<「ケア問題ネットワーク」サークル紹介を行って>

 

 

人間科学専攻 3期生 白鳥孝子

 

 

 

2003.5.25.所沢で開かれた大学院祭で「ケア問題ネットワーク」の紹介を行いました。まだ、発足したばかりのサークル故、サークルの理念や今後の活動方針の紹介といった形になりましたが、院生の方や一般の方へのサークル紹介は、私にとって、とても貴重な体験となりました。また、サークルブースには、向日葵の花(ケア問題ネットワークのHPは向日葵がイメージされています)とともに会員が書いた「私のケア論」が貼られ、「ケア」サークルらしい優しい感じのブースになっていました。この院祭にサークルとして参加することで、会員の意識も高まりましたし、会員同士の結束も強まったと思います。何より、各会員が「私のケア論」に取り組むことによって、「ケア」ということを自分の問題として捉え、自分なりに真剣に考える機会をもつことができました。「ケア」という概念が抽象的な概念であるからこそ、この「私のケア論」を書くという体験は会員一人ひとりにとって今後の活動の上で重要な意味をもつと思います。発表後、一般参加の男性の方に、「ケアはこれからとても大切になると思います。是非、現場に目を向けて活動していってください。」という言葉をいただきました。この言葉を大切に受けとめ、今後も「ケア問題」に誠実に真剣に取り組んでいきたいと思います。

以下に、発表の概要を紹介します。

1.今、何故「ケア」なのか

「ケア」は英語で、直訳すると、「心配、気苦労、気がかり、不安、懸念、(細心の)注意、用心(深さ)、世話、介護、保護、管理、監督」などと訳される。今日、「ケア」という言葉は日本の各方面の文書・キャッチフレーズの中に溢れている。例えば、「アフターケア」、「ケアタクシー」、「ターミナルケア」、「在宅ケア」、「スキンケア」、「ケアマネジャー」などである。「ケア」が適切な日本語に翻訳されずに、「ケア」として使用されていることからもわかるように、ケアの概念はその核心が究明されないままに抽象的で曖昧なもののままに放置されている。今日、私たちの社会は、平和の問題、自然環境とヒトとの共生の問題及びいのち(生命)をめぐる問題等さまざまな課題を抱えている。私たちは、このような課題を読み解き、時代を切り拓くキーワードとして、この「ケア」を掲げ、「ケア問題ネットワーク」を結成した。

ここでいう「ケア」とは、さしあたり、《自分以外の人・物・自然に対する、そしてまた自分自身に対する配慮》という意味でとらえる。

2.「ケア問題ネットワーク」活動方針

 @    医療・看護・介護・福祉

この分野においては、日常的に「ケア」が使用されている。ケア=看護という意味での使われ方もしており、看護学を専攻する人達のなかには看護の中核に「ケア」を置く人もいる。介護や福祉においても、「ケア」という概念は着実に根をおろしてきている。

 A 教育・保育
例1)デイ・ケア・センター→保育園

例2)教育。教育とは、英語でもドイツ語でも、もともとは「引き出す」という意味の語源から発している。一人一人の子どもがもって生まれた資質や素質を「引き出す」ことである。教育とは、子ども一人一人の尊厳性や個性を尊重し、その生来の資質や素質に配慮し、資質・素質がすくすく伸びるように周到な注意を払うことに他ならない。このような意味で、教育も「ケア」の一種類である。

今の社会において、子どもたちが置かれている環境は必ずしも「ケア的」とはいえない。青少年の犯罪の増加や凶悪化は社会問題となっており、子どもに対する虐待も表面化し増加している。今の社会が育児や教育に対して、「ケア的」かというと、?である。今の社会は便利にはなったが、子どもを育てる環境は必ずしも整ってはいない。 

B 環境・食(食文化・食料援助)

「ケア問題ネットワーク」は、環境や食(食文化・食糧援助)の問題にもスポットを当てながら活動していく。人と人という枠ばかりでなく、自分以外の物や自然、つまり、環境に対しても「ケア」的にかかわっていく。

 「ケア」という語の用法を見る。第1に、環境保全を“Environmental Care”という語句で表現することがある。第2に、“Care International”という飢餓地域に対する食糧援助団体がある。
  最近、「スローフード」運動が脚光を浴びている。「愛」する人と「スローフード」をじっくり味わって楽しむことは、家族や恋人の健康・幸福に対する、そして自分の健康・幸福に対する「ケア」である。その安全な食材を私たちに与えてくれるのが自然環境である。残念ながら
今、世界的規模での自然破壊は進んでいる。人が人を世界の中心に据え、自分達の生存や利便性、快楽など人間欲望のために自然を支配してきたために、地球環境は深刻な状況を迎えている。人が人に対してだけ「ケア的」でいるのではなく、人以外の物、自然、環境に対しても「ケア的」に向き合うことが重要である。この問題に対しても、「ケア」がキーワードとなる。

このように、「ケア問題ネットワーク」は、広い視点で「ケア」の問題を捉え、可能な限り普遍的な視野にたって考えていく。要するに、「ケア問題ネットワーク」は、人間の「健康」,「福祉」,「幸福」,「尊厳」等に関わる諸問題を真剣に,根本から考える場である。従って、会員も、医療関係者や教育関係者といった特定の人だけで活動するのではなく、できるだけ広い範囲の人の自主的な参加によって、広い視点で共通の基盤にたって、「ケア」の根本的な基本認識に到達するように活動していく。

今後、「ケア問題ネットワーク」は、@読書会・研究会の開催、A公開講座の主催、外部講師との講演会・研究会の開催、B学外講演会の聴講、関連施設・機関への訪問などを行っていく。