「感謝、達成感、そして反省の今日この頃」

人間科学専攻 川原律子

著者紹介:
都内某心療内科にて臨床心理の仕事をしています。2年間の勤労学生もそろそろ終末を迎えようとしています。難関の選考を潜り抜け、頂いた学生証に感動したことが懐かしく思い出されます。1年目はレポートに追われ、提出期限が年間行事の目安となりました。修士論文の提出を終えた今、これから研究に入られる方々の何かお役に立てればと思い、今回投稿させて頂きました。


 私の修論テーマはコラージュ作品に見られる人物の表情表現に関する研究「表情スケール」制作の試み ―心理テスト「EPPS性格検査」との関連による― というものです。心理療法の一技法に、コラージュ療法というものがあります。これは、雑誌やパンフレットの切抜きを画用紙に貼り付けて作品を制作するものです。言葉での表現とは異なった、心の中からの表現が作品となって表されるのですが、この作品をどのように理解したらよいのか、また、制作者の状況をどのように理解したらよいのかという点につい現在は研究段階にあります。そこで、人物の表情をスケール化した「表情スケール」を制作することにより、コラージュ作品の理解・評価・解釈と制作者の心性を理解する一助としようというのが、本研究の目的です。

 おかげさまで何とか研究を終えることが出来ましたが、修論制作にあたり自己の反省を基に、気になりました点を以下のようにまとめました。

1.データ収集は早めにスタートする

研究の内容は、すでに決まっておりました通り実施することとしましたので、1年目からデータ収集を始めました。私の研究では、コラージュ作品と、心理検査の施行が同時に出来ることが1つの条件となっておりましたので、臨床場面でこの条件が可能な症例に限りがあることが問題でした。私の勤務する心療内科と、他科のクライエント、および対象群としての非受診者などデータ数を確保することに時間を費やしました。ぎりぎりまで収集しつづけましたが、集めたデータの中には今回は使えないデータも含まれており、充分な対象数とはなりませんでした。従って、収集はなるべく早くスタートすることと、対象数は予定例数の20%位は多めに設定することが必要と考えます。

2.統計の知識が重要

データが揃ってようやく研究本番となった時、統計についての知識不足を実感しました。これまで専門的な統計学を学んだことが無く、最低限必要な知識をあらためて学びながら進める研究は失敗の連続でした。計算結果だけでなく、散布図で見ないといけないとご注意を頂いていたにも関わらず、やっと得られた相関係数に基本的ミスを発見し、嘉部教授にお詫びを申し上げた時には血の気が引いて行くようでした。これは私の知識不足によるものではありますが、出来ましたら統計の科目を設けて頂けることを大学サイドにお願いしたいと思いました。

3.統計ソフトについて

大学から貸与されているコンピュータにはエクセルが入っていますが、統計処理を行うには充分なソフトとは言えませんでした。バージョンアップを試みましたが私のPC本体が不安定なためか上手くいかず、結局SPSSを入手し乗り切りました。これも締め切り間近になりようやく入手出来たもので、エクセルからデータを入力し直すなど時間がかかってしまいました。個人でこのようなソフトを入手することは大変困難ですので、使用期限付きであっても、貸与されることが可能でしたら皆さんも助かったのではないでしょうか。

 

以上思いつくままに並べましたが、どれも実感した事柄です。

それでも、なんとかここまでたどり着きましたのは、本当にお世話をお掛けいたしました嘉部教授、レポートでお世話になりました諸先生方、2年間サポートしてくださった事務局の皆さん、そして共に励まし合い、ご意見をくださった嘉部ゼミの皆さんのおかげです。ここに、心より御礼申し上げます。