北向きの部屋で過ごす時間と体内時計への影響   

廊下は北側?それとも南側?

――体内時計にやさしい窓の向き――

 

                               人間科学専攻 5期生  吉田  香

 

   

 

みなさんの部屋の窓はどの方角を向いていますか?

「南向き日当たり良好」とか、「東南角部屋」とか。

不動産の物件情報などを見ていると、こういったセールスポイントをよく目にしますね。

 

北向きの家と、南向きの家。どちらを希望しますか?

やはり南向きでしょうか。

太陽の光を多く生活の中に取り入れたいものです。

 

しかし、あえて太陽の光を調節するよう工夫されている建物があるのはみなさんもご存知の通り。

蔵がその代表と言えるでしょうか。身近なところでは書斎、図書館などがそうかもしれません。

 

住居としての建物の多くは、南側に生活の中心となる場が設けられていると思います。

公共の建物、特に学校は、南に運動場があり、校舎はその北側に位置し教室は南側、運動場に面していて、廊下が北側にレイアウトされている場合が多いと思います。

 

美術系の学校はそれとは少し異なります。

南に運動場があることは変わりませんが、教室のほとんどは北側にあり、廊下が南側にあります。

北側一面に大きく設置された窓にも曇りガラスが入り、部屋の中から外の様子をうかがうことはできません。南側には小さな風取り用の窓があるだけでほぼ一面が壁になっている教室もあります。

アトリエと呼ばれる絵画を制作するための部屋の多くには、そんな設定がされているのではないかと思います。

何かモチーフを目の前にして絵画を描く場合には、このように光の調節がされている部屋が良いと思います。光が直接差し込む部屋では、モチーフの影が日時計のように移動してしまい、その表情が変わってしまうからです。

 

北側の窓というと、普段は敬遠されがちかもしれません。しかし、こう見てくると大きな利点があります。時間によって光量が大きく変化することがなく、1日中ほぼ一定のやわらかい光が得られるということ、そこが大きなメリットです。

 

その部屋の中では、時間の流れが少しゆっくりしているように感じます。

その経験が体内時計に影響したのでしょうか、私の中では世間よりゆっくり時間が流れています。

そこには、私にとってかけがえのない「くつろぎの空間」があります。私たちの普段の生活環境には、そうした空間が意外と多くあるのかもしれません。