夏期スクーリングに思う

――他専攻との交流を通じて――

 

       

 

                                               人間科学専攻5期生   田村 美子

 

 

 

 

 727日の午後、国際情報専攻のスクーリングに参加しました。自分の専攻のスクーリングを翌週に控え、リポートはどれも手付かずのまま。余裕と言えば余裕である反面、都内在住という好条件ゆえに許されたことではあったかもしれません。また当日は私の指導教員による哲学概論の講義があり、それを聴講したいということでもありました。
 

以下、今回が初投稿なので自己紹介も兼ね、その日の印象を綴ります。
 

 私は政治や経済に対する苦手意識がとても強く、高校までの必修の社会科授業のなかで興味が持てるものと言えば、せいぜい日本史ぐらいでした。また研究やビジネスの第一線で活躍される方々と比較したとき、自分がまったくと言ってもよいほど新聞やニュースの報道に関心を持っていないことが、常に微妙なコンプレックスにもなっています。
 

 むろん、自分を他人に引き比べる必要などはないのかもしれません。自己の選んだ情報を行動に結びつけていくことが人間のあり方の一側面だとするならば、そこで一人の個人たる私がどのような情報を有用なものとして扱うかの問題は、他人の場合と比較してみても意味がないはずです。
 

 しかし一方では、判断や行動に至る過程を通じて、どのように情報と向き合うかということが、――あるいは情報と向き合った結果として自己内部に形成・蓄積された何かが――、新たに情報を獲得する際の取捨選択の基準ともなってくるはずです。したがって、例えば世の中のことに自分がどの程度の関心を持っているかというようなことがらを他人と比べる必要はないにしても、他者の存在によって自己の位置やあり方を知らされることの重要性については、今回、改めて思い知らされたような次第です。
 

 国際情報専攻は先生方も学生の皆さんもたいへんに勉強熱心で、そしてまたその基盤には、前向きな生き方をしておられるという現実があるのだと感じております。けれども私は現在、就職活動中です。今後は仕事の密度も時間的なことも自分に負担が少ない職場を選ぶことによって、勉強の時間が確保できるのではないかという思いもあります。しかしながら、その対極では、たとえ大変な仕事であったとしても、4年前に取得しながら生かすことのなかった社会保険労務士資格に研鑽を積めるような就職を果たしたい、という気持ちもあるのです。

 

 ここでも自分自身が非常に微妙かつ曖昧であり、実のところ、国際情報の先生方や学生の皆さんの中に自分が混じるということについては、甚だ自信が持てない状態にありました。
 

そうした折にあたった今回、ある先生が、これまでのご自身の体験や現在の状況を語られるなかで、「守りに入ったら、人間は醜い」という意味のことを言われたのが強く印象に残りました。その言葉を聞いたときの「私は今、守りに入っているのだな」という気づきは、とても鮮烈なものだったのです。
 

 前向きに生きている方々の刺激を多く頂戴し、学問的な面に限られない種々の体験知を耳にすることもでき、そして時には先生から課題を課され、それらの関わりを通じて自分自身が鼓舞されていることを強く感じます。人間や社会を対象に自分なりのテーマで研究しようとするとき、他専攻の領域が自分にとってまったく関係がないとも言いきれません。それ以前に、自分とは専攻を異にする方のお話をお聞きすることは、例えば研究テーマにおける問題設定のしかたなどにも新鮮なものを感じます。このようにして交わされた言葉によって、自分の研究テーマにもなんらかの触発を受けることがきっとあるはずです。
 

 私たちの総合社会情報研究科は通信制の大学院です。決められた面接スクーリングに出席すれば、それ以上は研究科まで出かけていく必要はないのかもしれません。だとしても、一人でも多くの学生の皆さんが、他専攻のスクーリングや大学院祭のような行事の機会を最大限に活用されて、通信だけではなく、対面による交流をも積極的に実現されることを望んでやみません。
 

机に向かって勉強することはむろん大事なことであり、大学院での勉強の基本でもあると言えましょう。しかしながら、たった半日を国際情報のスクーリングに参加するだけで、こんなにもたくさんの元気と力と勇気とを与えていただいたのは、私が特別なケースということでもないはずです。そしてこれらの元気や勇気が、これから勉強を継続していくための、必ずや確固たる土台になるものと信じています。
 

 時間的にも経済的にも決して少なくない負担を注ぎ込んで、いわば自分に投資するかたちで始めた大学院生活であることは、他の学生の皆さんも私と同様であることと思います。一人でも多くの方とお話ができ、お互いに勇気を与え合うことができるよう期待しています。よろしくお願いを申し上げます。