「なんとかなるさ」


                                                      

                              人間科学専攻3期生 渡邊富子

                   
 研究計画は順調に進んでいるように思っていた。2001年12月ころまでは。予備的データも集め始めていた。でも、そのころからもやもやとした気分になってきた。なんか面白くない。もっと自分にとってリアリティのある研究がしたい。こんな理由で、研究テーマに悩み、教授にお伺いをたててみたら、「自分がおもしろいと思えるものをやりなさい。」という返事。その言葉にはげまされ、研究テーマの変更を決めたのが、3月。それからが大変だった。実践の中で信頼性をもった実証研究をどうやって行いうるのか。だんだん無理かもと思い始めたが、もともとのお気楽な性格が幸いして開き直って進めた。

 教授の指導を受け、いささかの無謀は承知の計画をたて、「実践研究ということでいいでしょう」と教授の言葉を得てデータ集めにかかった。職場の許可をとり、予備的にデータをとり、計画を修正し、また、データをとる。その間に指導教授から9月の中間発表会で発表してはというお話があった。「データもまだなんです。」と腰がひけたが、ゼミ仲間と、「できる所まででいいからやろう」と発表を決めた。これがよかった。ここでできる限りまとめておいたことが、なんとか修士論文を完成させた原動力になったと思う。  

 その後の提出までの日々の緊張感はちょっと辛かった。急に何がおこるかわからない仕事や家事もしながらの研究生活は、なかなかスリリングな日常だった。何とか提出までがんばって、副本を提出したのもつかの間、面接の準備、面接で問題点を指摘され、その部分の訂正。そして気力も限界に近づいてやっと正本の提出。終了。

 法学部の出身で、心理学研究はまったく未知の領域。どこをどうしていいかわからなかった。そういうときに役に立ったのは、先行研究を読むことだった。どう研究をするのか、どう書いたらいいのかなどは論文を読み、自分の研究に近い論文をなぞり、考え、教授に指導を受け、修正していった。

 我ながら未熟な論文だとは思う。しかし、この論文は私に、研究の面白さ、自分の仕事の面白さを教えてくれた。共に学ぶ仲間とも知り合えた。これから一生楽しめそうだ。

 思いばかりが先行する生徒をなだめながら、指導して下さった教授のご苦労は大変なものだったろうと思う。ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。