修士論文中間発表会に参加して

       

 

                                      文化情報専攻 4期生 中村 恵

 

 

 

 

会場の雰囲気にドキドキ

 

 10月25日(土)、朝9時少し前に市ヶ谷の日本大学会館に到着、エレベーターで6階の会議室へ向かった。会場は601会議室AとBの二ヶ所。他専攻の教授や院生など、初めてお会いする顔ばかりで、自分がドギマギしていることを自覚。日頃、自宅学習とゼミの人達との交流のみで、大勢がいるところでの発表という雰囲気に押されるというのは、予測した通りだった。

 レジュメを会議室入り口のテーブルに並べながら、他の発表者はPowerPointで発表すべく、いかにもしっかりと準備されているものばかり。そっと自分のA4一枚のレジュメを並べた。そこに、我が指導教授の竹野先生がおいでになり、私は笑顔で朝のご挨拶をし、内心の動揺も和らぎ、ほっと一安心。

 

発表と時間と質問と・・・

 

 各自の発表時間は20分、その後10分の質疑応答に入る。発表中15分で一度予鈴がなるが、大抵ここで所謂<巻き>が入る。「後5分ありますから」と優しく告げられるが、発表者は「後5分で残りの何処を削ろうか、そうしたら果たして言い終えることができるのか?」と発表を続けながら、頭の中では計算と混乱が始まる(私の場合はそうだった)。

 質問は第三者的に言えば至極当然の内容で、発表内容の根拠(裏づけ)と数字や結論の妥当性を打診するもの等々。そして、必ず質問されたのは、各自の論文の独自性(originality)を問うものだった。

 国際情報専攻、人間科学専攻の方々は、やはりPowerPointを利用しての発表が殆どだった。通常の会議でも、学会でもプレゼンテーションといえばPowerPointの時代。私は荒関仁志先生の「情報処理技術」で学び、サイバーゼミで一度発表をしたきりで、今回は準備と練習の時間がなかった。「文化情報だってPowerPointでプレゼンしましょう!」と発表後、道々歩きながら竹野先生に力んで語っていたのは私だった。

 

3.私の発表

 

 いよいよ、午前中最後の発表者である私の順番になった。正面右側にある発表者用の机に向かって座り、レジュメと昨夜午前2時まで掛かって書いた全文原稿を机の上に広げた。顔を上げて会場内を見てみると、発表会開始時より人が多くなっているのに少し動揺。会場の後方に同じゼミの人が来ていることに気づき、応援に来てくれたことに感謝した。「準備が宜しければ始めますが」と司会の先生から声がかかり、「はい」と答えた。緊張の瞬間だ。落ち着いて、ゆっくり、と自分に言い聞かせた。

発表用の原稿は、自宅で二度声に出して読み、自分の言葉として不自然なところは直し、朝来る途中の電車の中でも一度目を通した。一枚当たり5分の計算で三枚準備し、レジュメの読みと合わせて四枚、合計20分で終了の予定。修士論文のテーマである「永遠についての考察─C.S.ルイスにおける永遠のビジョン」について発表した。国際情報や人間科学専攻の教授、院生の方々を前に、一見非現実的な、また抽象的な印象を与える「永遠」について、現段階までのところを発表した。

 20分が経過し、質疑応答の時間となった。さて、自分の番となるといったいどんな質問が来ることかと少し怖かったが、やはりとても適切な質問。「誰もが<永遠>に憧れると言っていますが、その根拠はありますか?」、「なぜ、C.S.ルイスなのか?(つまり、このテーマの研究対象としてC.S.ルイスを選んだ理由(根拠)は何なのか)」等々。無理をせず、不確かな事は言わないように何とか質問に応えさせて頂いた。

 

4.是非、修士論文中間発表会には発表を!

 

 他の方々の発表、先生方の厳しく優しいご意見などを伺い、大いに刺激を受けた。自分の発表も何とか無事終えることができた。そして、その感想が「とても楽しかった」というのは、自分でも不思議ではある。よくマラソンの高橋尚子選手が、「レースを楽しみます」とか「次の大会が楽しみです」等と言っているのを聞くが、ほんの少しそれに似た感じかも知れないと思った。つまり、エネルギーを放出する緊張感というか何というか・・・。とにかく、とてもよい経験をすることができた。

私たちは、通信制大学院という研究環境にあって、自分の小さな世界でのみ研究することに陥りがちな状況にある。まして、社会人は日々、時間の遣り繰りに四苦八苦している。みんな余裕がないのである。そのような中だからこそ、研究対象や研究方法、興味関心も違う他専攻の方々と、実際に顔を合わせ、互いに刺激し合い、自分の研究を発表するといったことが必要なのだと。自らの研究や、自らが得たものを他の誰かに聞いてもらうこと、また、その準備のプロセスの大切さを実感した。

許されるのであれば、時に途中経過であってもいい、他者に伝えることを試みてみたい。そのような気持ちを強くした、修士論文中間発表会だった。

以上