水から学んだこと

                                             

                                 文化情報専攻3期生 安田 保

                   

 先日『水は答えを知っている』という本に出会った。長年水の研究をしている著者の江本勝氏は「雪の結晶は、二つとして同じものはない」という一文をヒントに水の結晶写真を撮ることを思いつく。水道水は消毒のために塩素が使われているので、きれいな結晶の写真は撮れなかったが、自然水はどこの土地のものであってもきれいな結晶を見ることができた。次に水に音楽を聞かせて結晶を見ることを試してみると、美しいクラシックの曲を聞かせた水は美しい結晶を創るが、怒りと反抗の歌詞の曲は結晶をばらばらに壊れた形にしてしまった。これは音の振動が伝わり、水の性質を変えてしまうということが考えられるが、著者は次に水に言葉を見せる実験を試みる。ガラスのビンに水を入れ、言葉を書いた紙を貼り付けてみる。「ありがとう」という言葉を見せた水は、六角形のきれいな結晶を創り、「ばかやろう」の文字を見せた水の結晶はばらばらになる驚くべき結果があらわれた。同様に「しようね」という文字を見せた水は整った結晶となり、「しなさい」と命令形の文字を見せた水は結晶を創らなかった。水が言葉の意味を理解することなど考えられないことだが、この実験結果からはそう考えざるをえないものであった。

 日本語以外の言葉でも「Thank you」, 「多謝(中国)」、「Merc(フランス語)」、「Danke(ドイツ語)」等「感謝」の意味を持つ言葉を見せた水はきれいな結晶を創った。反対に人を傷つける言葉に対しては結晶を創らなかった。日本には「言霊」という思想がある。「縁起でもないことを言うな」と実現して欲しくないことを口にすることを憚るように、我々は半信半疑ながらも、言葉には魂が宿り、それを発することで物事を動かすパワー・エネルギーがあることを知っていた。

 著者はこのエネルギーは「波動」であると説明している。量子力学など科学の世界では、物質とは本来、振動にすぎないということが常識になっている。すべての物質は原子核のまわりを電子が回っているだけで、電子の数と形によって、原子は固有の振動をもつことになる。水はすべてのものの振動を忠実に写し取り、結晶という形で我々に具体的にそのイメージを表現する。

 言葉の違いがあっても世界中の「感謝」を表す言葉がきれいな結晶を創るのは、大自然の摂理の基本が「感謝」であるためである。人を傷つける言葉は、本来自然界には存在せず、人間が創りだしたものであるため、その振動は不自然なものとなり、水も結晶を創らないのである。

 人間の体の70%は水分である。結晶の撮影実験から分かるように、水は周りの環境に素直に反応する。我々がポジティブな考えを持てば、体内の水分もそれに反応し、物事は万事うまく進む。しかし、ネガティブな考えを持つとそうは行かない。他人に対しても、やさしい言葉、感謝の言葉を絶えず投げかけることにより良い人間関係を保てるのである。

 私にこの本を貸してくれた青年は若者に人気のミュージシャンである。彼は以前から決してネガティブなことを口に出さず、常にポジティブに物事を考える。「俺って嫌いな人がいないんですよ。いつからそうなったのかは分からないが、自分の周り、世の中が良くなったのかなぁ」と言い、「でも、今また戦争をすると言っている人達がいるんでしょう。レベル低いよね」とサラリと話す。
彼の言う通り、人間は21世紀になってもレベルの低い争いを続けている。我々の体に流れる水には国境も、人種も言葉の違いも無いことに気付いていないのである。世界中の宗教が水を聖なるものとしているのは、水の普遍性を意味しているのであろう。我々はそれに気付かなくてはならない。

 彼の曲にはネガティブな表現は無い。彼に影響された世代がこれから新しい時代を創って行くであろう。そして彼の考え方は特別なものでは無く、スタンダードになって行く。

 すべての生あるものがその「生」を享受し、全うしうる調和を創造する日はそう遠くは無い。ポジティブに考えれば、争いの無い世界の実現も可能である

●江本勝著『水は答えを知っている』 サンマーク出版、2001