「体験からキャリアへ -暗黙の意味を通じて-」
人間科学専攻 2期生・修了 笹沼 正典
現在、シニアSOHOメタキャリア・ラボ代表
>課長は、一体、私(部下)をどのように育てようとしているのだろうか。
このように、上司・部下の相互関係という日常的な仕事の体験過程の局面において、部下はいろいろな要素についてさまざまな“感じ、思い、イメージ、閃き”を生み出し、それらの存在に気づきます。
ここでは、“気づき”とは“生み出す”ことです。(なお、上司の方から見た場合にも、勿論同じように“感じ、思い、イメージ、閃き”が生み出されます。)気づかれた“感じ、思い、イメージ、閃き”には、上記の例に見て取れるように、必ず何らかの喜怒哀楽などの情動(エモーション)が伴っています。
“感じ、思い、イメージ、閃き”には、このように「暗黙の意味」と情動が一体となって含まれている、と言ってもよいでしょう(この点が、同じ“感じ、思い、イメージ、閃き”から生み出され、知識・スキル・ノウハウなどに顕在化していく「暗黙知」(野中郁次郎)と違うところです。) さて、仕事をすることの自分にとっての「外的な現実」は、役割・役職・業績・年収など、社会的評価の枠組みにおける位置であるとすれば、仕事のなかで自分が気づいた“感じ、思い、イメージ、閃き”に含まれる“意味、価値、あるいは信念”は、仕事をすることの自分にとっての「内的な現実」にほかなりません。仕事をすることの自分にとってのこれら二つの現実は、自分のキャリアを形成している内外二つの側面です。
とりわけ、「人は、実に豊かで多様な意味、価値あるいは信念を感じ、思い、イメージし、閃きながら、日々刻々に仕事しているのだ」、という仕事の体験過程のもつ「内的な現実」こそ、「仕事に関わって生きていく自分にとっての意味を追求、獲得していく過程としての自分らしい内的キャリア」を創始、開発していく実存的な根底であるわけです。 なお、上司・部下関係以外、例えば、担当する仕事自体、仕事の役割、ワーク・モチベーション、仕事に関する能力特性、会社と個人の関係のあり方、自分のキャリア志向性の基本的な在りよう(ステイタス)、自分のキャリア志向性の内容(コンテンツ)、などと言った仕事の体験過程のその他の局面についても、上記と同じように、暗黙の意味を通じた体験からキャリアへの解きほぐし作業が可能であると思われます。(了)
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