「大学はどこへ行く」


石 弘光講談社(現代新書)2002年2月20日発行660円+

  「改革期の大学運営 〜大学内部の構造改革〜」
  一ツ橋大学の学長である、筆者が、国公立大学の独立行政法人化を中心に、今後の大学教育の在り方を提言している。大学改革をテーマにした書物は、たくさん出版されているが、 新書としては、非常に幅広く、全9章の中で最近の話題をピックアップして分かりやすく説明されている。  大学事務職員としての読み物としても、大変参考になるので、手にとって 見た。以下にごく簡単に本書のエッセンスを紹介したい。
  私の研究テーマは、少子化時代における大学運営の在り方〜メディア広報を中心として〜であるが、一人でも多くの学生を大学の引き入れるためには、いくつもの魅力を持っておく 必要がある。例えば、資格取得サポートの充実・クラブ活動で優秀な成績を収める部がたくさんあること・有名教授がいること・学生のニーズをうまくとりいれることができるサービ ス体制があること・キャンパスがクリーンであることなど、あげるとキリがないが、その自慢を多く持っている大学こそ、これから生き残れる大学と定義されている。  当時の大蔵省が、かつての護送船団方式で、銀行を庇護してきた歴史と同じく、文部省も国立大学をそうしてきた。そのシステムもまもなくシフトし、国立大学だからというおごりは、通用しなく なる時代が到来した。いわゆる、「大学の構造改革」である。
  大きく、「大学改革のゆくえ」と「国立大学独立法人化と大学連合」、そして「21世紀の大学と学生」という3つの大項目の中に、諸々の問題を細かくかつ詳細に述べている。
  特に、第1章「大学競争・選別の時代」第4章「独法化(国立大学法人化)とは何か」で、今日の大学改革の問題点を指摘している。大学の構造改革として、遠山敦子文部科学大臣 が発表した「遠山プラン」は、教育界に大きな疑問を抱かせた。
  ぬくぬくと育ってきた国立大学にとっては、「学問も含め我々を取り巻くあらゆる事象に競争原理は必要である」というテーマを忘れてしまっていたのである。そこからどう、対応 していくのか?何をどうすべきなのか?
  学長自ら出版する例は、あまり珍しくはないらしいが、ここまではっきり書くのは珍しいらいい。紙数の関係で詳細については紹介できなかったが、今の大学教育を見つめなおす、よい資料となれば幸いです。
                       

国際情報専攻4期生 平岡君啓