「『大学行政管理学会』について」





平成12年度修了生・国際情報
 山本忠士

 「大学行政管理学会」いっても、ご存知のない方が多いことと思う。1997年1月慶應義塾大学で産声を上げ、現在の会員数は700名とまだ若い学会である。この学会の大きな特徴は、私立大学の職員によって設立されたということにある。

 年1回の定期総会・研究大会が開かれる他、月例研究会、テーマ別研究会として「組織・管理研究」、「大学人事研究」、「大学職員研究」、「財務研究」が開かれている。地方別の研究会も北海道、関東、東海、西日本、九州、中国・四国で開かれている。

 現在のところ会員資格は、原則として65歳以下の大学・短大職員で「行政管理」の性格上、管理職・監督職が対象となっている。

 この学会の発足は、大学をめぐる厳しい状況の変化が、それを求めたといってよい。大学の3割、短大の8割が定員割れだといわれるが、出生率統計を見れば18歳人口の減少傾向など、はるか以前から予測されており、現実にはその対応策は十分ではなかったということになろう。定員割れの一方で、規制緩和の流れに乗って大学は、新設ラッシュである。18歳人口がピークを過ぎた1992年度から2001年度の10年間で、147大学が新設され、日本の大学数は現在671校である。つまり、受験生の減少期にもかかわらず大学は10年で2割増加したことになる。2002年4月には、新たに10数校が増える。引き続き申請があるようだからまもなく700の大台を越すかも知れないが、合併・廃校によって教育舞台から引き下がる大学も急速に増えるこも予想されている。

 最近の読売新聞(1111日)の報道によると、小泉首相の意向で、規制改革として大学経営の株式会社化の問題も検討されることとなったという。勿論、学校教育法の「学校法人」だけが学校を設置できるという法律の改正をともなうことになるが、規制改革の流れが株式会社の「大学参入検討」まできたことに、驚きを禁じえない。まさに「聖域」なき構造改革を実感させられる。

 「学力低下」など大学教育に対する社会の批判も強くなっている。大学行政管理の専門家をきちんと養成し、社会に対するアカウンタビリティ(説明責任)を怠ってきたことにもその一因があろう。事実、私立大学でさえ『経営』という言葉が使われ始めたのは、それほど古い話ではないのである。

 最近になって、桜美林大学が大学の大学アドミニストレーター養成をうたい文句に修士課程を開設したが、ようやく日本も動き出した感がある。

 日本の大学職員は、全国で約10万人である。新卒者対象の専門家養成も重要であるが、、それ以上に現に大学で働いている人達に対するマスターレベルの勉学機会を与えることの方がより必要だと、私は考える。現に大学を支える職員を養成することが、若い新卒人材を大学組織の中で生かせる道につながると考えているからである。

 筆者は、この学会の設立発起人の1人として、立ち上げの3年間、事務局長として関わってきたが、その活動から実感したことは、より高度な専門家を目指す大学職員の多かったことである。700名という会員数、地方会員の熱心な活動振りを見るにつけ、どこでも、誰でも意欲さえあれば学べる通信制の大学院は、こうした要請に応えられるものであり、日本大学大学院総合社会情報研究科こそ、そうした期待に応え得る教育機関であると信じている。日本の高等教育機関の末永い発展のためにも、是非、ご検討いただければと願っている。                           (以上)

追記:なお、学会に関する情報は下記にお尋ねください。
<大学行政管理学会>
103-8245       東京都中央区日本橋2-3-10 丸善ビル7階
電話&FAX 03−3272−4660
E-mailjuam@office.email.ne.jp
URL:http://www.ne.jp/asahi/juam/office