人間科学専攻  後藤 和彦

        全力前進の1年

       

   

「ご苦労さまでした.」と面接試問の先生方の言葉で,私の修士論文との戦いは,少し論文を修正するだけを残し,2004年1月31日(土)に終戦を迎えましたが,ちょうどその日の1年前,私は,文理学部の山田研究室を訪問し,修論のテーマについて山田先生と相談しておりました.決まったテーマは,家庭用の美顔器を用いたことで,どのように気持ちが変化するか?についてでした.でも,自分で決めたものの,正直なところあまり気がのらないテーマでした.つまり,実際,自分で美顔器を使ってみると気持ちがよくなり,美顔器を使わない人と比較して統計的に有意差が出るはずと予想され,こんな簡単なテーマで修論としていいのかなぁと思っておりました.しかし,決まった以上,行動に移さなくてはならず,まず困ったのは,被験者募集でした.最低でも20名集めねばならないのですが,そう簡単には指定した実験日,実験場所に集まってくれる人は少なく困っておりました.そして,最後の切り札である友人の二人の大学教官に頼みなんとか助けてもらいました.でも,それだけでもトータル1ケ月以上かかりました.私の場合,幸いこのような大学教官がいたので助かりましたが,被験者集めと実験場所をどうするかがポイントかなと思います.テーマを決めるまでに事前に被験者が集まることを確認すべきかなとも思います.

 2回の実験が終了し,なんとか有意差も出て,さあ,エンジンかけて論文を書き始めようとしたのが,もう秋風の吹く9月半ばでした. でも,なかなか最初の書き出しがうまく書けない!最初の1ページは,産みの苦しみと同じだよと前述の友人から言われましたが,その通りで,色々な論文の書き出しの真似をしながらやっと1ケ月近くかかり,なんとか1000字書けました.でも最初の書き出しが重要と思います.すなわち,読む側にいかにこれはおもしろそうで,オリジナリティーがある研究だという印象を与える書き出しにする必要があると思います.そして又,多くの論文を読んでおくべきです.インターネットでの図書検索システムや国会図書館の検索システムを利用して論文を入手し,早い時期から論文を多く読むべきと思います.読むことにより,知識が深まるのは当然のこと,実験手順,論文の構成,書き方,言い回しなどが身につくと思います.

 まあ,この1年,実験会場に急ぐあまり覆面パトにつかまったり,出張途中の新幹線の中で,上司にデーター処理を手伝ってもらったり,被験者への謝礼もばかにならず,社内預金をかなり使ったり,子供の運動会で応援していても頭の中は論文だらけなど書きつくせないほどのドロドロしたものがありました.また,山田先生が,この1年渡米されておられた関係上,メールでのご指導となり,時差の関係で夜中にパソコンからのメール着信音で目が覚め,コメントを見ては,考えているうちに夜があけたことも何度かありました.でも,今は懐かしい思い出です.

最初は,前述の如く,あんまりおもしろくないと思ったテーマですが,研究を振り返ると,ああすべきだったとか,こうしたら違った結果がでたかもしれないなど色々と課題が浮かび,今は,もっと深く研究してみたいという気になりました.テーマを決める時は,壮大なテーマを考えがちですが,小さなテーマでもどんどん掘り下げていくとおもしろいものです.

 大学浪人以来,数十年ぶりに大晦日も机に向かうなど,今年の年末年始は, 1日中部屋にこもりパソコンに向かうか焼酎に向かうか!?の毎日でしたが,なんとか論文を書き上げ,今はほっとしています.これから修論を始められる皆様,何度も挫折しそうになりがちですが,終わったあとの充実感は最高です!がんばってください!