公開講座「福祉社会のこれからを考える」に参加して

 

                            人間科学専攻3期生・修了 白鳥孝子

 

  

 日本大学大学院のIT社会創造研究会とケア問題ネットワークの共同主催公開講座「福祉社会のこれからを考える」が、2003126日(土)に新座市民会館で開催されました。私は、昨年に引き続き、2度目の参加をさせていただきました。

 

講演は、日本大学大学院総合社会情報研究科人間科学専攻 佐々木健教授が、「ケアリングとインフォームド・コンセント――福祉・医療の根本をさぐる――」、同研究科国際情報専攻 五十嵐雅郎教授が、「超高齢化における医療・介護保険の問題点」ということで、超高齢化を迎えている私たちにとって、大変貴重な講演をうかがうことができました。

 

佐々木教授は、「ケアリングとインフォームド・コンセント」について、「哲学」の観点からの純粋な考察のなかから、人間存在にとっての「福祉」について述べられました。「ケア」(Care)、「健康」(Health)、「インフォームド・コンセント」(Informed Consent)について、医療倫理や看護倫理という視点からあえて離れて、その根本を問われた先生の講演を受けて、ケアリングやインフォームド・コンセントが医療や看護という領域に限られたものではなく、私たちが健康に幸福に生きるために重要なキーワードであるということを再確認いたしました。人が自己及び他者の健康を願い、共に尊重して生きていくこと、そのために、私達1人1人がすべきことは何なのか。その答えは、表面的な言葉や狭い概念からではなく、根本的な意味を見つめていく中から生まれるのではないかと実感いたしました。

 

五十嵐教授は、わが国の医療・介護保険について、現在の状況や今後の動向を踏まえた上で、医療・介護保険が抱えている問題点とその対策について述べられました。医療保険も、そして2000年から施行された介護保険も、急速に進む高齢化の中で、問題は山積しています。今の日本では、将来に不安を抱かない人のほうが珍しく、その根本原因の1つに日本の福祉政策があります。医療・介護保険制度の問題点だけでなく、医療や介護の質の向上にむけての五十嵐教授の講演は、人びとが安心して老いを迎えられるような社会をつくっていく上で、非常に貴重なものでした。医療・介護保険制度の充実はもちろん、医療や介護の質の向上がなければ、日本の未来はないと感じます。しかし、そのためには、政府や医療・福祉従事者だけが努力すればいいというわけではありません。私たち市民が声を大にして政府を動かし、医療や介護を受ける者として医療や介護の質の向上を求めていくことを土台として、今後の日本の福祉社会形成に向けて行動していきたいという思いを強くしました。

 

講演後は、佐々木教授、五十嵐教授を囲んで、楽しい会をもうけることができました。公開講座の内容や日本大学大学院について話が弾み、最後は来年度の公開講座に向けて話が盛り上がりました。来年度も開催する予定でおりますので、多くの皆様の参加をお待ちしております。