人間科学専攻  石舘 美弥子

              文献研究のススメ

       

   

 

修士論文作成までの長いようで短かった2年間を振り返ると、とても感慨深い。今、真邉ゼミで過ごした様々な思い出が私の頭を駆け巡る。サイバーゼミでの発表、活発な意見交換をはじめ、面接ゼミでヤリのように飛んでくる貴重な助言の数々、etc。これらは、入学前に抱いていた大学院のイメージ(あくまでも私個人の)とはちょっと違うもの。とにかく、真邉ゼミのなかにいると『心と科学』が自然に深まり、成長すること間違いなし。楽しかったのは、面接ゼミ終了後の2次会。市ヶ谷界隈で杯を傾けながら帰る時間をコロリと忘れ、帰宅がシンデレラタイムになったことも。よく飲み、よく食べ、よく話した。かけがえのない多くの時間をゼミの仲間たちと一緒に過ごした。通信制大学院での新しい学習スタイルが私に与えてくれた数々の贈り物に感謝しつつ、本稿では、修士論文に必要な文献研究の大切さを皆さまにお伝えしたいと思う。タイトルの『文献研究のススメ』は、こんな私の実感がこもっている。それでは、私なりにまとめた“ 文献研究に必要な5WH ”をお届けしよう。

 

 What(何を)?

 

 

まず、自分の研究テーマが見つかったら、key wordsを頼りにデータベースで関連した文献を検索する。その際はできるだけ最新の論文にあたること。そして、その領域の研究の流れをつかむことが大切である。これまでの研究では何がわかっていて、何がまだわかっていないのかを明らかにし、その中で自分の論文を位置づける必要がある。しかし、あまりに情報収集ばかりに気をとられていると、膨大な量の情報に圧倒されてしまうことがある。そこは 焦らず着実に進めてくこと。abstractsを読んで、あたりをつけてから、full text を読む。その論文の引用文献のところから、関連論文を芋づる式で手に入れる。入手した論文を読みススメながら、自分なりに研究史を作っていくとよい。正直に言うと、私は今まで英語の論文を読んだことがなかった。修士論文がなければ、恐らく英語の文献は一切読まなかったと思う。今回、研究論文をまとめる過程でわかったのは、英語の文献の大切さ。日本における論文だけでは限界があるのだとわかった。これは、私にとって大きな収穫だった。

 

Who(誰が)?

 

 

 自分である。やはり自分以外にない。自分の責任で切り開いていくのだ。しかし、そんな格好いいことばかり言っていられないこともある。文献研究って孤独な作業だと感じることも多い。文献のなかには1回読んだだけでは理解できない内容がある。それどころか、何度読んでも頭に入らないものもある。そんな時、電子辞書を片手に弱気な自分が時折顔を見せる。睡眠時間を削り夜中にパソコンに向かっていると暗い気持ちになることだってある。実はこういう時こそ、自分を奮い立たせる絶好のチャンス。健康で仕事は順調。家族も応援してくれる。子どもたちは可愛い。お金もまぁまぁあるぞ。心を割って話せる友人もいるし。やっぱり私は幸せ者。じゃあ、研究を進めていこう。そう、単純な自分と向き合って、がんばる力を貰うのだ。

 

 Why(なぜ)?

 

 

 なんといっても、自分が今回の研究で何を取り扱い、そしてなぜ研究を行ったか、研究動機を明確に示すためにも文献研究は必須なのである。これをいい加減にスタートしてしまうと、あとが大変。研究を実施した後に、自分の行った研究はすでに誰かが発表していた事実だとしたら・・・考えただけでも恐ろしい。こうなると、実際に研究に着手してよかったのかどうかさえ問われることになる。自分の研究のオリジナリティはどこにあるのか(これを教授から何度指摘されたことか)、それを見出すためにも文献研究をおろそかにすることはできない。

 

When(いつ)?

 

 

かくいう私も、文献研究に真剣に取り組んだのは2年次に入ってからである。思うように集まらない関連論文に焦りを感じながら、夜な夜なインターネットで検索に励んだ。1年次は、文献研究の必要を感じながらも、科目の課題レポートで追われるばかりの生活を送っていた。1年次の後期には自分の実験研究も始まったし、忙しくて先行研究は調べてられないぞ(今から思うと無謀な考えだった)というわけで、先送り状態のまま2年次に突入した。大変だったのは、進みゆく実験研究と並行して調べなければならない膨大な(と思えた)先行研究の数々。正直、もっと早く始めておけばよかった。特に2年次の春から夏にかけての私は、実施した実験結果を評価しながら、次の計画を練るという過酷なスケジュール。けれども、この時期をなんとか乗り切ることができたのも、苦労して調べていた文献研究のおかげ。並行して収集した先行研究からたくさんのヒントを貰えた。実験方法の修正から手続き上の細部に至るまで、先行研究を参考に試行錯誤しながら見直せたことがよかった。これも、終わった今だから声を大にして言えること。とにかく、できるだけ早め早めに進めよう。できれば、1年次のうちにレヴューをまとめられるくらいがbest

Where(どこで)? How(どうやって)?

 

 


 自宅で、手に入れたいほとんどの文献収集が可能。これは驚きだった。仕事と家事と学生の3足のわらじを履く私にとって何より有難かったのは、自宅からインターネットを使ってaccessできる文献データベース、図書検索システム、雑誌や図書の所蔵情報など。そして、入手した文献は日頃からこまめに整理しておくことが大切。いつでも読めるように文献リストを作成しておくと、あとで役に立つ。それでは今回、特にaccess頻度の高かったサイトを順不同でご紹介したい。

 

     PubMedNational Library of Medline)(http://pubmed.gov/

無料のMEDLINEのデータベース。世界的な医学のデータベースMEDLINEを中心に関連するさまざまなデータを相互にリンクできる。おススメのサイト。

     雑誌記事牽引(国立国会図書館)(http://www.ndl.go.jp

国立国会図書館のホームページのNDL-OPACのなかで検索できる。採録の範囲は幅広く、人文・社会/科学・技術/医学・薬学といったものをカバーしている。検索した文献の複写については、利用登録すればインターネットによる郵便複写申込で送ってもらえるので便利。

     社会老年学文献データベース(http://www2.yume-net.ne.jp/dial/index.htm

(財)ダイヤ高齢社会研究財団が作成し、無料で提供している社会老年学の日本語文献データベース。検索結果の書誌事項と論文抄録をダウンロードできる。

      国立情報学研究所 NACSIS-ELS(電子図書館サービス)(http://els.nii.ac.jp/

日本大学大学院のホームページの図書館内にもある。学協会の発行する学術雑誌のページをそのまま画像データとして蓄積し,書誌情報とともに検索できるようにした情報サービス。論文・雑誌のリストの検索は自由にできるが、論文のページの表示や印刷をするには利用登録が必要。利用料金は無料なので登録はおススメ。ただし学協会が定める著作権使用料が、ページを画面表示および印刷した場合に少しかかる。支払いは、送られてくる振り込み用紙で。

      UMI Dissertation Express( http://wwwlib.umi.com/dxweb/gateway

公刊されていない博士論文を購入したいときはこちらへ。教授からいただいた貴重な情報。私の場合、割高のexpressで注文しても60ページで$55(送料込み)。論文は1週間以内に郵便で到着。到着1ヵ月後位にBankcheckしたら、$55は当時のレートで落ちていた。

      英文雑誌新聞記事データベース(ProQuestシステム)http://apollo.gssc.nihon-u.ac.jp/proquest.sunmedia.co.jp/nichidai/

日本大学大学院のホームページの図書館内にあるのがこちら。米国PQIL(PROQUEST INFORMATION & LEARNING)社がインターネットで提供する全文データベース。この在校生に対する特典を利用しない手はない。Key wordsを入れてhitする論文は、full textをダウンロードできる。大変お世話になったサイトである

      Science Direct ( エルゼビアが刊行する学術雑誌データベース)http://www.sciencedirect.com/

こちらも、日本大学大学院のホームページの図書館内にあるので便利。ここも利用価値は高い。

入学当初、教授にいくつかのkey wordsを送り、その後に送られてきた山のような関連論文のabstractsに悲鳴をあげた私だった。有用な情報を手際よく集めるにはどうしたらよいのか。同じことを何度も経験したり失敗したりしながら、できなかったことがだんだんできるようになってきた。知識が少しずつ増えてくる。新しい発見がある。大切なことに気づいていく自分に、日々小さな喜びがある。電子辞書を肌身離さず、文献をどんどん濫読すること。とにかく、できるだけ早めに取り組んで早めにまとめることが一番!

 最後に、真邉先生をはじめ、この2年間私を支えてくれたすべての人に心から感謝いたします。ありがとうございました。