国際情報専攻 森 浩典
論文執筆の成否を分けるカギ:「資料のデジタルデータ化」
最終提出を終えた翌日、「NHK紅白歌合戦」の再放送を観ているうちに、年末年始の頃を思い出した。ちょうどその頃は最後の追込みで、神経も一番ピリピリしていたと思う。それを紛らわすために「NHK紅白歌合戦」を背中で聴きながら、取組んでいた。執筆に没頭していたので、番組自体ほとんど覚えていなかったのだが、少しは落ち着き、余裕が戻った時に改めて観ていると、僅かながら覚えている番組の場面と、奮闘している頃の心境を重なり合わせたかたちで思い出し、あまり日にちが経っていないのにもかかわらず、なんとなく、懐かしい気持ちになってきた。 月並みではあるが、最後まで投げずに、諦めずに修士論文を完成させることができた、という満足感が湧いてきた。またわずかな時間で、閉塞感・焦燥感から、達成感・安堵感に変わっていく精神的なプロセスを経験できたのも、修士論文執筆の副産物として、自分自身の内面的な充実に繋げることができた。 論文執筆奮闘記は、既に論文執筆を終了させた方々、あるいはこれから論文執筆に取組もうとされている方々に読んで頂くことになると思うが、本稿を執筆するにあたり、どちらかと言えば後者にとって参考になるような内容にしていきたい。そのために単に精神的・観念的に終始させるのではなく、2年間の修士課程における経験の中から、おこがましいようだが、私なりに最大限の効果を得ることができたと確信の持てる、具体的な内容に絞って述べていきたい。 修了の要件として、修士論文の他に6科目24単位の習得も必要である。そのためには合計、24のレポートを書き上げなければならない。1レポートあたり3000〜4000文字として、単純計算で原稿用紙180〜240枚分の量になる。中身(内容)以前に、分量だけをみても相当大変であることが予想できる。1年次にレポートを概ね完了させ、メインである修士論文を書き上げていかなければならない。最低でも200枚以上書くことになると思う。とにかく、「量をこなす」ことが前提であり、要請されるのである。しかも、2年間という限られた期間内にということであれば、いかに効率良く進めていくかということが、成否を分けるポイントになることは言うまでもない。 まず、資料収集は、論文執筆を進めていくうえにおいて大きな柱となる。適切な書籍・文献を選び、収集していくことが基本中の基本で重要であるが、今後はインターネットで必要な資料を探し得ることが、論文を完成させる成否の分かれ目になることは間違いないと言っても差し支えない。どの分野においても情報公開が進んでいる今日、インターネットは「情報の宝庫」だと言える。情報の価値を選択するのが重要であるが、その第1歩として検索機能をフルに活用する。活用すること自体、特別な技術を要しない。キーワードを入力して、いくらかの条件を付加するぐらいの基本的な操作の繰り返しである。たくさんの資料の中から探しだすということで、いくらかの根気強さを要する。しかし、検索機能を使っていくうちに慣れていくのと、何をキーワードにするかといったコツも掴めるので、より迅速かつ正確に検索が出来るようになり、効率的な資料収集が可能となる。 次に、資料のデジタルデータ化である。つまり、パソコンで扱えるデータにすることである。既にPDF、TIFなどのファイルとしてあれば、テキストデータ及び画像データとしてパソコンで扱えるので、そのまま執筆に使用しているアプリケーションソフト(ワードのようなワープロソフト)で取り扱うことが可能である。インターネットなどで得た資料は既にデジタルデータ化しているので、そのまま活用していくことが可能だが、問題は書籍などのような、紙のデータをどのようにするかである。 とにかく、引用・参考文献に出来そうな文章、使えそうなグラフ・図表などはできるだけ、デジタルデータ化しておくべきである。そうすることで、直ぐに活用することが可能になるからである。具体的な方法として、スキャナーの利用である。パソコンショップなどで販売されており、A4クラスであれば価格も2万円前後で、パソコンに接続すればほぼ直ぐに使用が可能である。スキャナーで読み取り、パソコン上に取り込み、文字であれば、OCRソフトなどでテキストデータ化する。スキャナーを購入した際に添付されているソフトでもけっこう使えるものがある。 資料のデジタルデータ化を図ることで、「スピード化の実現」、すなわち効率良く進めることが可能となる。そして、デジタル化したデータを分類・整理していくわけだが、これは各人に合ったやり方で進めれば良いと思う。因みに私の場合は、パソコン上で章ごとのフォルダを作成して、そこにまとめるようにした。どの章に該当するかはっきりしない間は、一旦、書籍名のフォルダを作成して、そこへ一時的に保存しておき、明確になった時点で章ごとのフォルダへ移した。また、図表などはタイトル名と頁をファイル名にした。あまり、複雑に体系化することなく、簡単な分類・整理でも執筆の効率化には十分に役立った。 こうした私の経験が今後、修士論文の執筆をされる方にとって、少しでも参考になることを希求する。そして、悔いのない大学院生活を送って頂くことを祈念するばかりである。
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