き、閉会となりました。


   
 

 行動分析学は、確実に社会に貢献する学問です。個人や企業や社会の問題解決のために、一人でも多くの方が行動分析学に関心を持っていただけることを願います。今後、あらゆる分野への発展と飛躍を期待したいと思います。
興味関心のある方は、是非、日本行動分析学会のURLにどうぞ。

*      日本行動分析学会 (http://www.j-aba.jp/