CAIと外国語〔ドイツ語〕学習の可能性




人間科学専攻4期生 元木芳子

CAIとは、”Computer-Assisted Instruction” の略です。コンピュータを使って学習するためのプログラムで、外国語に限らず、いろいろな種類の教材があります。

外国語の学習は従来、テキスト、カセット・CDの音声教材、さらにビデオなどの映像教材を併用しながら学習することが一般的でした。最近、英語のTOEFLやTOEICなどはインターネットWebで模擬試験を受けたり学習できるようになり、本試験もTOEFLではインターネットで受験できたりします。またCD-ROMを使って、コンピュータで外国語を学習するプログラムもたくさん販売されるようになり、「コンピュータで外国語を学ぶ」ということが珍しくなくなりました。

私は大学の外国語教育研究所というところに勤めていて、主にドイツ語の視聴覚教材を作っています。また1992年からドイツ語のZD(Zertifikat Deutsch) ドイツ語基礎力検定試験のための講座を学生向けに開講し、その中でCAIを使った語彙・文法学習を指導しています。10年前には、まず学生にコンピュータの電源の入れ方から教えなければならず、彼らはコンピュータを扱うだけでも苦労して、内容を楽しむまでに時間がかかっていました。ところがここ数年は日常的にコンピュータを使うことが多くなり、電源の入れ方から教える必要がなくなり、マニュアルを作って渡せばどんどん学生自身で進められるように変わってきました。学生たちに聞くと、ゲーム感覚で単語や熟語を学べるのがおもしろい、という感想が返ってきます。私たちが使っているプログラムは例えば次のようなものです。

1)     左側と右側にそれぞれ10の単語が縦に並び、左のグループと右のグループから、同義語や異義語を選択して合わせていく、終わると正解率が呈示される。(難易度は様々)

2)     自分で正解文章を作れる予想時間を事前に設定する。制限時間までカウントダウンが始まり、時間内にドイツ語の文章を書き上げる。書き終わらなければ ”game over”。

3)     カテゴリー別の枠と単語のグループがあり、カテゴリーにあった単語を枠に入れていく。かなりの語彙力が必要で、似た意味の単語を数多く知らないと入れられない。

4)     バラバラに並べられた単語の語尾を正しく活用させ、正しいフォームの手紙を作る。語尾変化が違っていたり、語順が違うとブザーが鳴って文法説明がドイツ語で表示される。

ここでは全部をご紹介できませんが、例えば名詞なら野菜、果物、家具、動物、植物等々に分かれ、形容詞や副詞、動詞などグループごとに別のプログラムになっています。それぞれ、終わるごとに自分の正答率が表示され、自分がどの程度できているかわかるようになっています。このほかにも、いろいろなパターンの練習問題があり、毎日1時間程度やっても、全部制覇するには何ヶ月もかかると思います。これらのプログラムは自習用の教材で、検定試験用に語彙力・文法力アップのために使用しています。また自作のCAIプログラムの開発も始めています。近い将来には授業用の教材とリンクさせ、事前に自習用CAIプログラムで予習したことを前提に、授業を進められるようにしたいと考えています。またWebを利用した授業用コンテンツも検討を始めています。今は開発するためのソフトもいろいろ出ており、Wordを使えれば各国語の教材を簡単に作ることができるようなものもあります。プログラムを書けない先生方にも独自のCAI教材を作ることができるようになり、アイデアがあっても形にできないと思っておられた方でも「結構使える」教材が作れます。

 単語帳を作って単語を覚える、というのは携帯できていつでも、どこでも見られるという利便性があり有効な手段ですが、読めない単語は覚えられないということもあります。コンピュータでは単語をクリックすると、正しい発音が音声で流れ、またクリックすると意味や使い方を表示するようにもできる、という便利さがあります。またゲームのように解答していくことに、学生自身が面白がって自主的に取り組むという姿勢があります。日本語の本もあまり読まない学生であっても、コンピュータで遊びながら(?)できる外国語学習は、それだけでは完全ではありませんが、補助的に使うなどの使い方によっては楽しく学べ、モチベーションを持続できると考えられます。「できないときはかなり悔しい」とか、「できたときは達成感があった」と学生たちは言っています。何より、アンケートをとると「CAIが楽しかった」、「もっと早くからやりたかった」という声が多いことは、今後、外国語学習にコンピュータを利用することが、さらに有効な手段のひとつになるのではないかと考えられます。