マングローブ林の上に住む人々
〜マレーシア・スランゴール州クタム島〜
国際情報専攻1期生・修了 斎藤俊之 |
水上で全面板張りの村、村内の足は車やバスはない自転車であると聞いてそんな所があるのと信じられないかもしれない。マングローブ林の島を開拓して造られた村が実はあるのです。その名はクタム島(吉胆島)。日本語に訳すと「カニの島」という。そう、名前の通りこの島の名物は海鮮物。海老、カニ、魚が資源である。さらに、この島に干潮時に着くと土の上にはなにやら小さい生きものが所狭しとごそごそと動く。なんだろうか。最初はよくわからない。よく目をこらしてみるとなんとにくいことか「カニ」の出迎えに会うのです。
ここの島は、マレーシア最大の港町クラン(KELANG)の港から連絡船ジェットフェリーで50分程乗った所にあります。
もう少し、詳しくアクセス方法を記そう。
KL(クアラルンプール)からまず、「クラン港」まで国鉄KTMの列車かバス又はタクシーで行きます。
KTM列車を利用の場合には「PORT KLANG駅」で降りると目の前がこのジェットフェリー乗り場です。終点駅なので寝過ごす心配はありません。クアラルンプールからの所用時間は約1時間30分。
バスでの利用の場合は、チャイナタウン地区にあるLRT「PASAR SENI」駅の前にあるクランバスステーションからクラン行きが出ています。
バスも終点のバスターミナルまで乗車すれば良いです。終点のバスターミナルから右手、港方向に歩いて10分程でフェリー乗り場に着きます。
クアラルンプール市内からの所用時間は約1時間、料金は、3マレーシアドル(約96円)。10分から20分間隔で発車しているので便利です。途中、クアラルンプールのベッドタウンでもあるクラン(KELANG)の街の中心地に寄ります。興味があれば立ち寄って見てください。非常に活気があります。
フェリー乗り場に着くと屋根付きの桟橋があります。クタム島行きのチケット売り場はありません。(インドネシアへ船で出発するカウンターがあります。)クタム島行きは船内に着席後、係員に支払う仕組みなのです。料金は5.3マレーシアドル(約180円)。降船客が降り終えたら乗りましょう。船内にはテレビも完備され、なかなか凝っています。
写真1.ジェットフェリー
警笛後、ジェットフェリーはクラン港内を出、正面に見える木で覆われた島方向へ進みます。島に接近して行くと初めて、それが独特の根をもつマングローブ林であることがわかります。マングローブ林で覆われた島の間幅500メートル程の所をフェリーは進んで行きます。ちょっとしたジャングルのクルーズ気分です。
写真2.マングローブ林に覆われた島を見ながら
40分程経つと水上に浮かぶ家屋が見え始めます。SHELL石油の看板を掲げた水上ガソリンスタンドが出迎えるとクタム島の玄関口桟橋に接岸までわずかです。
写真3.クタム島の玄関 フェリー乗り場(自転車も並ぶ)
80メートル程の長い桟橋を歩き終えると、目の前の消防局の門が出迎えます。この門を抜けるとメインストリートに突入です。行き交う自転車は、抜き去る歩行者へチリンチリンとベルを鳴らします。車やバスはありません。ここでの唯一の乗り物は自転車であります。どこを歩いてもほのぼの、のんびりとした雰囲気は落ち着きます。耳をすませば鳥のさえずりが、船の行き交う音が聞えます。
写真4.消防局がお出迎え
100メートル程のメインストリートを抜けると神社、そして通りを1ブロック超えると幼稚舎、学校、理髪店、銀行、郵便局のある通りに出ます。田舎の町内会のようで住民は隣近所どころか村全員と顔見知りだろうことは容易に察せられる規模です。
写真5.この島のメインストリート
実は、この島は、周りの島々がマングローブ林で覆われている通り、ここもマングローブで覆われていたといいます。しかし、漁民である華人がここに水上小屋を立て移住し始めたことがこの村の始まりであり、杭の上に建物はもちろん道路を張り、施設を造り代々引き継がれ、村として発展してきているのだそうです。華人のパワーはしたたかですごいと実感させられます。
迷って入り込んでしまった、民家の玄関前では、バケツ半分ほどの量の桜えびより2周り程大きい海老を洗い、日干しする作業風景に出会いました。
写真6.小海老の天日干し
写真7.学校
写真8.民家居住地
ゆっくり40分程で主な地点を見て周れる村です。社会生活の施設の点在位置を追うと消防、警察を島の玄関に、銀行、郵便局、八百屋、雑貨、食堂を中心部にそして少し離れて学校、神社、居住地を置くという配置であることに気づきました。
美術館や博物館といった特別な観光施設が何かここにあるというわけではありません。この地を表現すれば、都会の喧騒から離れ、漁業を主な生業とする小さな村の空間に身を置き、潮の満ち干きを感じながらのんびりと時間が流れるのを楽しむ地とでも表現出来ましょうか。
そうです。ここに訪れた人々は誰でも、この空間そのものが生きたミュージアムだと実感するに違いありません。
('02/06/15現地)
(終)
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