「やはり行ってよかった三重県庁
(近藤ゼミ・行政研究会共催三重県庁訪問 報告)」







国際情報専攻
 内山幹子

 今年2月15日、近藤ゼミ・行政研究会メンバーで三重県庁を訪ねました。やはり、一見は百聞にしかず、実際に現場を見て、現場の職員の声を聞くことにより、三重県行政改革について文献・資料では学ぶことのできない、より多くのことを学ぶことができました。翌16日には名古屋で、行政研究会設立総会を行いました。今後、同研究会の活動が益々活発になっていくよう希望しております。私にとっては、天候に恵まれ、非常に感動の多い二日間でした。感動を文字で伝えることは難しいですが、多くの方にお伝えしたく、ここに報告いたします。

 ご指導いただきました近藤教授と、三重県庁訪問をアレンジしていただきました三重県政策開発研修センター倉田主幹に感謝いたします。

 

三重県庁訪問参加者

 日本大学大学院 総合社会情報研究科 国際情報専攻 近藤大博教授

 安田 守、亀田 満、小宮山 泰子、松村 泰夫、内山 幹子、関口 はつ子

(以上6名、国際情報専攻三期生)、荻山 修司、村上 恒夫(以上2名、同専攻二期生)、作宮 洋子(人間科学専攻三期生)、添谷 進、世良 清(以上2名、卒業生)、その他1名

 

日 程

2月15日(金)

11時〜12時 北川正恭知事訪問 

 1315分〜 三重県政策開発研修センターでの講義

「三重県の市町村合併の現状と課題について」

          市町村課地方分権・広域行政推進室 喜多主査

   「県民の声相談室の概要」

          県民の声相談室 神生室長

   「三重県の情報公開への取り組みについて」

情報公開室 河井マネージャー 

 16時〜    県庁内見学(生活部、NPO室)   

夕方 名古屋に移動し、懇親会

2月16日(土)

  午前 宿泊先ホテル内で、行政研究会の設立総会・近藤ゼミ

  午後 名古屋城、徳川美術館見学

 

「黒船」北川知事

 北川知事に初めてお会いし、まず感じたのは、目がとてもきらきらしていること。そして、人柄あふれる、好感を持たれる話し方。三重県の行政改革はこのお人柄だからこそできたのでは、との印象を持ちました。

 お話の中のキーワードは、議論と情報公開・共有。職員その他の関係者と徹底的に議論をするとのこと。三重県の行政改革の基本は、納税者の視点に立った改革であるとして、その基本的な考え方を生活者起点と決めたのも、かなりの議論を経てのことだったそうです。この概念・ビジョンをしっかりさせることができたから、何かを考える時には。この原点にもどって考えることができるというのです。(注:県政の目標「生活者起点の行政を担う21世紀の県庁づくり よりよい行政サービスを効率的により速く提供」)

 北川知事は自らを「黒船」と呼び、三重県の行政改革をむしろ革命であるとしています。外圧的に職員が改革について理解しなければいけないというのです。しかし、改革の実施にあたっては、職員と徹底的に協調しようとしているとのこと。職員提案を募り、結果として計83件に20億円を費やしたのです。労働組合との関係は緊張のあるパートナーシップと呼び、組合側との議論は情報公開し、マスコミも入れています。この方法で、組合側が反対していた職員の各種特別手当撤廃を実施することができたのです。

 三重県での改革の第一段階として「さわやか運動」(注:「さわやか」は「 ビス」「かりやすさ」「る気」「革」の頭文字をとったもの)が実施されました。第二段階として、今年4月よりピラミッド型の職員体系をフラットにするため、マネージャー制が導入されます。職員の業務評価は、上司が部下を評価するのではなく、知事が提示するビジョンをもとに部長がミッションにした、そのミッションの達成度によって評価されるべきであるというのです。

 日本の改革のために、北川知事は320万人の全国の地方自治体職員が目覚める必要があると考えています。最後に北川知事はとてもすばらしい言葉を私たちにくださいました。

「小さなことから始める勇気 それを大河にする根気」

 

丁寧に説明いただいた三重県の取り組み 

 市町村合併に向けて

 昨年5月に市町村合併支援本部が設置され、12月に支援方針がまとめられました。平成17年1月の合併実施に向けて、現在、県民向け討論会など各種PRが進められています。

 

さわやかな相談窓口

 相談室の主な仕事は、窓口案内と意見・苦情の受付(1年間に1,600件)です。目標として、「早急に検討いたします」などといった役所用語の使用を見直し、2週間以内という回答期限を守ることを目指しています。県民出前講演・トークでは現在230のテーマが掲げられています。案内窓口ではさわやかな対応を心がけているとのことでしたが、当日の朝、私が津駅の改札口を出る時に駅員さんに「おはようございます」と言われました。県庁での取り組みが県庁枠内から拡大しているのかもしれません。

 

情報公開

 三重県では、情報公開制度は昭和63年に始まり、その年の文書開示件数は220件でしたが、その後増加し、昨年には38,299件にまでなりました。河井さんは、情報公開の仕事における苦労話とともに、印象的なことを言ってくださいました。以前は、何か始める時に必ず他県の例を調べなければならなかった、しかし、今は、他の自治体が三重県のことを学ぶために、どんどん聞いてくる。職員はとても誇りに思っていますと。

 

やはり違う県庁内

 県庁8階にある生活部を案内していただきました。他の役所と違うと思われる点を上げてみます。

     エレベーター内の県庁案内は手作り 

ワープロで作成・印字されたものが張られていました。組織の改編のたびごとにお金をかけずにすませるための工夫でしょう。

・ 少し暗めの廊下の照明

  書類を読む必要のない空間の照明は少々暗くてもよいという、省エネのための工夫

     各部にある案内カウンター

各階で来訪者がうろうろする必要はありません。常時、案内役の職員がカウンターにいます。

     窓に向かって斜めにある机、職員が座る席は自由

職員間の上司・部下といった関係にこだわらずに、自由な発想を大切にしようとする取り組みの一環です。職員にはパソコンと書類入れ移動式引出しが与えられています。 

     ファイル用の棚がない、コピー機が少ない

紙の消費量を減らす工夫です。ファイル用の棚は、職員の作業机から離れた別室の中にあり、取りに行くには時間がかかります。このように、紙を使うことを面倒にさせることにより、ペーパーレス化が計られています。

     ごみ箱の代わりに資源箱

捨てる物は、資源分別箱に入れます。何をどこに入れるのか細かく書かれたシールが箱に張ってあります。

 

利用者に親切な施設づくり

昨年4月に「みえ県民交流センター」は、津駅に隣接しているビル(アスト津)の

3階に開設されました。同センターには、みえ市民活動ボランティアセンター、県青少年交流センター、県国際交流センターの3つの施設があります。NPO室職員はボランティアセンターで、県社会福祉協議会職員と机を並べて仕事をしています。同様に、青少年育成担当は青少年交流センターで、国際担当は国際交流センターで、外郭団体職員と机を並べて仕事をしています。県の職員も市民利用施設の実態を把握すべきとの方針のもとにこのような工夫をしたとのことです。利用者にとって近寄りやすいイメージを出すために県の職員は毎日カジュアルな服装で仕事をしています。

 

行政研究会の立ち上げ

 研究会規約を16日に採択し、役員を選出しました。次回の活動は、6月に京都で行うことを計画しています。