沈黙は「敗北」である
国際情報専攻 5期生 真藤正俊
|
出口が見えない長期不況。一体いつまで低迷した経済状況は続くのか。現在平成15年になっても多くの失業者の雇用促進は芳しくない。経済界ではリストラの嵐が猛然と吹き荒れる。サラリーマンたちは会社の物陰で怯える毎日である。 この不況の原因について、新聞やニュースなどで専門家の様々な意見があるが、これらの意見はみな「マスコミが作ったイメージである」のだ。それゆえ多くの国民はそのイメージに踊らされている。つまり、正しい答えが国民自身にもはっきりわかっていない。 経済評論家たちは不況の原因となる答えはもっとわかっていない。それどころか正しい原因を知らないがゆえに状況をさらに悪くする一方である。経済評論家の中で現在の小泉総理大臣を「フーバー大統領に似ている」と分析する者もおり、各メディアを通じて自分の経済理論を訴えているが、それは正しくはない。間違っている。その理由はこの私自身が衆議院選挙で小泉総理大臣の街頭演説を目の当たりにしたからである。 テレビで報道される小泉純一郎総理大臣(平成15年11月現在)イメージは、「本物の小泉総理」とはだいぶ違う。マスコミの言うとおり、たしかに自己主張はたいへん強いが、演説の内容ではそこらの経済評論家よりも「はるかにまともな経済政策」を説明している。彼の言う「構造改革」は経済評論家たちの批判する「緊縮財政」ではない。一言で言えば「民間産業の活発化」である。 演説の中で小泉総理大臣は「かつて電電公社をNTTに民営化したことで皆さん電話はなくなりましたか?無くならないでしょ?いま、手に持っているのは何です?携帯電話!ほら、やっぱり電話は増えているでしょ?郵政の民営化は正しいんですよ。だいたい外務省の公務員は約5000人ですが、郵政を含めて特殊法人は約280,000人もの公務員がいるんです。私はね、280,000人もいなきゃ仕事が出来ないのかと言いたいんですよ」、と言っている。 この意見は正しい。公務員でも既得権益に群がる連中がいるから、無駄な仕事が増える。そうなると官僚も甘える。支出が増えれば、またムダな税金が多くなる。ツケを支払うのは政治家たちや高級官僚でもないわれわれ国民である。法案を決めた政治家は責任を取ったりしない。 経済のニュースも日本経済の現状を正しく伝えてはいない。なぜなら、民放の場合に多いのだが、いわゆる自分の局のスポンサーの不祥事は取り扱わないようにするか、取り扱ったとしてもわずかな時間で「こんなことがありました」くらいでしか報道されていない。これでは「日本経済の現状」もボンヤリとしているので具体的な「対策」を国民は知らないままとなり、性懲りも無くまた「愚策」にムダな税金が投入される。こうした悪循環が日本は続く。 このような歪んだジャーナリズムがまかり通る日本は経済政策もまた、まともでない。また「愚策」が出来上がるのかと思うと、私たち国民は心配になる。たぶんしばらくは抜本的な経済政策を実現するのは難しいだろう。 これは私の意見であるが、日本の景気がいつまでも回復しないのは“正しいものを悪く捉え、悪いものを良いイメージで脚色し報道するマスコミの捏造体質こそが、景気回復を妨げている原因ではないのか”と主張する。 総理大臣のイメージもそうだが、マスコミは政財界の人間を正しい姿で報道しているのだろうか。たとえば実績のある人間を貶めることをして、何の実績もない人間を英雄のように報道している場面を見ていると「人気があるなら、ちょっとくらい実績がなくても英雄のように報道してもかまわない」というものが多々見られる。 経済が回復しないのは「日本経済の本当の姿」をわれわれがどこまでも捉えようとしないからではないだろうか。景気を回復させる特効薬とは「良い政策を良いと判断し、悪い政策を悪いと言い切ること。そして、実績のある政治家を高く評価し、法案を一つも通せないなどの実績の無い政治家は給料泥棒であると大声で言うこと」である。すなわち、事実を言うことである。 われわれ国民は聡明でなくてはならない。国民は賢くなり、政治家の実績をあるかないか常に調べることである。そして政治に参加せず、投げやりになり、「今まで真面目に生きてきたのだから、おとなしくしていても自分の努力をみんないつかわかってくれるだろう」なんて思わないことである。おとなしくしていれば悪い政治家や強欲な資本家に利用されるだけであろう。 景気が回復しない原因は「事実や物事を正確に捉えられない人間の心」ではないだろうか。この先も正しいものと悪いものがあるなら、まわりに何と言われようが、正しいものを「最後まで正しいと勇気を出して、しゃべること」である。沈黙は卑怯であり、毒である。そして「沈黙は敗北」である。
|
|
|