「ベンチャー組織としてのNPOの特徴」





平成12年度修了生・国際情報
澤田 徹

NPO(Non-Profit Organizataion:非営利団体(組織))とは、一般的に営利(利益配分)を目的としない民間団体を総称して使用されることばです。日本ベンチャー学会フランチャイズシステム研究部会論文集(柳論文)によると、ベンチャー組織は「営利型ベンチャー(企業、組織)」と「非営利型ベンチャー」に分類され、NPOは後者の形態のひとつとされています。

それでは、NPOのベンチャー組織としての特徴とは何でしょうか。NPOと営利を目的とするベンチャー企業(営利型ベンチャー企業)を比較してみたいと思います。

(1)        既存のセクター(部門)では対応が難しいニーズの実現

NPOは、非営利(公共)分野での民間活動を行い、草の根ニーズを捉え、多様な市民ニーズ実現のための活動を行っています。一方営利型ベンチャー企業は、営利分野での民間活動を行い、隙間市場の開拓や画期的な製品・サービスの実現を図っています。両者は既存のセクター(例えば、行政や既存企業)では対応が難しいニーズの実現を図っています。

(2)        リスクを伴う活動

NPOが社会に変化をもたらす活動(例:環境保全活動)を行ったとしても、その効果は、現れるには時間がかかり、見えにくいものです。営利型ベンチャー企業が、革新的な新製品を開発した場合は、投資した経営資源や時間にみあった収益や利益が得られるかどうかは見えにくいものです。両者は、結果が予測できない、リスクを伴う活動を行っています。

(3)        ネットワーク、パートナーシップ、コミュニティの必要性

経営資源が限られている組織にとっては、経営資源を補完するための連携が必要です。ネットワーク(人脈など)を利用した連携により、スムーズに活動し、大きな活動を行うことができます。対等な立場、水平的な協力関係といった特徴をもつパートナーシップの形成により信頼関係を築くことや、活動を支える地域のコミュニティとの連携も必要です。

結論として、NPOと営利型ベンチャー企業の活動は、既存のセクターでは対応が難しいニーズの実現を図るもの、リスクを伴うものであり、連携を必要とするものであるといえます。この両者が、目に見える成果〜NPOであればその活動による社会の変化、営利型ベンチャー企業であれば利益〜を得るには多大な経営資源や時間を要します。そのため、NPOや営利型ベンチャー企業については、長期的な視点で活動を見守るとともに、適切なときに適切な支援を行う必要があるといえます。

 

参考文献

Rangan, V. Kasturi, Karim, Sohel, and Sandberg, Sheryl K., “Do Better at Doing Good”, Harvard Business Review on Nonprofits, Harvard Business School Press, 1999

 

※本稿の内容は私見であり、筆者の所属する組織の見解を代表するものではありません。