「修士論文を書き終えて」



人間科学
専攻
清宮節子



この寄稿を書き始め、題の中の「書き」を入力しようとしたところ何度も「欠き」と入力してしまい、やはり、修士論文がまだまだ「欠く」ことが多い不十分なものだったのを象徴しているのかなと改めて思いました。

私がこの修士課程を志したのは、本当に偶然でした。たまたま新聞記事を見た夫が勧めてくれたのです(しかも締め切りぎりぎりでした)。しかし、このような勉強の機会を無意識に待っていたのではないかと思います。

私は、保健婦として10年以上の経験を積んできた中で三度の転職を経験しました。その職場ごとに仕事や職場の同僚から得た多くの経験は、自分を成長させるのに十分役立つものでしたが、実際の仕事から得られるものは、雑多な情報の集まりになってしまっているように思えていました。自分のこれからの生き方を考えたとき、「何か自分の在り方の根拠となるようなものが欲しかった」というのが、今回大学院を志した理由ではないかと思います。いま卒業を目の前にして、この根拠を手に入れたとは言えませんが、自分が進むべき道がおぼろげながら見えてきたような気がします。

修学中は、退職されて時間的余裕ができた方とか、専業主婦の方をとてもうらやましいと何度も思っていました。確かに自分の場合、夫の単身赴任、小学生子ども二人の世話、また仕事では機構変更のためのごたごた(ついには修士論文の追い込み時期の出向)など、公私共に忙しい毎日でした。

しかし私の場合、自分の意志に関係なく外部から要求される仕事が忙しくなればなるほど、自分のための活動を多くしていくことは、精神衛生上とても良いことと感じました。体力的にはかなり負担でしたし、家族に負担となったことも多かったと思いますが、それ以上の充実感が得られました。

そして、もっともありがたかったのが、メールでの先生のアドバイスです。ずうずうしいくらいに何度も何度も送りつけられる未熟な草稿を迅速丁寧にご指導していただきました。指導教授には御礼の言いようがないくらいに助けていただきました。ありがとうございました。また、23ヶ月に1回のペースでもたれた集まりでのゼミ仲間とのやり取りは、私にとってはとても楽しみでした。2年間は本当に短い期間でした。皆さんありがとうございました。