ロバート・F・ケネディ奨学生に選ばれて
国際情報専攻3期生 落合仁子 |
1. いい成績で卒業するぞ!
「一番を取りたいヤツは、いるか?」。
昨年、入学して間もなく5月の軽井沢ゼミ合宿でのこと。日中の長い論文指導を終えて、ホッと一息、ビールをゴクリと飲み干した夕飯の時、論文指導教授の乾教授が、新入生である三期ゼミ生に聞いた。大学院で最優秀の成績を取りたいか、との先生の質問に、6名の三期ゼミ生から二人だけが、手を挙げた。私ともう一人だけである。
私は、大学院では、絶対にいい成績で卒業するんだ、と密かに思っていた矢先の出来事であった。学部のときは、商学科をなんとか卒業した。好きなパソコンプログラムの科目は、熱心にやっていたものの、肝心の会計学は、さっぱり出来ないまま卒業してしまった。卒業後、簿記学をおさらいし、学部でサボッてばかりいたことを心底悔やんだ。
良い成績を取る方法を教えてやる、と乾先生は言い、先生のアドバイスは、「早くに仕上げること」という簡単なものだった。科目レポート、論文も、早くに仕上げて、見てもらうことを薦めた。締切迫って、送っていては、いいものは書けないぞ、とビールをもう一口飲みつつ、教えてくれた。
この実に簡単なアドバイスは、後で大きく役立つことになった。
大学院での科目は、全てレポートにて、採点される。レポートというが、論文を書くためのワンステップと考えられ、考え方はもちろんのこと、注などの記述の仕方も厳しく採点された。
締切よりも、少し早めに全レポートの草稿を提出したら、山のような指摘事項が翌日に返ってきた。学部時代、ノホホンと過ごしたツケが回ったらしく、注のつけ方が全くわからなかった。2回目の草稿も、随分、指摘事項だらけであった。締切ぎりぎりまで、レポートとにらめっこするはめとなった。
負けてはいられない、その気持ちだけは、いつも持ちつづけて一生懸命やってきた。
2. 朋友との出会い
大学院での生活は、レポート、論文だけではなかった。
大学院には、ディスカッションルームという電子掲示板があり、院生がそれぞれ想いをぶつけ、投稿する。入学当初は、模様眺めをしていたが、勇気を奮って投稿してみたら、一人、また一人と、反応があった。
ここに投稿することで、サークルを作ることができ、年代様々な方と親交を深めることとなった。また、他専攻である文化情報専攻、人間科学専攻の方とも、知り合いになることができた。
我々の大学院は、社会人大学院で、社会的立場は、それぞれ違う。また、専攻をまたがると、研究内容も、全く違ってくる。しかし、めぐり動く社会、学問に、好奇心を持ち、研究したいという共通の姿勢が、親交を深めさせてくれたのだと思う。
自身の興味の幅を広げてくれる友に、常に刺激を感じている。
3. アッタカ大学院
日大の通信制大学院は、出来たてホヤホヤの大学院である。今年四期生が入学し、修了生は、2回しか出ていない。
この出来たばかりのインターネットを主として用いる通信制大学院は、人の「アッタカ」を感じる大学院である。文字、音声伝達だけに頼りがちなドライな印象のインターネットであるが、この大学院では、インターネットで人との交流を深めている。
数多くの学生を抱えながら、メールなどの返信を常に欠かさない先生方のご努力が「アッタカ」を感じさせるのである。
大学院では、年に数回より、院生と会うことができない。遠方にいたり、仕事が忙しかったりと会って話をする機会は、少ない。それだけに、メールでの交流がフォローをしてくれる。
スクーリングでは、知的好奇心をくすぐる講義に魅了されつつ、友との交流を深めさせる。国際情報専攻のスクーリングの主担当である近藤大博教授は、素晴らしいエンターテイナーであると思う。
4. 成長のモト
大学院で受けた刺激は、幅の広いものである。様々な立場で、また、世代を超えた交流に、多分野にわたって、考える機会を頂いた。
無論、大学院の目的は、良い論文を書くことである。しかし、まだ、若年である私にとって、幅の広い分野への興味を持ち、深い理解を示すことは、論文をより良いものへと導いてくれる成長のモトとなっている。
成長のモトを、多くの方から頂いて成長した私に、ロバート・F・ケネディ奨学生というビッグなご褒美が待っていた。今年の7月のことである。この奨学生は、成績、人物、共に優秀な学生に与えられると書かれてある。いい成績で卒業したい、そう思っていた私の願いが、形となり、本当に嬉しかった。
小さなタネであった私に、多くの成長のモトをくださった多くの皆様に心から感謝している。小さなタネは、芽を出し、少しずつ成長している。これから、風が吹くときも、雨が降ることもあるけれども、大学院でもらった成長のモトで、強く生き抜いていきたいと思う。
来年3月卒業に向け、良い論文を書き進めたい。
奨学生の授与をしてくださった近藤教授の微笑みは、また一つ、自信という成長のモトを私にくれたのであった。
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