「国際融合文化学会主催
「英語能舞・ハムレット」公演が開催されました」





文化情報専攻
 戸村知子

この秋、国内大会第3回目を迎えた国際融合文化学会(ISHCC : International Society for Harmony & Combination of Cultures)大会が10月27日(土)と28日(日)の二日間、京都市の関西セミナーハウスにて開催されました。あわせて28日(日)の午後には、本学会主催『英語能舞・ハムレット』が同セミナーハウスの能楽堂「豊響殿」にて上田(宗片)邦義のシテ、宮西ナオ子のツレ、Marcus Grandonの尺八、足立禮子の後見で上演されました。

◆『英語能舞・ハムレット』公演

 ― 能楽は2001年5月、ユネスコによって初の「世界無形遺産」に指定された、日本が生んだ世界に誇る文化遺産だ。能は精神性を尊ぶ歌舞である。その台本(謡曲)は詩である。台詞の大部分が韻文で書かれているシェイクスピア劇の詩的精神的側面を舞台上に演ずるには、能の手法が相応しい。私はこの30年ほど、日本の古典芸能「能」と英国文化の華ともいうべき「シェイクスピア劇」の「調和と融合」を試みてきた。まずシェイクスピアの原文HAMLETに謡曲の節付けを行い、国立能楽堂などで上演した。今後どのように人類の精神的進化に生かし得るか。あの一瞬の形の美しさ、気迫、一回性を尊ぶ一種の神秘主義、過去現在未来に対する時間的超越性、輪廻再生の思想を、ここで表現したいと思っている。―

能翻訳者であり、シテを演じる本学会会長の上田(宗片)邦義教授から今回の公演にあたって上記ような言葉が寄せられました。また、上田教授の一連の主な活動記録がまとめられている著作、『能・オセロー -創作の研究-』(1998年、勉誠社)のプロローグでも、  

....シェイクスピアの200年ほど前、14世紀に、観阿弥・世阿弥父子によって大成された「能」、それは「悟りの芸術」であり、「救い」を暗示する。....観客の自由なイマジネイションを尊重したい。能の簡素で暗示的・象徴的手法は、極めてすぐれた演出である。無駄のない動き、抑制された厳かな謡い、死者の霊を呼びたてているかの如き囃子方の掛け声や笛の音、さらに能面にも象徴される「幽玄の美」−それらは「詩劇」の簡素な表現によってもたらされる緊張感や宗教的とも言うべき厳かな深い芸術体験の実現にふさわしい。・・・・

と、遠く隔てられたイギリスと日本の両国で育まれた「芸術の魂」を融合させることで、新たな芸術美を生み出し、その感動を世界の人々と共有したいという思いが述べられています。

今回の公演は『英語能舞・ハムレット』短縮版であって、囃子方(笛・大鼓・小鼓)や地謡は無く、尺八の演奏を入れた1時間弱の公演でしたが、まさに世界の人々にも観て頂きたかったもので、ここで再現できないことを残念に思います。

只今、学会のニューズレターや簡単なビデオ紹介の制作等がすすめられており、今後ご紹介させて頂ける機会もあるかと思います。ご関心のある方は下記までお問い合わせください。

国際融合文化学会問合せ先:上田邦義研究室

(日本大学大学院総合社会情報研究科内)

 ueda@gssc.nihon-u.ac.jp

(関東支部) 菊地善太 2001c03@gssc.nihon-u.ac.jp
(関西支部) 安田保 2001c17@gssc.nihon-u.ac.jp
戸村知子 2001c11@gssc.nihon-u.ac.jp


◆ISHCCロゴマークも誕生

― 21世紀を目前にして今われわれは、生あるものが「一つ」であることを強く意識させられている。この意識を高めこの関係をさらに向上させるために、世界の文化の調和と融合、さらには新たなる文化の創造を熱望して本学会を設立する。―(ISHCCニューズレター第1号、2000.08.01) 

上記の趣旨のもと、日本大学大学院総合社会情報研究科在学生有志が中心となり2000年に設立された任意団体ISHCCは、今、その設立メンバーである本研究科を修了した一期生の方々と共に、他大学の教授や学生も「融合文化」をキーワードとして個々の研究テーマを持って集う場となっています。このことは在学中の私達にとっても大変刺激的であり、また修了後も切磋琢磨し合える場があるということは研究の励みにもなっています。さらに、学会活動を通して何か社会に還元したいという次の目標が芽生え初め、そのあらわれが今回の『英語能舞・ハムレット』公演であり、また、学会ロゴマークの誕生ともなったのです。

互いの文化を理解し合うことで調和が生まれ、そして融合し、新たなものが生み出される。決して短期間で遂げ得る活動ではありません。私達は、文化を受け継ぐ者としての目と、次世代に伝える者としての目をもって、地球人的視野で21世紀の文化を育むステージに立っているのです。さらに、より深く理解し合うためには、人々に共通の「祈り」がキーワードになると考えた時、「能楽」がその一つの手法となり得ることを表現したのが、今回誕生したISHCCのロゴマークです。

−コンセプト−
 “□”はフラットなステージを、“○”は宇宙的時間を、“△”のグラデーションは「能」のシンボルとしての扇で、文化の相互理解が広がっていくさまをあらわしています。