「日本大学の通信制大学院で学ぼう」





文化情報専攻
菊地善太

 私が日本大学の通信制大学院である、総合社会情報研究科の文化情報専攻に入学して一年が経とうとしています。思い切って門を叩いた日本大学の通信制大学院は、想像していた以上に面白いところでした。本稿では、この通信制大学院について、思いつくまま綴ってみました。読者の皆さまが、日本大学の通信制大学院に少しでも関心を持っていただけたら、筆者として至上の喜びです。

●社会人が大学院で学ぶ意義

 大学や大学院に入学したいと思う動機は色々あるでしょう。大学院は、近年では社会人にも広く門戸が開放されるようになり、社会人の再教育という役割も期待されるようになってきました。産業・社会と密着したテーマも増え、自分の仕事においてより専門性の高い知識を生かした仕事をしたい社会人や、学位や資格を得てキャリアアップに生かしたい社会人に、将来の実利が見込める学習機会や研究機会を与える場となりました。或いはまた、産業の歯車のようなサラリーマン生活に疲弊し心の疲れを覚えた社会人や、カルチャーセンターでは物足りない主婦などに、教養を高め、心を豊かにする教育を施す場、生涯学習のテーマを見つけて、研究を促す場にもなってきました。大学学部は履修科目が多いので、幅広く知識を得たい人に向いていますが、大学院は幾つかの科目をじっくりと学び研究したい人に向いています。自分の場合は、心を豊かにする研究がしたい、それもできればじっくりと研究できる大学院でと思っていました。本を読んで勉強することくらいは大学院に行かなくても一人でもできそうですが、独学の難しいのは皆さんご存知の通りです。大学や大学院という環境は、指導してくださる先生や、共に学ぶ仲間を持つことで、私たちが勉学や研究を続けていく上での大きな励みとなるメリットがあります。

 しかしながら社会人が入学する上でハードルはあります。場所と時間とお金です。どんなに行きたい大学院があっても、九州の職場の人が北海道の大学院には通えません。残業が多い人は、たとえ夜間大学院がそばにあっても通えません。お金は、年間百万円前後という学費がかかるので、これは安い出費ではありません。しかし、その中でも特に場所と時間の問題は絶対的で、仕事を辞めてまで、或いは引越ししてまで大学院に行ける人は、ごく限られていたことでしょう。

●なぜ通信制大学院か?

 この状況を大きく変えてくれたのが通信制大学院でした。通信制大学院はこの日本大学の院を含め、日本で最初に開学したのが三年前で、まだ三年しか経っていない歴史の浅い大学院形態ですが、インターネットメールの使えるところ、つまり電話の通じるところであれば、どこででも学べ、しかもいつでも勉強できるという素晴らしい長所があります。スクーリングの負荷も、学部の通信制大学のスクーリングなどと見比べても、遥かに日数的な負荷は少ないです。これにより、先に挙げた場所と時間の問題は一気に飛躍的に改善されました。さすがにお金の面だけは、どうしても足りない場合は、育英会の奨学金や教育ローンにたよる必要がありますが、多くの社会人にとってなんとか手を出せる範囲でしょう。仕事をしながら学業継続するための敷居は、通信制大学院によって格段と下がりました。学問によって今の自分を変えていきたい、より良くして行きたいと考えている社会人の皆さんにとって、あと必要なのはひとかけらの勇気だけです。自分が勉強を続けていけるか不安な方は、ぜひこの電子マガジンの、他の方のリポートも読んでみてください。色々な境遇の方がこの大学院で学ばれていることがわかります。

●日本大学の通信制大学院を薦める理由

 通信制大学院も三年経ち、四年目を迎えようとしていますが、放送大学大学院など後続も増えて、今後ますます身近なものとなっていくことでしょう。その中で日本大学の通信制大学院を選択するメリットは何かと考えてみると、ここには先発のメリットと適度な規模のメリットがあるように思います。

先発のメリットとは、先生方や先輩方や事務課の方々が積み重ねてこられた提案と改善の蓄積です。たかだか三年の歴史とはいえ、ゼミも、インターネット内のサイバーキャンパスも、サークル活動も、リポート提出や事務連絡に至るまで、日々提案と改善の積み重ねです。仲間は現役の在学生だけではありません。ゼミや、サイバーキャンパスの掲示板や、サークル活動に顔を出してくださる修了生の先輩方も大勢おられます。最近では他専攻の方々との交流も活発になってきました。様々なキャリアを持った多才な人たちと交流できることを喜びと捉え、その輪を広げていく試みが次々に動き出しています。総合社会情報の名を冠する我々の大学院は、公開講座やサークル活動を通して、その成果を社会に発信することにも積極的です。早くもこの“良い軌道”に乗った集団は、これからも良い発展を遂げていくことでしょう。この“良い軌道”に乗れたこと、これが先発のメリットです。今や大学も統廃合される時代であり、これは新規開設の大学院にはアピールができないポイントです。

次に、適度な規模のメリットとは、日本大学の通信制大学院が、様々な経歴を持ち、様々な研究テーマを専攻する教員を多数抱えていて、学生が興味のある履修科目や研究テーマを選びやすいということと、一学年当たり各専攻につき数十人という学生数が、ちょうど小中学校の一クラスのように、まとまりやすい人数になっていて、仲間意識を醸成しやすいことが挙げられます。前者については、論より証拠、募集要項を取り寄せて、各教授の案内欄を読んでみてください。後者については、多くの人にとって、大学院に集う仲間と良い意味で刺激し合い、励まし合う仲間を持つことは、大きなメリットになるはずです。通信制大学院は、少なくとも日本大学のそれは、孤独な勉学や研究を強いる場ではありません。求めれば仲間を見つけられます。

●私の場合

 ここで私の場合についてちょっと触れたいと思います。私は、メーカーに勤続すること十数年の会社員ですが、仕事に対しても社会に対しても気が滅入ることが多いこの数年、なんか精神的な疲れが溜まっていました。そんな時に通信制大学院を知り、もっと豊かな心を持ちたいと思って、この大学院の文化情報専攻に入学しました。仕事が技術系なので、仮に修士の学位を得ても金銭的なメリットにはつながりませんが、そういう損得ではなく、人間として心が豊かになり、寛容になりたいと思って入学しました。最近は身勝手な人が増えましたが、でも日本人は、もともと和とか礼節とか美徳とかを重んじる、素晴らしい民族であったはずです。合理的であることを身勝手であることと曲解するような、倫理観の欠如した企業や人間を生み出さないために、古き善き日本人の精神を見つけ出して、世界に発信していくことも必要でしょう。産業技術や知識の習得だけでは社会は発展しません。その技術や知識を使いこなす“精神の在りよう”を高めていくことが必要なはずです。そんなことを思いながら、この一年、勉強をしてきました。上田教授のもとで“能”の謡や舞を学び、或いは能舞台での能演を鑑賞し、古典芸能の素晴らしさに触れました。一方で西洋の古典、シェイクスピアの劇詩も学び、これも朗読したり、観劇したりしました。機械文明に毒される前の人間の持っていた精神の素晴らしさを、もっと具体的に掘り下げて、未来社会への希望という形にまとめ上げるのが、今年の私の研究課題です。

 会社員と学生の両立は、たしかに時間のやりくりは大変です。昨年は、ゼミやスクーリングは出席可能なものは全て出席しました。観劇や本探しもありましたから、週末は結構忙しかったです。でも、忙しい半面で、年齢も性別も超えて、多くの人と励まし合える友達になれたことは嬉しかったです。同じ専攻の同期生の皆さんとは全員と顔見知りですし、毎日のようにメールを交わす友人もいます。仲間がいたから勉強を続けることができて、大変なリポート課題にも何とか立ち向かうことができました。

●最後に

 この原稿が、少しでも受験を考えておられる皆さんの参考になることを期待します。今年、来年、再来年と、どんどん仲間の輪が広がっていけば嬉しいです。大学院は、受け身で学ぶだけの場ではなく、自らが求めて学び、提案していける場です。そういう中で先輩方は素晴らしい校風を築いてくれました。大学院は社会の公器です。平和で幸せな未来社会を希求し、それに向かって努力をしていける方が、仲間となって、校風を引き継ぎ、我々と一緒に更に善くしていってくれる日を楽しみにしています。