■報告■ 公開講座「これからの福祉社会を考える」

                              

      国際情報専攻6期生 増子保志

   


 去る、2004年11月6日(土)朝霞市産業文化センターにおいて、IT創造社会研究会とケア問題ネットワークの後援による日本大学大学院公開講座「これからの福祉社会を考える」が開催されました。

 現在の日本は、高齢化社会問題や日本の今後とるべき方向性を強く意識せざる得ない状況にあります。こうした意味で当公開講座の開催は有意義なものでありました。

 講演は、佐々木健教授(人間科学)が「ケアリングとインフォームド・コンセント−福祉・医療の根本をさぐる−」、五十嵐雅郎教授(国際情報)「超高齢者社会における医療・介護保険の課題」と題して、高齢化社会を迎える私達に有意義なお話をいただきました。また近藤大博教授(国際情報)には「サッカー中国杯をめぐる報道」のテーマで本当に中国では反日感情が激化しているのか?についてご講演いただきました。

 佐々木教授からは、社会哲学・実践哲学の観点から「ケアリング」に関してお話いただきました。ケアという言葉の概念は通常私たちが考える「世話」という意味だけではなく、「自分および他人の幸福に対する配慮」という意味を含んでいます。このように、ケアという言葉には広い意味があり、その概念を看護や介護という議論だけに終わらせることなくケアの持つ概念の広さを意識しながらケアの持つ精神を生かしてゆくことが有効であると感じました。

 五十嵐教授にはアナリストの視点から、日本の医療・介護保険の現況や今後の動向を視野に入れた問題点とその対策についてお話いただきました。超高齢化が進む中で介護保険や高齢者医療の問題はもはや“他人事”ではない問題です。早急な医療・介護保険制度の充実のみならず、医療・介護の質の向上がなければ、日本の社会福祉制度は歪んだものとなってしまいます。社会生活の根幹である社会福祉において、今後決して他人まかせではなく自らも関与しなければならない意識を持つ必要性を感じました。

 近藤教授には中国ご帰国後の“ホット”な話題を中心に中国における「反日」の気運についてお話いただきました。サッカー中国杯のおりの中国人観客による「反日」ブーイングがメディアによって報道され、日本に「反中」「嫌中」の気運が高まりました。しかし、近藤教授のお話ではブーイングはスタジアムやその周辺だけの出来事であり、街中では何事もなかったとの事です。歴史を重んじる中国において、日中間に懸隔・溝は厳然と存在します。しかしながら、事象を針小事大に報道することは危険です。過剰な反応では互いの溝がさらに深まるだけでしょう。

 今回の公開講座から開催場所を朝霞市産業文化センターに移し、交通のアクセスも非常に良くなりました。来年度はさらに2研究会が協力して宣伝・広報活動を積極的に行い、とても有意義な諸先生のご講演とともに「価値ある」公開講座を開催することを目標としております。その節は皆様のご参加をぜひお願い致します。