秋晴れのヨコハマで熱く行政改革を語る

   

                                                                    

  〜11月22日 行政研究会主催公開シンポジウムが開催されました〜

 

 

                                   国際情報専攻 3期生・修了 内山幹子

                                                                                      

 

 

 

 

 今年6月に諏訪市で開催した公開シンポジウムに続き、行政研究会主催15年度第二回目の公開シンポジウムが横浜で開催されました。今年7月に京都府向日市会議員に当選した行政研究会安田会長の講演に続き、IT社会を背景にした行政改革のあり方に関する、橋本さん、村上さんの報告、そして参加者間での議論。山下公園沿いのイチョウの美しい秋の日に、熱く熱く行政改革について議論されました。後半には、社会に貢献する大学院教育に関する五十嵐教授の講演、そしてミシガン州滞在中の近藤教授から米国最新事情を報告していただきました。

 

“本当に”若き政治家が語った行政改革

講演 行政研究会会長・向日市議会議員 安田 守

38歳の安田氏は「若き政治家」に該当するのでしょうか。答は「イエス」。安田氏は無所属議員ですが、党籍は自民党にあります。その自民党では、45歳までは青年局に所属するとのこと。安田氏は 長岡京の中心地であった向日市議会議員に、今年7月に立候補し、見事当選したのです。向日市は人口約53000人。市会議員の3分の1は共産党という、共産党議員の占める割合は日本一という土地柄からの立候補でした。父親が政治家でない、いわゆる「二世議員」には該当しない安田氏が、選挙に立候補することを決めたのは、10年前。選挙に出たいと思ったのは、行政に不満を感じたから。だれかがやらねば、との使命感にかられてでした。しかし、非「二世議員」にとって厳しかったことは、看板なし、名前なし、という状況。そのような状況にあって、周囲の人々に押されて選挙に立ち、当選できるような地盤づくりに10年間を要したのです。選挙に向けて本格始動したのは、4年前から。投票日(即日開票)の第1回目の開票の瞬間、安田氏の自宅1階(駐車場)にあった事務所から歓声が沸きあがり、その瞬間は忘れられないとのこと。勝利をものにして感じるのは、選挙は勝たなければならない、負けない選挙をしなければダメ。

 

選挙に向けての準備期間中に日本大学大学院に入学。そこで知ったのは、同級生たちみんなが目的意識を持っていること。そして、それが励み、刺激になったのです。ゼミでは、学生という枠を越えて、一人の人間として付き合え、それが財産に。しかし、働きながらの二年間の学生時代は厳しかったと振り返ります。学生時代に有志で行政研究会を設立。そして活動の一環として、2002年2月に当時の三重県北川知事を訪問。その時に北川知事からいただいた一言「小さなことから始める勇気。そしてそれを大河にする根気」。これが今でも政治家安田を支えているのです。

 

 市会議員となって主張している行政改革の目的はふたつ。財政の立て直しと、市民参加。財政の立て直しには、税金の未収対策が一番重要。向日市の場合、税金納入率は90.3%。つまり、市税約50億円の1割の5億円が未収状態なのです。そして、市民参加には、情報公開の推進が不可欠。認識すべきは、住民のニーズが多様化していることと、職員の意識改革が必要であること。市の予算決算を、自分の家計と同様に考える感覚が求められているのです。

 

 役所の職員の意識改革は、どこでも、なかなか難航している様子です。その意識改革を進めるための制度をどうすべきか。このような参加者からの質問に、安田氏は、民間への派遣や、内部評価制度(部下が上司を評価する制度)の必要性を訴えました。

 

改革をするのはだれか、そしてそれを支援するIT技術の共有に向けて

討論「IT社会における自治体運営」

 

 橋本氏が「構造化されたパターナリズムの解体へ 〜情報技術の効果的な活用と行政活動への積極的な参加〜」と題して報告。ちなみに、「パターナリズム」は、当人の意志に関わりなく、当人の利益のために(for one’s own good)、当人に代わって意思決定をすること。父親的温情主義、父権主義などと訳されています(橋本氏作成 当日の配布資料より)。日本では、社会全体がこの「パターナリズム」に覆われており、つまり、「お上意識」から民が脱していない状況なのです。そのため、今年11月の衆議院議員選挙では、投票率が低下するという現象が見られました。民自らが、改革をしていくという意識の転換が求められている。IT技術は、利用者間で、さまざまな情報の共有を可能とし、「パターナリズム」の要因の一つである知識不足の解消に貢献する、つまり、社会を覆っている父権主義の払拭に貢献することが期待されているのです。そこで重要なのは、ITを活用する上での教育。ただし、重要なのは、パソコン操作やソフトの利用法を教えるのではなく、情報に関する基本的知識を教えること。そもそも、情報とは何か。情報化の歴史的経緯といったことを教えるべきなのです。

 

 橋本氏の報告に続き、村上氏は「IT社会における自治体と情報提供の現状報告 〜特に自然災害における防災情報のITを利用した行政サービスの一面から〜」と題して、国土交通省と地方自治体の防災情報関連ホームページを中心に報告。多摩川を管轄している、京浜河川事務所のホームページは、人気アザラシ「タマちゃん」を見たい人が殺到してアクセスしたおかげで、サーバーの容量を大きくする必要にせまられた余談も紹介されました。村上氏の主張は、自治体の防災情報に関しては、住民の生命にかかわるため、もっと公開されるべきであり、また、各自治体独自に、何を、そこの住民に伝えるのかという、情熱を各自治体に持って欲しいとのこと。予算などのからみで、国の防災情報を活用して、ただ、そのまま流すということではなく、それぞれの地域に合った情報を提供していかなければいけないと。

 参加者間での討論は、国土交通省に関する質疑応答に続き、IT技術を多くの人が共有できるよう、情報格差に向けて、国の政策として対応する必要があるということで、まとまりを見ました。

 

「社会人リーダー育成に役立つ大学院とは」 

講演 五十嵐教授

 

 五十嵐教授は、当大学院や五十嵐ゼミのホームページの画像をスクリーンに映しながら、講演を行ってくれました。勉強のくせができ、情報の分析・判断ができるようになった大学院修了生対象には、日本国際情報学会が設立されていることも紹介。向上意識のある人にとっては、このような大学院がおもしろいのではと、“新しい大学院”像をアピールしました。

 

 

 

「体験的オンライン大学院教育論〜日米中3カ国間サイバーゼミを中心として〜」 講演 近藤教授

 

 ミシガン大学日本研究センター(米国で最も古い日本研究センター)に客員研究員として米国滞在中の近藤教授から、一時帰国のこの機会に、米国事情についてお話いただきました。近藤教授のホームページで、「アメリカ・アナバからの通信」と題して、米国滞在記をお伝えいただいていますが、今回の講演では、ホームページでは伝えることのできない貴重な話が披露されました。

 日本に一時帰国して驚いたことは、朝日新聞には、対イラク政策では民主党と共和党とでは異なると書かれていること。しかし、米国にいてわかるのは、民主党もイラク戦争を支持しており、フセイン政権は世界のエネルギー供給の脅威であり、イラクの民主化は中東の民主化につながると考えている。つまり、アメリカは他国と違う、アメリカの政治と憲法が唯一正当な政治表現であるとする、アメリカニズムあるいはアメリカイデオロギーは両党に共通しているのです。そのようなアメリカの、世界における単独主義は危険であり、アメリカにいて思うのは、アメリカは孤立しており、またもう一度戦争をやるであろうということ。アメリカが持っている怖さを、アメリカで感じています、というお話でした。

 

 次回の公開シンポジムには、みなさん、ぜひご参加くださいね。

 

懇親会風景・イタリアンレストランにて