行政研究会活動報告
 

            国際情報専攻 1期生・修了 添谷 進
 

          
 

 

 



   
 


 「マニフェスト」、今回の行政研究会のテーマはコレ。近年、選挙の際に見聞きするようになった、あの公約集みたいなものです。当研究会では、11月27日の土曜日、早稲田大学で開催された「ローカル・マニフェスト推進大会」に参加しました。今秋に何か活動をしようと、検討してきましたが、近藤教授からの提案を受け、この大会に参加して各自の研究を深めることとしたものです。

以下では、昨年11月の横浜での研究会以来、約1年ぶりとなった今回の活動について報告します。なお、筆者の記録・記憶があいまいで(大会終了後の反省会の影響?)個々の発言内容を細かに把握できておらず、また、事実関係の誤り等があるかもしれませんが、御容赦ください。

 この大会は、前三重県知事の北川正恭氏が所長を務める早稲田大学マニフェスト研究所が主催して行われたもので、2003年の統一地方選挙で当選した市、区長のマニフェストの進捗状況や、ローカルマニフェストの意義、今後の展望を検討しようという目的でひらかれたものです。

ちなみに、マニフェストには2種類あって、国政選挙などで、政党単位で作成される「パーティー・マニフェスト」と、大統領型選挙である地方の首長選挙の「ローカル・マニフェスト」があるとのこと。大会は、後者のローカルマニフェストをツールとして「地方から日本を変えよう」「国のかたちを考えよう」という熱気あふれるものでした。

 今回の参加メンバーは以下のとおりです

近藤教授、安田、亀田、小宮山、荻原、内山、橋本、村上、堀内、吉野、中江、前田(宴会欠席)、増子(近藤ゼミ)、添谷の計14人でした。

 会場は700人の定員ほぼ満席、別にモニタールームも設けられるほどの盛況ぶりでした。会場内は参加者の熱意・熱気のためか、たいへんな暑さ。冬季は暖房しかかけられないという事情もあったみたいですが。

 


まずは、「ローカル・マニフェスト推進大会」の概要を報告します。

<大会の概要>

 大会は、主催者として北川氏、来賓として東京大学総長の佐々木毅氏の挨拶に続き、「ローカルマニフェスト報告」として、神奈川県大和市の土屋市長、岐阜県多治見市の西寺市長、大阪府枚方市の中司市長、東京都杉並区の山田区長が2003年の統一地方選挙の際に示したそれぞれのマニフェストについて、その概要を紹介、進捗の状況やマニフェストの意義について報告。それに対し、名古屋大学大学院の後教授、法政大学の廣瀬教授、中央大学の磯崎教授、言論NPOの工藤代表の4氏が評価を行った。

 また、「特別報告」として広島県三次市長の吉岡氏、NPO政策研究所理事長の木原氏、日本青年会議所2005年度会頭の高竹氏がそれぞれの立場から、マニフェストの意義などについて意見表明を行った。

 これらの報告ではローカルマニフェストの効果について、抽象的スローガンが中心であった従来の公約を、より具体の数値目標や財源を明示することで、市民への責任が明確になること、部下である官僚機構(市、区役所)に対し首長のリーダーシップを発揮しやすくなることなど、その効用が説かれた。

 休憩をはさんで行われた第2部はパネルディスカッション。コーディネーターは北川氏、パネリストとして宮城県の浅野知事、岩手県の増田知事、鳥取県の片山知事、愛知県犬山市の石田市長、埼玉県志木市の穂坂市長、北海道ニセコ町の逢坂町長が登壇。北川氏の基調講演に続いて、現在進められている「三位一体改革」に対する考えや、ローカルマニフェストのあり方などについて意見が交わされた。

 三位一体改革の評価について、各パネリストの評価は総じて50〜60点といったところ。平成17年度に向けた国庫補助金削減のあり方について、地方側が示した案に対し、大会前日に出た一応の結論が金額的には3兆円に近づいているものの、削減対象とされた補助金の選定方法に問題があること、実行可能なしっかりとしたローカルマニフェストをつくるためには、独自の責任と判断で使える財源がなければならないことなどが指摘された。

 最後に、「ローカル・マニフェスト推進首長連盟結成宣言」「ローカル・マニフェスト推進ネットワーク結成宣言」「ゲームを変えよう」と題する大会宣言をそれぞれ採択し、終了した。

 以上が、大会の概要です。筆者としても、これまで官僚や役人主導といわれてきた政策立案を、政治主導へと転換することや、役所というものの体質改善に向けて、ローカルマニフェストが強力な武器となることを感じさせられました。

また、世の政治家・首長の皆さんがこんなに一生懸命「この国のかたち」や政治のあり方、地方自治体のあり方等々について真剣に議論する姿に接し、とても心強く、ある種の感動も覚えました。これもマニフェストというツールの効用でしょうか?冒頭の来賓あいさつで、佐々木東大総長が「政治と有権者の関係を変える」「日本の政治文化の変化を模索するもの」と表現していましたが、「政治が変わるかもしれない」という予感というか期待をもてるような大会であったと思います。

 ということで、無事に大会会場を後にして、当研究会としての第2ステージを開催すべく、高田馬場駅前の会場に移動。安田会長の音頭で乾杯、深夜にまで及ぶ(深夜に及んだのは一部メンバーだったかも)、充実した研究大会の開幕です。数人のメンバーからは、大会参加の感想などが発表され、また、小宮山さんが晴れて衆議院議員に当選されたことが紹介され、国政報告も行われました。

 また、今後の行政研究会の活動についても議論が交わされ、橋本さんからは「テーマを決めて研究報告を行っては?」といった意見もありました。他にも小宮山さんの地元、川越での開催案も提案されました。筆者は結論が出てなかったように記憶していますが、間違っていたらスミマセン。いずれにしても、お互いに、いろんな提案をしながら、これからも楽しい研究会活動ができればと思っています。

 こうして、約2時間半に及ぶ「反省会」のひとときは過ぎ去り、次回の再開を誓いつつ、無事お開きとなりました。

 研究会の仲間の皆さん、再会できる日を楽しみにしています。それではまた。

 

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追記

                              国際情報専攻 4期生・修了 亀田満

                                      

 上記のように大会は、非常に有意義なものでした。一方、参加者からは次のような意見も出されました。

・  一定のルール・基準のなかでマニフェストを進めるべきではないか。

    仮にマニフェストが実行されなかった場合は、次の選挙で落選するだけでよいのか。4年の間でも、進捗状況をチェックして、進捗されていない場合には、何らかの措置が必要ではないか。

    マニフェストの推進に当たっては、もう一度、政治と行政の関係を再確認しなければならない(行政は政治の犬になりきってもいいのか!?)

 印象的だったのは、ある首長が、「同じような規模・環境の都市であれば、結局はどこでも、同じようなマニフェストになる」という言葉でした。ということは、マニフェストが進めば進むほど、どのマニフェストも金太郎飴のようになってしまうのではないか、という懸念です。地方分権に伴い、地域の特色や独自性が、求められていますが、マニフェストが進展すればするほど、これとは矛盾したものとなってしまうのではないか、ということでした。