学び――終わりのない営み

         
                                                      

                               人間科学専攻3期生    甲斐 修

                 

 社会人学生にとって,最大の課題は「時間の確保」ではないでしょうか。勉強の方法は人それぞれですので,自分の生活パターンにあった勉強法を早く見つけることが大切です。

 高校教諭の私は,企業に勤務されている方と比べれば,勉強をしやすい環境にあります。しかし,学校週5日制に伴い,平日に済ませなければならない仕事が増え,自宅に持ち帰ることも多々あります。帰宅して一息つけるのは午後10時過ぎというのが日常です。私にとって,それから勉強するのはかなり大変に思えたので,勉強は完全に朝型で行ないました。

 毎朝4時前に起床し,朝食までの約3時間を論文やリポート課題のための読書に充てました。さらに往復60分の徒歩通勤の時間も思索のための時間にしました。毎朝読んだ本の内容を歩きながら反芻することは,アイディアを再構築するのに効果的です。論文の構想やリポート課題の執筆は,主に土曜日・日曜日の午前中に行ないました。

 近隣に大型専門書店がない地方在住者にとって,参考文献は主に公共図書館,またはインターネットによる検索や購入が頼りです。また,自分の研究テーマの「高校生の進路意識」に関連する調査資料や文献は,上石神井にある日本労働研究機構の労働図書館まで出かけ,資料を分けていただきました。国立国会図書館が,平成15年1月から雑誌記事・蔵書の郵送複写サービスを開始しましたので,これから研究を進める方は大いに利用されるとよいでしょう。

 論文の構想と章立てが出来ても,仕事やその日の体調によって,執筆は予定通りには進まないものです。計画では11月末には論文を完成させ,12月のゼミの中間発表会に臨むつもりでした。しかし,12月中旬時点で出来上がっていたのは全体の4割に満たない分量でした。気が重い状態ながらもゼミに参加,ゼミ生のみなさんの発表や研究に取り組む姿に勇気付けられました。

 それを機に,一昨年の1月に大学院の受験を決意したときの自分の意志に立ち返り,年末年始にかけて追い込みに入りました。いざ集中すると,堰を切ったように文章が出てきました。これまで筆は進まないながらも本や資料をくり返し読み,論文の構想や展開について毎日考えつづけていたことが効を奏したと思われます。

 ところで,理学部出身で卒業研究はゼミ形式であった私は,学生時代を通して論文なるものを書いたことがありません。本大学院で課される3000―4000字のリポート課題でさえ,入学当初は自分に書けるのか不安でした。しかし,論文の書き方に関する本や大学受験生向けの小論文参考書を数冊読破することで,その不安は解消されました。

 指導教授の北野先生からは,リポート課題のような短い文章で練習を積み重ねることが,論文作成力に繋がるとの助言をいただきました。また,リポート課題作成時には,社会哲学特講の佐々木先生による『レポート作成の手引き』を常に参照することで論文執筆の基本形を学びました。結局,1年次からのリポート課題に対して,基本教材や参考図書を読み込んで自分の頭で考察し,文章を少しずつ練り上げていくことが,修士論文を書く上での大きな力になることがわかりました。

 論文を書くには,このように地道な努力が必要とされます。それだけに完成したときの喜びと充実感は大きいといえます。また,論文が完成しても,その道筋に新たな疑問や問題点の発見,そして反省があります。それらが次の学びへの動機になります。学ぶことは,まさにネバー・エンディング,終わりのない営みです。そのことを実感できたこの2年間は,私にとって至宝の時間というべきものかもしれません。

 最後に,論文提出締め切り間際に学んだ教訓を二つ。

@ 論文本体が完成しても,読み直しや文字の誤変換の修正など,納得して仕上げるまでに最低1週間はかかります。提出締め切り日から逆算して執筆計画を立てる必要があります。
A ワープロソフトには「文末脚注挿入」や「目次のページ番号挿入」など,論文作成に便利な機能があります。このようなWordの基本操作は,時間に余裕のある時期に習得しておく方がよいと思われます。

 ご指導いただいた先生方,北野ゼミの皆様,大学院事務課の皆様,この場を借りて御礼申し上げます。