「備えあれば患いなし〜時間は待ってくれない〜」

 

 

                         

                        国際情報専攻 1修了生 齋藤俊之

 

 

 

 

 

 「備えあれば患いなし」とは、御存知のとおり、準備ができていれば,事が起こっても心配することはない(新辞林)ということ。このフレーズを耳にする機会は多いが、いうところのこの「備え」、物ばかりに目が行き易くなっていないであろうか。物も大事なのだが実は目に見えない時間に対しても「備え」が大事なことを今回痛感したのであります。

 

 国際空港でのチェックインは出発の2時間前に。そう、空港に2時間前に着いて手続きをとるのが基本であります。しかし、あってはならないアクシデント、うっかりはつきもの。だからこそ、余裕を持っての行動は大事なのですね。まさか自分がやるとは思ってもみませんでした。

 

 場所はマレーシア・クアラルンプール。

 

 中心市街地から国際空港まで28分で結ぶエクスプレスが出来たことで、旅行者は一層当地を楽しむことが出来るようになりました。かつ、駅でチェックインできること、飛行機の預け手荷物をこの場で預けられるサービスは空港の窓口がもう一つできたことを意味し画期的といってよいでしょう。

 

http://www.kliaekspres.com/

 

 そんなことが頭にあった私は出発2時間前に駅に着いてチェックインし空港に1時間前に到着すればと時間を組だのであります。ところがです。つまずきはエクスプレスの始発駅の一つ前で起きました。LRTの運行間隔がいつもなら5分であるのになぜか11分間隔だったのであります。やや遅れて駅のチェックインカウンターに着きました。手続きができれば5分後発のエクスプレスに間に合い1時間前に空港に着ける予定でした。しかし、何度もパソコンをたたく係員のチェックインがなかなか進みません。しばらくして「この便のチェックインのアクセスが出来ないため空港でチェックインして欲しい」というなんとも予想していない返事が冷たく帰って来たではありませんか。再度、聞いても同じ返事。出来ないといい続けられてはどうにもなりません。仕方がなく、空港でチェックインを行うことに決めたのであります。

 

 しかし、改札を出るとエクスプレスは出たばかり。次発まで30分も待たねばならなく、焦りの度合いが増し始めました。タクシーでは1時間要します。また途中の渋滞を考慮すればとても厳しい。まだ、エクスプレスの方が時間に正確。ということで次のエクスプレスで行くことにしました。しかし、冷静に考えれば空港に着くのは出発30分前になります。それからのチェックインは無理。搭乗できる可能性はほとんどゼロに近いです。ただただコンマ数%の確率を信じてとにかく空港に向かいました。焦る気持ちをどれだけこらえただろうか。いつも早く感じるエクスプレスがこの時ばかりは遅く感じました。

 

 定刻通りエクスプレスは空港に到着。最上階の出発ロビーへ走りました。すぐにチェックインを頼むと、係員の女性はチケットの便名から出発から30分もないことを察し、懸命にパソコンを打ち始めました。手が止まった瞬間、チェックインが出来たのかと半喜びしかけた時、彼女の口から出た答えは「30分を切り搭乗手続きはクローズされてしまいました」「次は夜8時過ぎの成田行きになりますね」となんとも事務的な答えでありました。まさかのまさか。やはりダメだったのか。やってしまった。頭の中が真っ白とはこのことをいうのだと初体験でありました。手を合わせてもう一度頼みましたが通用しません。当たり前です。

 

 仕方がなく、チケット売り場で切り替えの相談にのってもらうため列に並びました。しかし、あきらめきれず再度、別のカウンターでチェックインを試みることにしました。緊急と察してくれた係員が責任者の居るカウンターを教えてくれ、そこでもう一度お願いしました。すると出発ゲートと無線交信をしてくれたのでした。返事はゲートに出発時間前に着けば「OK」という返事でした。「ラッキーですよサイトウ」と手書きでチケットを作成してくれました。(コンピュータ上では既にクローズされているため機械処理は出来なかったのです。)出発まで20分をきりました。「サイトウ、急いでゲートへ行って下さい。間に合わなければだめですよ」と。本当にラッキーです。何度もお礼をいい、出国審査へ走りました。

 

 審査を終了すると時計の針は出発15分前をきっていました。とにかく走りました。ところがゲートへ向かうシャトルがなぜかいつもなら交互運転しているのにこのときは1本で運行している為になかなか来ないではありませんか。秒針の進むスピードが早すぎます。片道1分足らずの距離をなぜリターンしてこないのか?故障なのか?出発まで10分をきろうとしている。係員に尋ねようかとしたその時、シャトルの車体が目に飛び込んできました。良かった。いつもならシャトルからの車窓を楽しむのだがそのような余裕はありませんでした。到着し、扉が開くやいなや走りました。コンコースがこれほど長いとは。誰もいないコンコース。まさかゲート位置を間違えたか?マニラ行きの表示が成田に見えるなど気持ちの動転ぶりが自分でもわかりました。しかし、出発ゲートのロビーに入ると、係員全員が私を待っていてくれました。無線から無線へ伝えられた私の名前。そして、手書きで書き加えられた搭乗者名簿をチェックされようやく機内に着きました。出発6分前だったのです。

 

 機内サービスで配られたオレンジジュースとおしぼりは、安心感がこみあげ至福でおいしかったのはいうまでもありません。しかし、気持ちは懺悔で係員の方々に申し訳なかったという気持ちが何度もこみ上げてきました。なんとも言い難い帰路となりました。

 

 サービスの向上によって市街地の駅でチェックインが出来るようになったことは素晴らしいことであります。しかし、基本はあくまでも空港に2時間前に着くようにしないといけないこと。その基本を痛感したのであります。時間は待ってくれない。それだけに時間に対する備えは物に対するそれよりももっと慎重にかつ厳しく考えなければならないといえましょう。出来るだろう、間に合うだろうという慣れによる推測は非常に危険であることを今回痛切に感じたのであります。

                                

 普段の仕事の工程しかり、レポート作成しかり、物ばかりに目をむけずに不測の事態にも考慮した「時間」についても「備え」は大事なのですね。

                        (2003/07/10現地)