院生必読
「メールの即時性について ―――ただ早く着きすぎてしまっただけのことなんです―――」
国際情報専攻 村上恒夫 |
現代のコミュニケーションメディアを大雑把に上げるなら下記のようになるでしょう。
・会って話す
・電話
・メール
・手紙
・FAX
・インターネット
また、電話においては固定電話と携帯電話が、メールにおいては携帯電話メールとパソコンメールが、さらにインターネットで言えば掲示板とチャットがあるでしょう。
つまり、現在われわれがコミュニケーションの手段として活用できるのは
@ 会って話す
A 固定電話
B 携帯電話
C パソコンメール
D 携帯メール
E 手紙
F FAX
G インターネット掲示板
H インターネットチャット
これら9種類の手段だと言えます。
ただ列挙したこれらのメディアの即時性を考えて順番付けるなら、下記のようになりませんか。
@ 会って話す
A 携帯電話
B 固定電話
C 携帯メール
D パソコンメール
E FAX
F 手紙
G インターネットチャット
H インターネット掲示板
さて、ここで問題になるのが、デイジタルメディアの即時性です。G、Hが手紙の後に来るのは誤りではないかと指摘することもできます。手紙などよりはるかに到達する速度が速いからです。
しかし、G、Hの場合、目的のサイトに受け側がアクセスしないと情報は伝わりません。それに引き換え、手紙は自宅の郵便受けに配達されており、帰宅時たいてい郵便受けを確認するでしょう。G、Hの場合、習慣づけていなければなかなかアクセスしないことがあり、結果として遅くなります。
勿論メールもそうなんですが、携帯電話メールの場合、常時携帯が原則です。電波到達範囲内であるなら、受信した時点で情報を受け取るのが常です。しかし、パソコンメールの場合、机の上で常時パソコンが立ち上がっている環境なら、すぐ受信できますが、そうでないなら自宅でパソコンを立ち上げなければ受信できません。同じ電子メールであっても携帯電話メールとパソコンメールでは扱いが違っているのです。
この両者の違いを考えるにあたり、これらを別の名で呼ぶならば、携帯電話メールがショートメール、パソコンメールがインターネットメールと呼んでもよいでしょう。勿論、携帯電話のメールもインターネットを経由するメールなのですが、ここは目をつぶっておきましょう。ショートメールという呼称がピッタリするくらい短文の内容が行き交うのが常だからです。
さて、ここで私自身が最近出したショートメールのやり取りを披露いたします。下記のようなものです。
友人:「今何処?」 19:10
村上:「会社」 19:13
友人:「早く帰れそう?」 19:16
村上:「多分」 19:20
友人:「じゃ、呑!」 19:22
村上:「時間、場所」 19:25
友人:「9時、東急会館裏、○○」 19:28
村上:「OK」 19:30
しかしこれが、インターネットメールになると。
友人:「おひさ
最近会ってないよな、元気でやってる?
今夕、会議で渋谷に行きます。8時ころには開放されるので、その後一杯どうだい?
つもる話もあるし、お前も仕事があるだろうから、9時に東急会館裏の○○
でどうかな?
俺は一足先に行って一杯やってるので、そのくらいの時間を目安に来てくれれば
どうだろう?
P.S 15時まで会社にいます。」 受信時間 10:10
村上:「おお、本当に久しぶり。
元気でやっている、相変わらずバタバタしているが、今日の9時には○○に
行けそうだ。話たいことが山ほどあるが、会った時にゆっくり話そう。
スペアリブだけは俺が着いてから注文すること!
では後ほど。」 送信時間 14:30
同じ相手との同じような内容の話ですが、ショートメールとインターネットメールでは違いがあるのが良くわかる事例だと思います。
皆さんも経験があるでしょうが、ショートメールの場合、一度受けてしまうと何らかの合意が得るまで、非常に気がかりで、メールに没頭してしまいませんか。事例の場合20分の間に8回のやり取りがありました。皆さんの想像どおり、顔は携帯電話に釘ズケでした。
送る側も、受け取る側も、直ぐに返事が来るものだと期待しているのです。つまり、反応が早く、文章が短いのがショートメールの特徴だとは思いませんか。
では、インターネットメールの場合を考えてみましょう。朝10時の会社到着後、すぐメールチェックで内容は読んだものの、その日の仕事の流れがわかる午後2時まで返事を出さず、4時間放置し、15時ギリギリに返信しています。受け取り手(村上)は、返事を書くためには今日の仕事の流れを把握し、早く帰れるかどうかを見極めなければなりません。はなから、すぐに返事を書くつもりはないのです。送り手(友人)も相手の都合があることを十分理解しており、自分が返事を受け取れる15時までに来れば良いと考えています。そして、本題とは関係の無い挨拶などが交わされてもいます。
このように、ショートメールとインターネットメールは使い分けられているのです。暗黙の了解と言っても良いでしょう。これに逸脱すると不興を買うことになります。
ショートメールで直ぐに返事をしないと、相手は催促のメールを寄越し、最後には電話そのものをかけてきます。同じ相手から何度もメールが来て、その返事を催促されることほど腹立たしいものはありません。そう思いませんか?そして最後には電話がかかって来る始末なのです。
電子メールは、新しいコミュニケーションとして認知されているものの、まだ確固たる作法が確立されたわけではありません。そのため誤解が生じやすいのが現状でしょう。
しかし、ショートメールが即時性を求めるあまり、電車の中でもうつむき加減に携帯電話に向かう自分自身を想像するのは、やはりいただけません。便利で夢のような社会になりつつあるが、もう少し余裕を持って生活したいと思うのは私だけではないでしょう。
みなさん、チャップリンの映画「モダンタイムズ」のように、機械に使われる云々は古くて新しい問題なのです。新しい機械を発明したら、これに合わせて人間が制度を変えていきます。体に合わせて服があるのではなく、服に合わせてお腹を引っ込めているのです。
最初はあくまでも、人間が便利なように開発されたものばかりなのですが。。。
会えば相手の姿が見える、話せば相手の声が聞こえる、手紙にゃ相手の思いが見える。
手書きの字に負けないくらい味のある文章でメールコミュニケーションを取りたいもので
す。ショートメールは自分の気持ちよりも早く、無味乾燥な言葉だけが相手に伝わるので
要注意です。無味乾燥な言葉になんぞ負けない、信頼の礎を普段から作っておく事が大事
なのです。
みなさん、メール交換で怒り心頭に達し、携帯を叩きつけたくなったら、思い返してください。相手の笑顔を!
相手の気持ちよりも早く、文字だけが着てしまっただけのことなんですから。
|
|