国際情報専攻  松原 光城

      「総合雑誌とアイデンティティ・クライシス

     

 冷戦が終結して以来、日本人とは何かということが、形を変え、テーマを変え論じられるようになった。しかしその一方で、アイデンティティ・クライシスという言葉に象徴されるように、自己の存在、もしくは存在意義について定義できない人々が増えてきているのも現実である。そのような時代状況において、総合雑誌の持つ意味は大きい。

 総合雑誌が持つ最大の特徴は、その多様性であると私は考える。理念と現実、保守と革新など、様々な対立軸によって、まさに雑誌の数だけ視点・論点を形作っていると言っても過言ではない。それらの視点・論点が、あるときはテーゼとなり、またあるときはアンチテーゼとなることで、国民のコンセンサス形成に対して、奥行きを深める力を持っていると思う。

 東西冷戦の終結によって、総合誌にも存在した「鉄のカーテン」は融解した。それは、戦後の総合雑誌を支えてきた最大の対立点の消滅を意味するだろう。私自身は、現在の総合雑誌はかつてほどの影響力を持っていないと考えている。

 しかし、それは雑誌の潜在力がいまだ発揮されていないという意味であり、新しい対立点の構築によって、新しい使命を得ることができると思う。新しい対立点の構築とは、新しい自己の確立に他ならない。そのために、雑誌自身にも存在する「アイデンティティ・クライシス」を克服する必要があるだろう。